ないものねだりをしてしまう。
「やぁ、みんな。なんだか楽しそうだね」
「エ、エドガー殿下!」
エドガーが現れたことで、生徒会室には全部で四人に……。ではなく、五人になった。私と二人だった時には顎を尖らせていた生徒会長も、今ではすっかり縮こまっている。
悪役と恐れられるアンドリッサ、魅惑の麗人ロイス、そして全生徒から慕われている超絶美形のエドガー。これだけの役者が揃えば、いくら会長といえど形なし。
ほんの少しいい気味だと思わなくもないけれど、同時にお気の毒だとも感じる。
「いつの間にか、マーガレットには素敵な友人が増えたんだね」
「え?ええ、そうですね」
「楽しそうで何よりだよ」
それは、ロイスのことを指しているのだろうか。なぜ今そんな話をするのだろうと首を傾げるが、彼はにこにこと笑っていた。一瞬、ロイスとの仲を妬いてくれているのではと期待したけれど、そんな様子は微塵も感じられない。
それに以前、私がリリアンナに対して嫉妬めいた発言をした時、エドガーは言ったのだ。そんな感情は無駄だと。
「……昔は、私を独り占めしたいって言ってたくせに」
「うん?何か言ったかい?」
「いいえ、何でもありません」
身勝手かもしれないけれど、ついぷいっとそっぽを向いてしまった。
「さぁさぁ!ここからはどんどん進めていきましょう!」
今はとにかく、パーティーを成功させる。帝国の皇子にエドガーの手腕を見せることが第一の目標だけれど、あわよくばエドガーから私への好感度も上がればいいな、という打算もなきにしもあらず。
そうして最高のシチュエーションで想いを伝えて、それから……。
「マーガレット、どうかした?」
「少し、緊張しているだけです」
「大丈夫。必ず上手くいくから」
穏やかに目を細めるエドガーに、心臓がぎゅうっと締め付けられる。それはパーティーを指していると分かっているのに、頬が勝手に紅潮していくのを止めることが出来なかった。
♢♢♢
それは、肌寒ささえ感じる夜。煌びやかなドレスに身を包んとだ女生徒達が口々に不満を漏らす中で、私だけが「チョコレートが溶けないから良かった」など考えていた。
弟のライオネルが見立ててくれたというドレスは、落ち着いたブラウン。ペチコートがあまり膨らんでおらず、装飾も少なめ。動きやすさを考えてくれたのだろうという配慮が伺える。その分、バックの腰元に大きなサテンのリボンが垂れ下がり、ちゃんと可愛らしさもあるから凄い。
しかも、アンドリッサ御用達のサロンからわざわざ派遣された理容師が、私のヘアアレンジまで施してくれた。こちらも、邪魔にならないようアップにされている。
「とても似合っているよ、マーガレット」
「やっぱり、ちょっと恥ずかしいわ」
「堂々としていればいいんだよ」
私の肩を叩くライオネルは、それはもう素敵だった。元より「似ていない」と言われることは茶飯事だったけれど、彼が着飾ると当事者の私でさえもそう感じる。
同じ髪と瞳の色を持っているはずなのに、ライオネルの方がより光り輝いているのが、不思議でならない。
とはいえ、弟が評価されることは素直に嬉しく、私は目立たない添え物のような立ち位置でひっそりと佇んでいたいと思う。誰の隣にいても邪魔にならないような、優秀な添え物として。




