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ヤンデレ乙女ゲームのモブ令嬢は、最推し王子の誘惑を全力で拒否したい。  作者: 清澄 セイ


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彼女に打ち明ける……色々と。

♢♢♢

「アンドリッサ様!やっとお会いできました!」

 ぶんぶんと音が鳴りそうなほどに両手を振り回し、私は彼女の名前を呼ぶ。途端に眉間の皺が深くなり、これは確実にお小言をくらうと、思わず身構えた。

「も、申し訳ありません。最近、アン様とゆっくりお話する機会がなかったので、つい」

「まったく。貴女は昔から何も変わらないわね」

「ぐうの音も出ません……」

 まぁ。貴女だから特別に大目に見てあげる」

 ツンツンデレのアンドリッサは、この世の何よりも尊い。ロイスが惚れるのも当たり前だと思いながら、眼前の美少女をうっとりと見つめた。


 私達お気に入りの大きな楠の下のベンチにやってくると、私はハンカチを取り出しふわりと風に靡かせた。

「どうぞ、こちらへ座ってください」

「あら、ありがとう」

「アン様に使っていただけて、私のハンカチも喜んでいます」

 にこにこと笑いながら、彼女の隣に腰掛ける。まるで痴漢でも見るかのような視線を向けられたけれど、ちっとも嫌だと思わない。

「それで、私に話があるのでしょう?」

「い、いきなりは心の準備が」

「私、まどろっこしいのは嫌いなの」

 もじもじとした私の動作は、アンドリッサにばさりと切り捨てられる。それでも、私が何度も深呼吸を繰り返すのは律儀に待ってくれた。

「ずっと、正直に打ち明けなければと思っていました」

 アンドリッサは、いつだって私に正直でいてくれたのに。私はずっと、嘘吐きだ。

「私は、エドガー様のことが好きです」

「ええ、知っているわ」

「ああ、そうですか」

 平静を装ってそれだけ口にすると、くるりと顔だけを後ろに向ける。まさかそんな答えが返ってくるとは思わず、一人で百面相を繰り広げた。


「そ、それでですね」

「次は何?」

 彼女の方は、全てを理解しているといわんばかりの泰然で、じいっとこちらを凝視している。さすがはアンドリッサ、今度は私も安心して口を開いた。

「私には、前世の記憶があるんです。アン様とエドガー様が結ばれると、二人の命が脅かされると知っていたから、ずっと邪魔をしていました」

「へえ、そうなの」

「エドガー様への想いを認めてしまえば、私もそうなると危惧して、ずっと自身を誤魔化し続けていたのです」

「あら、それは大変」

 言葉を続ける内に、違和感を感じて彼女をまじまじと見つめる。

「もしかして、驚いていらっしゃいますか?」

「当たり前でしょう?こんな話を聞いて、平静を保っていられる人間なんていないわ」

「あ、あはは……、分かりづらい」

 アンドリッサのおかげで、私の気持ちはだいぶ解れたようだから、感謝しなければ。

 彼女はあの火災の時、ライオネルにした説明と同じように、予知夢を見たなどという荒唐無稽な話を信じて、力を貸してくれた。

優しく、気高く、強く。アンドリッサ・コンドルセは、永遠に私の主君たる人。そして大切な、友人だ。

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