アンドリッサを守り隊。
「最近、リリアンナ・ノチェスが苛ついてる。僕がずっと裏で手を回していたけど、それも限界」
「だから、私に?」
「嫌いだった。いつもアンドリッサ様にへばり付いているから」
そんな、人を靴裏のガムみたいに。
「だけどこの間助けてもらって、悪い人じゃないって分かったから」
「誤解が解けたようで何よりですわ」
「二人で協力して、アンドリッサ様を守ろう」
ミステリアスな風貌の割に、随分と可愛らしい話し方だと思う。それを指摘すると「恥ずかしい」と頬を染めていた。それはさすがに、あざとさが過ぎる。ギャップにやられて、目の前がくらくらと霞んだ。
何だかとんでもない展開になってしまった。まさか、ロイスがアンドリッサを好きなんて。もしもシナリオ通りに進んだら、デッドエンドは避けられない。
今の彼女がロイスに惚れるなんてことはまずないだろうし、敵より味方が増えるのは心強い。
「それにしても、リリアンナめ……。許せないわ」
「焦っているみたいだったよ」
「もしかして、彼女も見たのかしら」
私と同じように、エドガーとアンドリッサの逢瀬を。
「あの、ベスターさん」
「うん、何?」
彼に警戒の色は見られず、共通の目的が出来たことで私に心を許したらしい。
「アンドリッサ様には、エドガー殿下という婚約者様がいらっしゃいます。叶わぬ恋に身を焦がすのを、辛いと思わないのですか?」
いまだに明確な答えを出せないでいる自分を、ロイスに重ねているのだろうか。同志を探すなんて狡いと思いながら、尋ねずにはいられない。
「思わない。幸せに生きてくれることが一番だから」
「ベ、ベスターさん……」
思わず涙腺を刺激されてしまうほどに、彼が尊い。自分を優先してばかりの私とは全く違う。
「これから貴方を『師匠』と呼ばせてください」
「嫌だよ」
オッドアイをぐにっと歪めて、ロイスは苦々しい顔をした。
「では、せめて握手をしましょう」
彼の心持ちに感動した私は、瞳を潤ませながら手を差し出す。これは拒否されることなく、私達はしっかりと握手を交わした。
「あら。お二人ともこんなところで」
すると突然、可愛らしい声が空気を揺らす。いつの間に現れたのか、リリアンナが薄ら笑いを浮かべながらこちらを見つめていた。
「私達、逢瀬の場に居合わせてしまいましたわ。ねぇ、エドガー様」
彼女一人ではなく、エドガーと共に。
「エドガー殿下」
ぽやぽやとした雰囲気のロイスが、ぴしりと足を揃える。なるほど、こういうところは流石公爵家の令息だ。
「やぁ、ロイス。それに、マーガレットも」
名前を呼ばれると、体が勝手に反応してしまう。彼と間近に対面するのは随分と久し振りな気がして、ぎこちないカーテシーを返すのが精いっぱいだった。
「僕達は、ただのクラスメイトです。誤解を招く言い方は止めてください」
「だけど、手を握り合っていたじゃない」
「友好の証です」
正直なロイスは、強かなリリアンナに勝てない。彼女はその可愛らしい瞳に、侮蔑の色を浮かべた。




