大型犬によく似ている。
「だけど、俺はアイツの為なら何でもしてやりたいと思うから」
「これはあくまで、私だったらという過程の話ですけれど」
すっと膝を彼に向け、茶色の瞳でまっすぐ見つめる。私達は現在十四歳となり、もう子どもだと胸を張れる時期は過ぎた。
「大切な幼馴染が道を間違えているなら、たとえ嫌われようとも正しい道に戻してやりたい。その為なら、喜んで悪役を買って出るでしょう」
「な、何だそれは!リリアンナが、道を間違えていると言いたいのか!」
「エドガー殿下には、婚約者がいらっしゃいます。最近の彼女はますます遠慮がなくなり、ご友人以外の女生徒への当たりも強い。ダンテスさんも本当は、わかっているのではありませんか?」
厳しい口調でそう告げると、彼はむぐ……、と口を噤む。反論しようかするまいか、自身と葛藤しているように見えた。
「人を好きになる気持ちは止められないと、よく分かります。だからといって、それを免罪符にしてはいけません」
「え、偉そうに……っ」
「ダンテスさんなら、きっと理解してくださると」
ふっと頬を緩めると、それにつられたように彼の表情も和らぐ。ほらもう一つ、と大きな掌にチョコレートを乗せた。
チョコレート好きに、根っからの悪人はいないのだ。
「お前って、変なヤツだよな」
「取るに足らないただの甘党ですわ」
がさっと包みを開けてぱくんと口に放り込む。シャルロは、なにがおかしいのか声を上げて笑った。
「こうして毎日絡んでるのに、一向に参る気配もないし」
「むしろ尊敬します。大変でしょうに、と」
「いや、そうでもない。案外悪くないぞ」
それこそ、変わっている。シャルロはシナリオ通りにリリアンナを慕っているのだろうけれど、どうやら想いは実らなそうだ。だとしたら、命を落とすことはないのかもしれない。
彼女は今、エドガー攻略に熱を上げている。もしも成功すれば、二人に待っているのはデッドエンド。たとえそれを当人が望んでいたとしても、本当にそれでいいのだろうか。
「……なぁ、フォーサス」
不意に、シャルロが私の名前を呼ぶ。普段お前呼びのくせに、珍しい。
「さっき、気持ちが分かると言ったよな?それは、お前も叶わぬ恋をしているという意味なのか?」
「……いいえ、言葉の綾です」
随分昔に自覚したこの想いは、閉じ込めようと決めた。けれど最近、エドガーを死なせたくないという気持ちが日毎に強くなり、自分でもどうしたら良いのか分からない。
アンドリッサと結ばれても、リリアンナと結ばれても、彼はこの世界から消える。神秘的な藍色の瞳が、もう二度と開かれない想像を繰り返しては、心臓に爪を立てられているような痛みが走る。
けれど、私は自身だって死ぬわけにはいかない。大切な人達を、悲しませたくないから。
「……嘘が下手なヤツ」
シャルロはそう溢して、私の鼻を軽く摘む。ふがっと音が鳴ってしまい、彼はけたけたと笑った。




