素直になれない。
そもそも、ストイックな性格とツンデレのせいで元々の評判もよろしくなかったので、あっという間に孤立してしまった。大好きなアンドリッサをこんな目に遭わせたリリアンナが、私は大嫌い。どこか一心同体のような感情を彼女に抱いていたけれど、それも今はない。
しかも、リリアンナは明らかに私を見下している。歯牙にもかけないといった様子で、存在自体を無視するのだ。非常に感じが悪い。私の知っている天使リリアンナとは、全くもってかけ離れた性格をしている。
何かにつけてエドガーとアンドリッサの間に割って入り、べたべたと馴れ馴れしい。そのくせ、被害者は自分だと言わんばかりの自演を繰り広げているから、非常に気分が悪い。
「ああ、腹が立つったら。今日こそ私が一発がつん!と、あの可愛い顔に拳をお見舞いしてやる!」
「お止めなさい、マーガレット。そんなことをしたら、私は貴女を軽蔑するわ」
昼休み。私とアンドリッサは中庭の隅に置かれているベンチに座り、二人でサンドイッチを食べている。ここは日当たりが悪く、花も満足に咲かない。一方のリリアンナは、花が咲き誇る一等地を我が物顔で陣取っていた。
彼女の両サイドには、幼馴染のシャルロ・ダンテスと、私達のクラスメイトであるロイス・ベスターが座っている。どちらも攻略対象であり、かつては私も彼らを攻略した。もちろん、スペシャルエンドは安定のデッド仕様。重い愛を感じながら、二人仲良く永遠に続く愛の海へと沈んだ。
とはいえ、今はリリアンナに心を奪われているようだから、彼らのことも嫌いになった。
「普段から言っているでしょう?相手にするだけ時間の無駄だと」
「それでも、あんな女のせいでアン様が悪く言われるなんて、私は納得出来ません!くそ、くそ、くそ!」
「……貴女、ノチェスさんのことになると口が悪いわね」
彼女は呆れ返った様子で、さっとハンカチを取り出す。真っ白なそれで私の口元を拭いながら、いつものように溜息を吐いた。
「はしたないわ、まったく。それでもフォーサス侯爵家の令嬢なの?貴女の行動一つが家格に関わると、もっと自覚なさいな」
「……はい、ごめんなさい」
しゅんと頭を垂れると、再び溜息が降ってくる。それとほぼ同時に、私の膝元にころんとチョコレートが一粒置かれた。包み紙に入った、私の大好きなもの。
「要らないのならいいけれど。ライオネルが差し入れてくれたのでしょう?だったら、私からのチョコレートなんて」
「要る!要ります!大切に部屋に飾ります!」
興奮気味に言いながら、私は勢いよくアンドリッサの手を握る。
「凄く嬉しいです!ありがとうございます、アン様!」
「もう、大げさね」
彼女は、非常にツンの割合が多い。私にも厳しく、言い方もキツい。けれど本当は優しくて照れ屋で、寂しがり。そんなアンドリッサのことが、私は大好きだ。
「エドガー様もエドガー様です!ノチェス様にでれでれと鼻の下を伸ばして、まったく見ていられません!」
私の矛先は、いつしかリリアンナからエドガーへと変わった。今朝のことを思い出すと、再びむかむかと腹の虫が騒めき始める。
「アン様というものがありながら、本当に酷い方です!」
「ちょっと、私を隠れ蓑にするのは止めていただける?気に入らないのは、貴女の個人的な感情でしょう?」
「う……っ、わ、私は別に……」
「それに、どう見てもエドガー様は相手にしていらっしゃらないわ」
そんなことは知らない。私には、美少女に言い寄られて満更でもないようにしか思えないのだから。




