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僵れぬ神使の異類婚姻譚  作者: 大西 憩
9/51

06

 ナンギョク…と呼ばれた少女と二人、本殿の入り口に残された稲はとりあえずその幼い少女に微笑みかけた。

 少女はそんな稲を不思議そうに見つめながら首を傾げると「奥へー…」発し、本殿内を案内する素振りを見せた。

 首を傾げた時に上手に頭頂部に結われた輪っかたちが揺れるのをみて、幼い子は奇抜な髪形をしてもかわいいな…と稲はしみじみと思った。


 ナンギョクに案内された広間は二十畳はあるであろう広い部屋で、真ん中にはおしゃれな一枚板のリビングテーブルが置かれていた。

 部屋の畳はフチなし畳で、本殿というからにはもっと古臭い…いや、歴史のある雰囲気かと思っていたので思ったよりも現代的で不思議な感じだ。

 というか本殿にリビングテーブルっている?よくみたら七十インチくらいのどでかいテレビもあるんだけど、い、いる?いるの?


 稲は通された部屋のあちこちを眺めた。

 部屋の片隅に歴史深そうなツボが置いてあったりもするが、雰囲気のあるのはそれくらいなものでなんなら電気ケトルが置いてありちょっとがっかりした。電気、通ってんの?

 様々な花が描かれている格子状になった天井からはライトがいくつも吊るされている。

 木製のものや和紙のものではあるもののどうも現代的なライトたちが様々な高さで吊るされており、吊るし雛を稲は思い出した。


「お座りくださいー…」

 と、ナンギョクに案内されるままに稲は彼女の引いた椅子へと腰かけた。


 そして今になって腰を抜かして喚いていた大和の顔を思い出し「あいつあの後大丈夫だったかな…」と心配に思った。

 モモタリに圧倒されてそのまま引きずられるようにここまで連れてこられてしまった。

 …大和は腰が抜けて立って追いかけられなかったらしい。背後で喚く声だけは聞こえた。


「ご主人はご用意が終わり次第ー…こちらにこられますゆえー…」

 そう言いながらナンギョクはゆったりとした動作でお茶を入れる。

 ナンギョクの髪の色よりも濃い緑をしたお茶だ。「玉露ですー…」とナンギョクはつぶやいた。稲がお茶を凝視しているのを種類を知りたいと認識したようだ。

「高級ですね…」

 と、稲が答えるもナンギョクは聞こえているのかどうなのかこっくりこっくりと舟をこぐように頷くだけだった。


「あ、あの主人ってさっきの、モモタリ…って人のこと、ですよね」

「モモー…?」

 ナンギョクは少し首を傾げ考えるようなそぶりの後「あー…そうですー…」と答えた。

「こ、ここって鳶頭神社、ですよね」

 疑問を投げかけたら返事をしてくれることが分かったので、稲はナンギョクへ質問をした。

 その"主人"がいない間に情報収集をしなくては。

「あーいー…そうでございますー…」

 返事が遅い、遅いが可愛いので許せる。

 黒目がちのその瞳がこちらを向き「お茶ー…」とお茶を差し出してくれる。

「ありがとう…。そのぅ、モモタリさんは何者…なんでしょうか…」

 稲はお礼と一緒に一番気になる疑問をナンギョクに投げかけてみた。

 ナンギョクはというと、口元に手を当てて首を右に左にゆっくり順に傾げている。

 質問の意図が伝わらなかったのだろうか。


 モモタリはここに祀られる者…と言っていたがそれって神様、ということなのだろうか。

 だとしたら稲はその神様に向かって清めの塩を投げつけたことになる…。


 ナンギョクはしばらく沈思し口を開けた。

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