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僵れぬ神使の異類婚姻譚  作者: 大西 憩
33/51

29

 モモタリ一行は鳶頭神社の本殿に戻ってきていた。

 本殿の中庭に一本の竹がまっすぐに天まで伸びている。


「…ここは?」

 稲がモモタリの背に隠れるように中庭を覗く。

 その後ろから稲の真似をするようにナンギョクとコウギョクも顔をのぞかせる。

 最初、自宅に残るようモモタリに言われたのだが、稲は着いてくることを選らんだ。

 理由としては単純で、今学校に行くのも怖いし家に一人でいるよりもついてきた方が安全そうだと思ったからだ。


「ここは()()に繋がってる」


 モモタリはそう言うと中庭に続く戸を開ける。

 ため息が出そうなくらい美しくまっすぐな竹は、稲の身体ほどの太さをしている。

「お、大きい」

「一種の神木(しんぼく)だからね」

 こんなに大きく太い竹を稲は見たことがなかった。モモタリはふらふらと竹に近寄る。

「それにしてもなんでここに…」

 と、稲が話している最中、モモタリが勢いよく竹を蹴り飛ばした。


「し、神木!」


 稲が叫ぶももう時すでに遅し。竹はぐわぐわとしなり前へ後ろへ揺れ始める。

 頭上からは大量の竹の葉が落ちてくる。

 再度モモタリが足を上げたので稲は「なんで何度も蹴るのー!?」とモモタリの腰に抱き着き動きを制止させた。


 すると、竹の上から声が降ってきた。


「おい、天龍」


 稲が顔を上げるとそこには絵にかいたような美少女が宙に立っていた。


 *


「呼び出すなら口で言え」


 少女はそう言ってゆったりと宙から降りてくる。

 明るい黄色の髪を左右二つに編み、輪っかになるように結んでいる。見た目はナンギョクたちよりも少し大きいくらい…に見えるが小さな子どもにみえる。

 華奢な体には前掛けのような赤い布が上半身の前方を多い、そのまま下半身に巻き付き短いスカートのように閃いている。体のあちこちに金の装飾がちりばめられており高貴な存在なのだろうと想像させた。


 少女はモモタリの腰にしがみついている稲を見るとまるで汚物でも見てしまったかのように橙色の瞳を細めこれでもかというほど眉を歪ませ小さく舌打ちをした。


「お前、まだ人間と婚姻するつもりなのか?」

「最近悪霊けしかけてるのってカグラ?」


 お小言中だったカグラと呼ばれた少女の言葉にかぶせるようにモモタリは言った。

 カグラは頭を掻くと「さて」とだけ答えた。


「神の遣いである俺たちは人々と妖を取りまとめ平和とさいわいと祈るものだ」


 そう言ってモモタリはまっすぐな朱色の瞳をカグラへ向けた。

 カグラ面倒くさそうに頭を掻き「なんで我だと思う」と不敵に笑った。

「こんなこと出来るのは超人的な力を持つものしか考えられないし…」

 と、モモタリは言うとカグラはにんまりと嬉しそうに笑った。先ほどからちらちらと八重歯がのぞき可愛らしいが、どこかプレッシャーを感じる美しさだと稲は思った。


「カグラ殿はご主人に執着されておられますもんね」


 二人の傍にいつの間にか歩み寄っていたコウギョクは大きな声で言った。

 その言葉が不愉快だったのかカグラは眉をぐにゃりとまげると「また割られたいのかガキ」とコウギョクを罵倒した。


「これは執着などではない、愛だ」

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