☆第8話 別れの理由
皆様、毎度ご愛読ありがとうございます。
投稿がスローペースで申し訳ありませんが、今後とも、よろしくお願いします。
チャラッチャ、チャラッチャッチャ。
スマホのアラームが鳴って目覚めた。
俺はスマホを手に取り、アラームを切る。
もう朝か。窓からは薄く光が差し込んでいた。
「ああ、学校にいかなきゃ」
なんだか体が鉛のように重い。ベッドから起き上がりたくない。でも…
本当は今日は学校を休みたかったけど、家族にいらぬ心配をかけてもと思い直し、とりあえず登校することにした。
俺はベッドからゆっくりと起き上がり、階段を降りて行った。
顔を洗い歯を磨き、髪型を軽く整えて、制服に着替えた。
濡れた制服は、母さんが昨日のうちに乾燥機にかけてくれていたみたいだ。
「陽、郵便受けを見たら、こんなものが封筒に入っていたんだけどね…」
母さんが困惑気に言って俺に手渡したものは、十字架のネックレスと渦巻状の貝殻だった。
「そのネックレス、陽が空ちゃんにプレゼントしたものじゃないの?」
「ああ、それ、空ちゃんへのプレゼントじゃないのさ」
姉貴も2階から降りてきた。
「それが郵便受けに入ってたって?陽、どういうこと?」
ネックレスを見て、俺に不審げな顔を向けて姉貴が聞いてきた。
「別に…なんでもないよ」
そう答えた俺は、ネックレスと貝殻を持って部屋に上がっていった。
空がこれを俺に返しにきたのか。いらないなら、自分で捨てればいいだろ。
それをわざわざ俺に送り付けてくるなんて、一体何を考えているんだ?
俺はネックレスと貝殻を封筒に戻して、机の上にぶん投げた。
カバンを持ち部屋を出ると、目の前に姉貴が立っていた。
「陽、空ちゃんと何かあったんじゃないの?なんかおかしいよ?」
姉貴が心配そうに聞いてくるが、今は何も話したくない。
俺は姉貴に「大丈夫、何もないから」と言って階段を降りて行った。
俺は母さんから弁当を受け取って、朝食をとらずに家を出ていった。
学校までの距離が、なんだかいつもより長く、遠い気がする。
今までは毎朝空と一緒に登校していたが、今朝は一人でトボトボと登校した。
◇
学校に着くと、俺は重い足取りで教室へと向かう。
俺と空は同じクラス。空は窓際の前から2番目の席、俺は同じく窓際の一番後ろの席だ。
学校に来たはいいが、一体どんな顔をして教室に入ればいいんだろう。
教室のドアまで来ると、なんだか教室の中が騒々しい気がする。
俺が意を決して教室に入り自分の席に座ると、空の周りにクラスメイト達が群がって何やら騒いでいた。
すると俺の席に大輝が寄ってきた。
普段はおちゃらけキャラの大輝が、珍しく何やら複雑な表情をしている。
「なあ陽、空ちゃんと何があったんだ?」
「どういうこと?」
「いやな、空ちゃんが2年の学校一のモテ男子で有名な碓氷湊斗と付き合い始めたって」
「え?」
「だから、空ちゃんがお前と別れて、碓氷と付き合い始めたんだってば。朝から学校中その噂でもちきりになってるんだよ!」
「……」
空が他の男子と付き合い始めた?それで昨日俺に別れを告げた?
一体何が起きたというんだ?
「陽、空ちゃんと何があったんだよ?」
「俺も何が何だかわからないよ。ただ、昨日急に空から別れようと言われて…」
俺は昨日の出来事を大輝に話した。
「そうか。空ちゃんが心変わりしたという訳か」
「そうみたいだね」
「お前人事みたいに言うなよ!で、お前、これからどうするんだ?」
「そんなの、わかんねーよ!」
俺は少しキレぎみに答えた。大輝にあたっても仕方がないのに。
「まあ、とりあえず現実を受けとめるしかねーな。でも俺がついているから安心しろ」
有り難い言葉だが、今の俺には全く響いてこないよ。
大輝の話をまとめると、2年のモテ男子、碓氷湊斗が空をみそめて猛アタックで口説き落としたと言う。
夏休み中に湊斗が空に告白し、空がOKしたというのだ。
それで学校一の美少女と言われている空と、学校一のモテ男子湊斗のカップル誕生に学校中が騒然としているみたいだ。
夏休み中…じゃあ、空が会っていた相手って…
空を取り囲んでいる男子の1人が、わざと俺に聞こえるような大声で言った。
「空ちゃんは悪くないよ!今まであんなダサ男と付き合ってたのが、そもそもおかしかったんだよ!」
なんだこいつ、ぶっ飛ばしてやろうか?
俺はそいつをじっと睨みつける。
すると大輝が俺の頭をポンと軽く叩いた。
「陽、まあ外野のことは気にするなって。言わせておけばいいよ」
しかしこの状況、かなり気まずいな。空とは同じクラスだし、しかも家も隣同士だ。
一体これからどうやって生活していけばいんだろう。
いっそ、高校辞めちまおうかな。
大輝が一度咳払いをしてから続ける。
「まあ、とりあえず、放課後カラオケでも行くか?少しは気晴らしになるんじゃないか?」
大輝、俺、今はカラオケなんてする気分じゃないよ。
でもまあ、大輝が俺に気を使ってくれているのはわかる。
すると、優太と拓也も寄って来た。
二人とも、事情を知って俺に声をかけてきてくれた。
「陽、空ちゃんと別れたんだって?でも大丈夫。女なんていくらでもいるからな。これからは俺と女探しの旅に出ようぜ」
優太が明るい口調で、一応俺を慰めてくれているようだ。
でもな、優太、俺は失恋したばかりだぞ。悪いが、他の女を探す旅に出る気にはなれない。
「陽、空ちゃんなんて、もう忘れちゃえよ。やっぱ付き合うなら小学生から中学生の少女が一番だよ」
拓也、それはお前が特殊なんだよ。高校生にもなって小学生とか…俺にロリコンの趣味は無いからな。
まあでも、こいつらなりに俺を心配して気遣ってくれているのだろう。
犯罪臭のする二人だが、何故か気が合うんだよな、不思議なことに。
大輝が話をまとめるように喋り始める。
「とにかくだ。今の陽は傷心しているんだから、俺達で助けてあげなきゃな。お前らも協力しろよ?」
「わかってるよ、友達じゃないか」
「俺も陽の為にできることはなんでもするからな。話も聞くし」
ここで先生が教室に入って来た。
クラスメイト達は蜘蛛の子を散らすように自分の席に戻っていった。
空を見ると、後ろを振り返ることなく、ずっと前を見ている。
もう、今までの二人では無くなってしまった。その実感が改めて湧き出て来た。
これから俺はどうなってしまうのだろう。
どうやって生きていけばいいのだろう。
言い知れぬ不安ばかりがつのり、心がザワついて苦しかった。
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