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☆第7話 プロローグ⑦

新話、追加いたしました。

仕事をしながら書いているので投稿がスローペースになるかもしれませんが、

今後ともよろしくお願いします。

『私、陽のことがキライ…大嫌い!』



『陽は、いつまでたっても子どものまま。でも私は陽とは違うの。どんどん大人になって行くの』



空…いったい、急にどうしたというんだ?


今まで、幼い頃からずっと二人で仲良くしてきたじゃないか。


それなのに、空は急に別れようと言ってきた。そして、俺が嫌いだとも…




何故…何故…




俺は呆然としたまま歩き続けた。頭の中が真っ白になって、思考が追い付いていかない。



『私、陽ちゃんのお嫁さんになるんだ』



俺はただ、空とずっと一緒にいたかっただけだ。


空とずっと仲良くして、そして大人になったら結婚して、そして子どもが生まれて、そして…


俺が描いていた空との未来が、全て砂城のように崩れ落ちていく。



何故…何故…



俺は、時折よろめきながらも、歩き続けた。ただただ歩き続けた。





気がつくと、俺は呆然としたまま繁華街を歩いていた。まるで害虫が、灯りを求め彷徨うように。


ただ、トボトボ、トボトボと。


何処へ行くあてもなく、かといって家に帰る気にもなれず、ただ、ぼんやりと歩いていた。


やがて雨雲がわき、ゴロゴロと雷が鳴りだしたが、今の俺には、何の感情も無い。


そして急にスコールのような雨が降ってきた。


夕暮れ時から既に暗闇へと変化した街を、雨の降る中ずぶ濡れになったまま、ただただ歩いていた。



空……何故…何故…




「あぶない!!」



キーーーーーーーーッ!! 



車の甲高いスキール音が鳴り響く。



「うわああああ!!」



ドタッ!!



俺は誰かに腕を引っ張られて、歩道に倒れ込んだ。



「いたたたっ」



はっとして周りを見回すと、目の前に車が止まっている。どうやら俺を避けようと急停止したようだ。



「バカ野郎!どこ見てんだ!あぶねーだろ!気をつけろや!クソが」



若い男性ドライバーが助手席の窓を開けて、車内から俺に向かって怒鳴り散らした。


そして車は勢いよく走り去っていく。



「ちょっと君!赤信号で横断歩道を渡ろうなんて、一体何考えてんのよ!」



その声で俺はやっと現状を把握した。


そうか、俺はぼーっとしていて、赤信号の横断歩道を渡ろうとしていたんだ。


そして直進してきた車にぶつかりそうになって、そして誰かが腕を引っ張って助けてくれたんだ。



「ちょっと、私の声聞こえてる?君、死にたいの?」



俺は地面に倒れ込んだまま、声の主の方に顔を向けた。


するとそこには、一人の少女が立っていた。



「私が助けなかったら、君、完全に車にぶつかっていたわよ?」



「ああ…助けてくれて、ありがとう」



「まったく、私までずぶ濡れになったじゃないの」



少女はそう言いながら落ちていた傘を拾って持ち、俺の腕を掴んで立ち上がらせてくれた。



「君、その制服、青蘭学園高校じゃないの。何年生?」



「ああ…1年です」



「私の1個上ね。名前は?」



「あ、紅井陽です」



「そう、私は青蘭学園中学3年の道明寺どうみょうじ もえ!校舎が隣どうしだから、会うこともあるかもね。てか 君、ずぶ濡れでぼーっと歩いてて、頭大丈夫?」



「ああ…ごめん」



俺はそう言いながら、少女を見つめる。


その少女は中学3年生にしては、かなり大人びた雰囲気だった。


しゃべり方もなんか、かなり、ませているなあ。


長い髪の毛の両サイドをリボンで結んでいるのが印象的だ。



「あのね、何があったか知らないけど、もう家に帰りなさいよ」



その少女、道明寺萌という中学生は、あきれ顔でそう言った。



「ああ…」



俺は、ぼーっと、その少女の顔を見ていた。



「まったくもう。じゃあ私はもう行くからね。しっかりしなさいよ!」



そう言うと少女は何やらぶつぶつ言いながら去って行った。





俺は雨の中をずぶ濡れのまま、トボトボと、家へと向かって歩いて行く。


歩きながら、何故か自然に涙が流れてきた。



何故…何故…



俺は長い時間をかけて家の前までたどり着き、ふと空の家を見上げた。


2階の空の部屋は真っ暗だった。


俺はそのまま自宅の玄関のドアを開けて中に入り、うつむいたまま突っ立っていた。



「陽、何処に行ってた…どうしたのよ!ずぶ濡れじゃない!」



姉貴が驚いたような顔をしてそう言うと、洗面所からタオルを持ってきてくれた。



「とりあえず、早く着替えなよ!風邪ひいちゃうじゃないの」



俺はタオルで頭を拭きながら階段を上がり、自室へと入った。


電気をつけ、制服を脱ぎ、スウェットに着替えて眼鏡を外し、ベッドに寝転がる。



何故…何故…



その言葉だけが、頭の中をぐるぐると回っている。


ベットの上でただ天井をぼんやりと見つめていると、姉の沙希がドアをノックして部屋に入ってきた。



「陽、なんかあったの?ずぶ濡れになって、顔色も悪いし、あんた、なんか普通じゃないわよ?」



勘のいい姉貴が何事かと心配そうに聞いてきたが、今は誰ともしゃべりたくない。


俺は「なんでもないから」と言って姉貴を部屋から追い出した。


今は誰ともしゃべりたくない。



「陽、何かあったのなら、お姉ちゃんに言ってよ。いつでも話を聞くからね」



姉貴はドアの外からそう言ってリビングへと戻って行った。



俺は電気を消して、暗い部屋の中でただベッドに横たわって天井を見つめていた。


俺はこれからどうなってしまうんだろう。どう生活していけばいいんだろう。


そんなことを考えながら暗黒の空間をずっと見つめていた。



なんだか疲れたなあ。もうどうでもいいや。何もかも…



そしていつしか俺は、深い眠りへと落ちて行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 夏休みに何かありましたね。ナンパでもされたんでしょうか。アイテムが高価だという事は、相手が裕福なんでしょう。物欲に負けたか、純粋から堕落していくパターンですね。
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