☆第6話 プロローグ⑥
皆様、ご愛読いただきありがとうございます。
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夏休みが終わり、いよいよ新学期が始まった。
登校初日の朝、空からのモーニングコールが復活した。
「陽、おはよう、朝だよ!」
「ふわあ、おはよう、空」
「陽、今日から学校だよ。早く起きて」
「うん、待って、今起きるー」
そうして俺はベッドから起き上がり、眼鏡をかけてリビングへと降りて行った。
顔を洗い歯を磨き、制服に着替えて朝食を食べる。
また今日から学校生活が始まるのだ。
俺は気合を入れるように、両頬をパンパンと叩く。夏休み気分を切り替えなきゃ。
するとピンポンと玄関の呼び鈴が鳴った。
玄関のドアを開けると、制服姿の空が立っていた。
空、あれから髪を茶色にしたんだよな。まあ似合ってはいるけど、ぶっちゃけ、俺は前の黒髪の方が良かった。
「陽、おはよう…早く行こう」
「空、おはよう」
なんか変だな。空にいつもの笑顔が無い。と言うか、なんだか疲れた顔をしている。
「空、なんか疲れてない?」
「なんで?」
「いや、なんか疲れたような顔しているなって…」
「そうかな?軽くメイクしてるせいじゃない?」
「ああ、そうかもね」
そっか。メイクでそう見えるのかな?よくわかんないや。
ちなみにうちの学校は校則がゆるいので、茶髪くらいならOK。女子も軽いメイクなら大丈夫。
そして俺達はいつものように、二人で歩きながら学校へと向かった。
学校に着いて校門をくぐり、二人で校舎の中へ入って行く。
教室に入ると、クラスメイト達がワイワイ騒いでいた。
ひさびさの学校で、みんな友達同士で色々と話がはずんでいるんだろう。
俺は自分の席へ行き、腰を降ろす。
すると中学時代からの親友、織田大輝がニヤニヤしながら寄ってきた。
「陽、ひさびさだな。夏休み中は、空ちゃんとラブラブしてたか?」
「つか大輝おまえ、ずいぶん日焼けしてるな」
「ああ、夏休みには10日間、ずっとグアムの別荘にいたからな。ビーチで焼けたんだよ」
大輝の家は父親が某建設会社の社長で、こいつはまあセレブのお坊っちゃんだ。
でもまさか海外に別荘まで持っているとは、長い付き合いだが初めて知ったよ。
ちなみに大輝は身長177㎝と大柄で空手の有段者。
いったんキレると怖いが、普段はおちゃらけキャラの気さくな男だ。
すると滝沢優太と神山拓也も寄ってきた。これでいつメンが揃ったわけだ。
優太と拓也は高校に入ってから仲良くなった。
「陽、元気そうじゃないか。空ちゃんと仲良くしてたか?」
優太がたいして関心なさ気に聞いてくる。
優太は女好きの盗撮マニアで、可愛い子を見つけるとスマホで盗撮してコレクションをしている。
それにパソコンやプログラミングにも詳しく、時々ハッカーみたいなことをしているようだ。
俺はこいつはいつか捕まるんじゃないかと思っている。
「陽おまえ、夏休み中、空ちゃんとヤリまくってたんだろ!ちくしょう!」
拓也がそう言いながら右腕で俺の首を軽く締めてくる。
拓也は高校生にして生粋のいわゆるロリコン野郎。
恋愛対象はJS、それからJCの低学年まで。
それ以外に興味は無いようで、ロリコン系の動画も多数コレクションしているようだ。
拓也、今はそれ、犯罪だぞ。
二人ともくせが強くおかしい所もあるが、まあ根はいい奴らなんだよな。
ここで先生が入って来て、みんなそれぞれの席に戻っていく。
「さあ皆さん、始業式が始まりますので、体育館に移動してください」
その声を合図に、クラスメイト達がぞろぞろと移動して行く。
◇
始業式が終わり、HRも終わって、今日は午前中で解散となった。
一緒に帰ろうと空を探したが、姿が見えなかった。
女友だちとでも帰ったのかな?
俺は大輝と二人で帰宅することにした。大輝とは途中まで同じ通学路だ。
「空ちゃんどうしたんだ?」
大輝が俺に横から声をかける。
「わからない。探したんだけど。先に帰ったのかな」
俺も空がどうしたのか、かなり気になっていた。そう、帰ったらLINEでもしてみよう。
大輝と途中で別れ、俺は自宅に帰って来た。
俺はなんだか気疲れてしまったので、制服を着たまま、ベッドにごろんと寝転がる。
そしてスマホを手に持ち、空にチャットを送った。
『空、帰り見かけなかったけど、何処かに行ったの?』
既読はなかなかつかなかった。
◇
それから時間が経って、夕方になってようやく空から返信が来た。
『陽、返事遅れてごめん。話があるの。今から公園まで来られる?』
『話って、なに?』
『それは、会ってから話す』
『わかった、今から行く』
俺は制服姿のまま、あわてて外に出る。空の話って、なんなんだ?
俺は公園に着いた。
太陽が西に傾いた夕暮れ時、空がぽつんとひとり、ブランコに座っていた。
空はうつむき、少しブランコを揺らしながら座っている。
俺は、空が何か普通じゃないように思えて、ゆっくりと空に近づいて行き、空の隣に座った。
「空、話って、なに?」
空は暫く黙っていたが、やがて衝撃の一言を俺に告げた。
「陽……私と別れて……」
「え?」
「私と別れて……別れてください……」
俺は、空の突然の言葉を理解できなかった。
「空、いきなり何言ってんの?別れるって何?」
「……」
空はうつむいたまま、口を閉ざしてしまった。
「空?意味が分からないよ。何故俺と空が別れることになるんだよ!」
「……」
「急に別れるとかおかしいだろ!一体何があったんだよ」
すると、空が重い口を開いた。
「陽は、いつまでたっても子どものまま。でも私は陽とは違うの。どんどん大人になって行くの」
「だから別れるって言うのか?メイクをしたり、髪を茶髪にしたり、それが大人になるってことなのか?」
「そうよ!それも大人になるってことよ!私は、外見も、中身も変わってきたの!でも陽は止まったままじゃない」
空が声を荒げて言いたいことを言う。冗談じゃない!
「俺は確かにダサイ男でまだ子どもかも知れないけど、いきなりそんなこと、あんまりな言い方じゃないかよ?」
俺も興奮して、声を荒げて叫んだ。全く理解が出来ない。
「……キライ……」
「え?なんだって?」
「私、陽のことがキライ…大嫌い!」
そう言うと、空は立ち上がり、駆け出して行った。
「おまえ、ちょっと待てよ!」
俺は走って行く空を追いかけたが、空は、自宅に入り、玄関のドアを閉めた。
俺は、ドアの前で呆然と立ちすくむしかなかった。
何故……何故こうなった?何故、こんなことになった?
俺は今何が起こったのか理解できないまま、トボトボと歩き出した。
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