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☆第5話 プロローグ⑤

海から帰ってきてから暫くして、空の態度や行動が変化してきた気がする。


空は、俺意外の誰かとよく出かけるようになったようだ。


8月半ばくらいになると、それが顕著になってきた。


日課だったモーニングコールも無くなったし。まあ今は夏休みだからなのかも知れないが。



今日も朝から空がLINE通話に出ないし、チャットを送っても既読がつかないので、気になった俺は空の家に行ってみた。


ピンポンと呼び鈴を鳴らすと、エプロン姿の空のお母さんが出て来た。



「あの、空はいますか?」



「空なら友達と遊びに行くって出かけたわよ。陽ちゃんと一緒じゃないの?」



「ああ、俺は空に会ってません」



「あら、おかしいわね、私はてっきり陽ちゃんと遊びに行ったものと…」



空はどうやら他の誰かと出かけたようだ。それならそうと、俺に一言くれてもいいのに。


俺は少しイラッとしながら、空のお母さんに聞いた。



「空、最近誰かと出かけてます?」



「そうね、確か3日前にも出かけていったけど…陽ちゃんじゃないなら、他の友達かしら」



「そうですか…」



俺はお母さんに挨拶をしてとりあえず自宅に戻る。そして空にLINE通話をするが、応答がない。


空、何処に行ったんだ?



夕食を食べ、お風呂に入って部屋でくつろいでいると、空からやっとLINEチャットが入った。


時間は午後10時をまわっている。



『陽、返事遅れてごめんね』


『空、今日は何処に行ってたの?』


『うん、友達と遊びに行ってた』


『友達って、男子?』


『そんな訳ないじゃない。女の子の友達だよ。買い物とか、色々してたよ』



そっか。まあ高校に入って空も友達が増えたし、今はそっちと絡んでいるのかな。



『そっか。まあ空も女友だちと遊ぶのも楽しいもんね(#^.^#)』


『うん。』


『でも最近空がひんぱんに出かけてて、俺はちょっと寂しいかな(;'∀')』


『ああ、ごめんね。私も女の子同士の付き合いもあるから』


『それはそうだけどね。』


『陽ごめん。なんか疲れたから、今日は、はやめに休むね』


『わかった。じゃあ、またね!』


『うん、また。おやすみ』


『おやすみー』



そして俺はベッドにごろんと寝転がった。仰向けになって天井を見つめる。


そうだよな。恋人同士とはいえ、空も俺と毎日べったりとしている訳にもいかないよな。


きっと今は、女友だちと遊ぶのが楽しい時期なんだろう。


俺は机の上から、海に行った時に二人で買った貝殻を持ってきて再びベッドに寝転んだ。


渦巻状の、白い貝殻。


俺は貝殻を手に取り、楽しかった空との海を思い出す。


この小さな貝殻が、何か二人を繋ぐ宝物のように感じられた。



空、大好きだよ…



そうだ、明日は空と街に出掛けてみよう。何処にいこうかな。


そんなことを考えながら、いつしか俺は眠りについた。





次の日の朝、俺は空にLINE通話をした。



「空、おはよう!」



「陽、おはよう。昨日は早く寝ちゃってごめんね」



「それはいいよ。でね、今日一緒に何処かへ出かけない?」



「うん、いいよ。じゃあ、支度しなきゃ。私、今起きたばかりなんだ」



「わかった。じゃあ用意ができたら教えてね」



「うん。じゃあまた後でね」



通話を切った後、俺は朝食を食べ、身支度を整えて空の連絡を待った。


今日は空と何処へいこうかな。今って面白い映画やってたっけ。


俺がスマホで映画情報を検索していると、空から連絡がきた。



「陽、用意できたよ」



「わかった、今行くね」



玄関のドアを開けて外に出ると、目の前に空が立っていた。



「陽、おはよう」



「空、おはよう!」



今日の空は薄グリーンのワンピース姿で、ハート型のイヤリングをつけていた。



あれ?



「空、メイクしてない?」



「うん、最近メイクの練習始めたんだ。おかしくない?」



「うん、いいと思うよ!それになんか、大人って感じ」



「ほんと?よかったあ」



そう言って空はニコニコと微笑んだ。


空はメイクを始めたんだ。そうだよね、もう高校生だもんね。空も大人になってきたんだなあ。


そして空のバッグを見ると、ブランドバッグを持っていた。



「空、そのバッグ、ブランド物じゃない。高かったんじゃないの?」



「ああ…これね……お父さんにおねだりして買ってもらったの。似合わないかな?」



「いや…似合っていると思うよ」



「ありがとう。えへへ」



俺は空が急に大人びて見えて、少し戸惑っていた。


これじゃあ、美少女の空とダサ男の俺との格差がますます激しくなっちゃうなあ。





そして俺達は繁華街に出て、二人で手を繋ぎながら歩いた。


俺は空に映画でも見ようと言い、映画館へ向かう。


空は恋愛映画が好きだ。ちょうどいい映画が公開されていたので、二人でその映画を見ることにした。


その恋愛映画は、若手俳優が主人公、そして最近売り出し中の若手女優がヒロインの映画で、けっこうヒットしているみたいだ。


俺達はドリンクとポップコーンを購入し、席に座った。


この映画は、主人公の男性が、ヒロインの女性に他に男が出来て捨てられる。


そして紆余曲折を経て、最後は、主人公とヒロインが再び愛し合うことになってハッピーエンドを迎えるという内容だ。



やがて幕が下りて映画が終わった。館内に電気が灯る。



「最後、二人の寄りが戻ってハッピーエンドでよかったね」



そう言いながら俺は空の顔を見た。すると空は、なんだか浮かない顔をしている。



「空、この映画、面白くなかった?」



「ううん、面白かったよ」



空はそう言ったが、空の顔はなんだか寂し気で、とてもハッピーエンドを喜んでいるようには見えない。


俺はかなり感動したんだけどなあ。



その後、馴染みのパスタ屋で遅い昼食を食べて、また街をぶらぶら。


そして夕方になって、二人で歩いて家へと帰って行った。



「今日は楽しかったね」



家の前に着いて、俺はニコニコ笑顔でそう言った。



「うん……あのね、陽」



「うん、なあに?」



「……なんでもない。今日は楽しかった。陽、ありがとう」



「うん、じゃあ、またね!」



「またね」



俺がバイバイと手を振ると、空も手を振り返してくる。


空が家に入るのを見届けてから、俺も家に入って行った。



今日の空、大人びていて、いつもに増して可愛かったなあ。


こんな美少女が、俺の彼女なんだな。なんか俺って、めっちゃ幸せ者だと思う。

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