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☆第3話 プロローグ③

電車に揺られること約1時間半、俺達はやっと旭海岸前駅へと到着した。


その間、空は俺に寄りかかってスヤスヤと眠っていた。


まるで子どものような空の可愛いらしい寝顔をずっと見つめながら、俺は幸せをかみしめていた。



「空、もう着くよ。起きて」



「ふにゃ?」



「ふにゃ、じゃないよ。早く荷物まとめて!」



「うん、陽も、はやく!」



こうして二人で荷物を持って、電車を降りる。


駅から海岸へと歩いて行くと、やがて青く広い海が見えてきた。


今日は快晴で、熱い日差しと、青い空に白い入道雲がぽかりと浮かんでいる。


周りを見回すと、海の家が軒並みを揃えていた。


客引きのおじさんが、旗を振って車を誘導している。



「ほら、空、海だよ!」



「うん、すごーい!海、海、ぜーんぶ海だ!」



空は久しぶりに海を見て興奮してきたようだ。


すると空が両手を口に当てて、ヤッホーと叫ぶ。


空…ここは山じゃないよ。海だよ…



「今日は私ビキニだよ。陽、期待していてね」



「はいはい、楽しみにしてますよ」



俺達は海岸に一番近い海の家に決めて、それぞれの更衣室に入って行く。


先に着がえを済ませた俺は、外にある自動空気入れで浮き輪を膨らませた。


空に使ってもらおうと思って持ってきたのだ。



「陽、おまたせー」



「おおーーー!!」



そこにはビキニ姿の空が手を後ろに組んで、少し恥ずかしそうに立っていた。


少しはにかんでいるようだ。


はぁ、なんて可愛いんだ。


空の水着は上下共に鮮やかなピンク色で、白い小さなハート柄が全面にプリントされていた。


俺は胸元に目を移すと、小柄な空には不釣り合いな豊満な胸をビキニが覆っている。


これって、泳いでる時に取れたりしないだろうか。少し心配だ。


そして腰下には白いレース状のショートパレオが巻きつけてある。



「陽、そんなにじっと見ないでよ。恥ずかしいじゃない」



空はそう言いながら、少し身体を揺さぶった。



「陽、私、どうかな?」



「うん、可愛いよ。とっても可愛い」



「ほんと?嬉しい」



そういいながら空は俺に抱きついてきた。


ビキニ姿の空に抱きつかれた俺は、俺の身体に密着してくる空の胸の感触を愉しんだ。


神様、僕は今とても幸せです!



「さあ空、海へ行こう。」



「うん、陽、はやくはやく!」



「あそうだ、ごめんちょ待って、荷物運ばなきゃ」



俺は浮き輪を空に預け、テントやシート、お弁当などを持ち、二人で海岸沿いまで歩いて行く。


さあ、いよいよ海に行こう。海が俺達を待っている!





俺達は砂浜へと歩いていった。


空は浮き輪を持って、キャッキャッとはしゃいでいる。


俺は重たい荷物を持ちながら、足早に歩いて行く空を追いかける。



砂浜に着くと、テントとレジャーシートで一杯だった。


家族連れやカップル、男性や女性の仲間同士と思われる人たちが、それぞれに海水浴を楽しんでいた。


俺は空いたスペースを見つけ、空に言った。



「よし、この辺でいいかな。空、ここにテントを立てよう」



「はーい」



俺はテントを組み立て固定し、荷物をテント内に入れた。


テントの前にはレジャーシートをひいた。


そして俺と空はテントに座り、目の前に広がる青い海を眺めた。


ザザーという波の音。寄せては返す波。海を見ていると、なんだか心が和むなあ。



「さて、空、どうする?」



「どうするって陽、海よ海。早く海に入ろうよ!」



そう言うが早いか、空はビーチサンダルを脱ぎ、浮き輪を持って海に向かって走り出した。


熱せられた砂浜が熱いらしく、空は時折あつっ、と叫びながら海に入って行った。


あわてて俺も空の後を追いかける。


空ったら、テントの場所ちゃんと覚えてるのか?



水際に着くと、空は既に海の中に入っている。ピンクの水着はけっこう目立つので、見つけやすかった。


空は浅瀬で浮き輪を付けてしゃがんだ。


プカプカと浮いているが浅瀬は波が強く押し寄せるので、大きな波がきたところで空は波に飲み込まれ、ぐるんと回転した。


一瞬、空が俺の視界から消えた。そして立ち上がり、俺の方へ近づいてきた。



「あー、びっくりしたあ」



「ははは、空、ひっくり返ったね」



「もう、陽たったら、笑わないでよ」



空は頬を膨らませて少し俺をにらんだ。空は本当に表情が豊かで可愛い。


俺達は海の中で長い間戯れた後、テントに戻ってきた。





「あー疲れた」



空はそう言いながら、俺に水筒の麦茶を手渡してくれた。


氷で冷やされた麦茶、冷たくて美味しいな。



「なんかお腹空いたね。陽、お弁当食べようか?」



麦茶を飲みながら、空が言った。


そうだな、俺も腹が減ってきたな。


すると空が突然意見をひるがえした。



「あ、やっぱりその前に、ソフトクリームが食べたい!」



「え?かき氷じゃなくて、ソフトクリーム?」



「そう、あそこに売ってたじゃない?買いに行こうよ」



空がニッコリ笑顔でおねだりをする。この笑顔に勝てる男子はいないはずだ。


こうして俺達は売店まで歩いて行き、ソフトクリームを2つ買った。


早く食べないと溶けちゃうからと、二人で食べながらテントへ帰って行く。


テントに着くと、空は俺の顔を見てあははと笑い転げる。



「空、どうしたの?」



「あはは、だって陽ったら、口の周りや鼻がクリームだらけじゃない」



空は俺の顔を指さして、尚も笑い続ける。


そして突然真剣な顔になり、「陽って、まだまだ子どもだよね」とつぶやいた。


そうだな。俺は色々な面でまだ大人になりきれていないかもな。


でもまだ高1だし。



「さてと、陽、お弁当食べましょう」



そう言うと空は、お弁当を広げ始めた。

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