☆第22話 萌とのお出掛け②
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俺は、イケメン店員の青山さんに連れられて、VIPルームに入って行った。
中に入ると、部屋の壁が黒色で、全体にシックなイメージの部屋だ。
中央にガラステーブルと濃茶色のソファが並び、部屋の周りには青い照明、そして絵画や調度品が並んでいる。
「さあ陽様、お着替えを致しましょう」
部屋の隅に試着室の様なスペースがあった。
そこで俺は服を脱ぎ、着替えを始めた。
インナーシャツの上にワイシャツ、ジレベストとやらを着てネクタイを締める。ネクタイは青山さんに手伝ってもらった。
そしてジャケットを羽織り、スーツパンツを履き、ベルトを締めた。
更に革靴に履き替え、ショルダーバッグから荷物を取り出して、新品のバッグに詰めて変えていく。
「陽様、とてもお似合いです」
青山さんはそう言うと、満足げにほほ笑んだ。
「さあ、萌お嬢様にお見せいたしましょう」
そうして俺と青山さんは、VIPルームを出て行った。
俺が店内に戻ると、アクセサリーを見ていた萌が俺のほうに振り向いた。
「陽君…素敵だわ…」
「そ、そうかな?」
「ええ、とても素敵よ、本当に」
そう言って、萌は頬をピンク色に染めて、うっとりとした顔で俺を見ている。
濃いグレーのスーツの下に薄いブルーに縦じまのワイシャツ。そしてジャケットと同系色のジレベスト。
ネクタイはシンプルな濃紺のネクタイで、斜めに薄く縞模様が入っている。
そして革靴は濃茶色で、みるからに高級そうだ。この革靴だけでも一体いくらするのか…。
スーツもよくわからないが、おそらくブランド品なのだろう。
そして、黒色の、プラダのバッグ。
これって、俺みたいな高1のダサ男子に、本当に合っているのか?
「陽君、今、自分には似合っていないと思っているんでしょう?」
萌が俺の目をじっと見つめながら言った。
「ああ、うん。だって、俺みたいなダサイ男が、こんな立派なスーツ…」
「陽君、もっと自分に自信を持ちなさい。少なくとも私は、本当に素敵で似合っていると思うわよ」
そう言って萌は俺に近づいてきて、俺の手を握りしめた。
その手は、柔らかくて温かかった。
「青山さん、陽君の荷物は、今日中に陽君のご自宅に届けておいてくれるかしら?」
「かしこまりました、お嬢様」
そして俺はメモ帳に住所を書いて、青山さんに手渡した。
「じゃあ、支払いはいつものようにお願いね」
「はい、萌お嬢様、お買い上げ、ありがとうございました」
そう言って青山さんとお姉さんは、深々と頭を下げた。
ショップから出てきた俺は、唖然としながら思わず萌に聞いた。
「あの、萌ちゃん?合計金額っていくらになったのかな?」
「さあ、わからないわ。私、そんなの気にしたことがないから」
「え?だって、すごい金額になるんじゃ…」
「支払いはお父様のところに行くから、気にしないでちょうだい」
はあ、左様でございますか。まるで別世界の出来事が、今の俺の身に起こっているぞ。
金額を気にするなと言われても…なんだか、冷や汗が出てきて止まらないよ。
すると俺の顔をじーっと見つめていた萌が言った。
「陽君、メガネを止めて、コンタクトにしてみない?」
コンタクト…いやいや、ずっと眼鏡できたからな。コンタクトはちょっとあれだな。
それに、正直俺は自分の顔が嫌いだ。だから眼鏡をかけていた方が、安心感があるんだよ。
「いや萌ちゃん、俺、眼鏡でいいよ。眼鏡が好きなんだ」
「そう…わかったわ、じゃあ今度は、メガネを買い替えましょう」
え?眼鏡を買い替える?俺、今の黒縁の眼鏡が気に行ってるんだけど。
フレームが太めで、顔が隠れるから。
「萌ちゃん、眼鏡はこれでいいよ」
「それじゃダメよ。陽君のそのスーツに合ったメガネを買いましょう」
萌はそう言って、俺の腕に自分の腕をからめながらまた歩き出した。
◇
そして歩くこと5分。眼鏡屋さんに到着した。ここもなんか高級そうな店構えだなあ。
「陽君、ここにしましょう」
そうして俺と萌は、店内へと入って行った。
「いらっしゃいませ」
女性の店員さんが笑顔で頭を下げた。
萌が店員さんに話しかける。
「彼のメガネを新調したいのですけれど、視力検査をしてくださるかしら」
「はい、かしこまりました。ではこちらへどうぞ」
そうして俺はイスに座って、視力検査を受けた。
その間、萌は店内を見て回っている。
やがて視力検査が終わり、俺は萌に近づいて行った。
「陽君、これなんてどうかしら?」
萌が手にしているのは、細身のシルバーフレームで、スタイリッシュな眼鏡だった。
「こんな洒落た眼鏡、俺に似合うかなあ」
「ええ、似合うと思うわよ。だって、今の陽君のメガネ、全然似合っていないもの」
なんだって?似合ってない?
萌、今まで俺の事をそんな風に見ていたんですか?めっちゃショックなんですけど。
「陽君、とりあえず、かけてみてちょうだい」
「ああ…うん」
俺は眼鏡を萌から受け取り、かけてみた。そして萌に顔を見せた。
「ど、どうかな?」
「うんうん、やっぱり似合っているわよ。素敵よ、陽君」
萌はニッコリ笑顔でそうこたえた。
どれどれ。俺は目の前の鏡を見てみた。
うーん…確かに今のやつより断然こっちの方がいいのは、認めざるを得ない。
「陽君、これにしましょう。店員さん、これをお願い」
「レンズの種類は、どういたしましょうか?」
「レンズは、薄くて、いちばんお高いものを用意してくださる?」
「かしこまりました。暫くお待ちください」
そうして眼鏡が出来あがるまでの間、二人で店内を見て回っていた。
すると萌が、腕時計のショウウインドウで何かを見つけたようだ。
「あら、この腕時計、素敵ね。陽君、これ付けてみましょう」
「ん?どれどれ」
!!
これは、ロレックスじゃないですか!!
いやいや、これはいくらなんでもダメなやつだよ。
萌、流石にこれは平凡な高1のダサ男子が身に付けるものではないですよ。
なんだか、吐き気がしてきた。
「萌ちゃん…これはさすがに、まずいよ…」
「何がまずいんですの?文字盤とフレームがブルーで、綺麗じゃない」
「いや、そういうことじゃなくて」
「店員さん、この腕時計見せてくださる?」
すると男性店員が近づいて来た。
「こちらですね。こちらは、ロレックス、サブマリーナーデイトのロイヤルブルーでございます」
そして白い手袋をした店員がロレックスを取り出し、俺に手渡した。
俺は店員に、小声で聞いた。
「あの、これって、おいくらでしょうか?」
「こちらは、税込み3百10万円になります」
さ、さんびゃく、じゅうまんえん!!
俺の顔から汗がどっと拭きだした。それになんか眩暈が…
「さあ、陽君、はやく付けてみてちょうだい」
萌が俺に、なんだか子どもがおねだりする様な表情でうったえかけてくる。
まあ…とりあえず付けてみるか。そうすれば、萌も納得するだろう。
俺はロレックスを、左手首に付けてみた。
「すごーい、陽君にとても似あっているわ!私これ気に入ったわよ。店員さん、これ、くださるかしら」
「はい。お買い上げ、ありがとうございます。只今ご用意いたします」
俺はロレックスを外して店員に手渡した。
そして萌に近寄って、小声で話しかけた。
「萌ちゃん、これはさすがにダメだよ。これは貰えないよ」
「なぜ?とても素敵な時計じゃない。それに陽君に本当に似合っているわよ」
「いや、じゃなくて、萌ちゃん、あれ、3百10万円もするんだよ!これダメでしょ!」
「だから陽君、私は金額なんて気にしないのよ。さっきも言ったわよね?」
「いやいや。萌ちゃんね、俺は平凡な一般家庭の人間なんだよ?萌ちゃんとは住む世界が違うんだよ」
「ちょっと陽君の言っている意味が分からないわ。同じ日本に住んでいる同じ日本人じゃないの」
うーん、困った。萌ってもしかして天然娘だったのか?
それとも、ご令嬢と付き合うと言うことは、こういうことなのか?
「とにかく陽君、これは私からのプレゼントよ。二人が初めてデートした記念日なんだから。今日くらい私のワガママを聞いてくれても良いのじゃないかしら?」
初デート…いつの間にか、デートに変わってしまっている。
でもこれが、恋愛小説ばかりで恋愛経験のない萌の、楽しい現実なのかも知れないな。
まあ、後で萌に返すことも出来るし、ここは萌に従っておこうか。
「お客様、ご用意ができました」
店員が、眼鏡とロレックスを持ってきた。
「ありがとう、じゃあ、支払いはこれでお願いしますわ」
そうして萌が、財布から黒いカードを取り出して、店員に渡した。
「さあ陽君、メガネと腕時計、ここで付けていきましょう」
萌にせかされ、俺はその場で眼鏡を交換し、ロレックスを左手首に付けた。
萌を見ると、満足そうにニコニコと微笑んでいる。
「あら、お昼をずいぶん過ぎてしまったわね。陽君、お昼を食べにいきましょう」
「ああ、うん」
「この近くにね、うちの行きつけのお店があるの。そこにしましょうね」
萌の家の、行きつけのお店…
いや、こうなったらもう、萌に最後まで付き合うよ。
まあ、萌が楽しんでくれているなら、それでいいや。
そうして俺達は店を出て、また仲良く歩き出した。
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