☆第21話 萌とのお出掛け①
皆様、毎度ご愛読ありがとうございます。
さて今回は、陽と萌のデート?編です。
まったりとお読みいただければ、幸いです。
では、物語の幕が上がります。
土曜日の夜、萌からLINE通話が入った。
「陽君、こんばんは。この前の件、覚えてらっしゃるかしら?」
「うん、休みに一緒に遊びに行くって話でしょ?覚えてるよ」
「よかったわ。それで、明日はどうかしら?」
「うん、いいよ!明日会おう!」
そうして明日、日曜日に萌と会うことになった。
約束は午前10時に、繁華街のコンビニの駐車場。
休日に友達と遊びに行くなんて、ひさびさだなあ。それも女の子と。
するとそれから30分程後に、今度は愛菜からLINE通話が来た。
「陽、明日時間あるう?」
「愛菜、どうしたの?」
「いや、明日、陽と何処か出かけたいと思ってさあ。気晴らしにね!」
うーん、萌と予定が被ってしまったぞ。でも…約束は萌が先だからな。
「愛菜ごめん、明日は用事があるんだ」
「用事って何よ?陽には用事なんてないでしょ?」
俺は言葉に詰まってしまった。どうやって言い訳をしよう。いい考えが浮かばない。
「いや…えと、掃除をしたり、勉強もあるし…」
「陽が勉強ですって?なんかおかしくない?怪しい。まさか、萌ちゃんとデートとかじゃないわよね?」
愛菜…君、するどいね。ピンポン、正解です。
「いや、なんか体調も悪いし…明日は家で大人しくしてるよ」
「どうしたの?風邪でも引いた?じゃあ私、明日お見舞いに行くから」
まずい。なんかどんどん自分で自分の首を絞めている気がする。
「いや、大丈夫。風邪だったら移っちゃうから。じゃあまた来週にしよう」
「ふーん…じゃあ…来週ね?」
「うん、来週遊ぼう」
そう言うと俺は愛菜との通話を切った。愛菜、ごめんな。
◇
翌日の朝、俺は7時に起きた。
顔を洗い、歯を磨き、朝食は自分でトースターでパンを焼いてバターを塗って食べた。
俺は基本料理が出来ないけど、まあこれくらいならやれる。
さて、服はどうしよう。俺は正直、ご令嬢と街を歩くような洒落た服は持っていない。
色々と悩んだ末、上は白いプリントTシャツに黒いジャケット、下はユニクラのジーンズをチョイスした。
ご令嬢の萌は、いったいどんな服装で来るのだろう。俺には想像もつかないけど。
そして俺はショルダーバッグを肩にかけて、約束時間に合わせて家を出た。
繁華街まで歩いて行って、約束の20分位前には目的のコンビニに到着した。
そこで、萌の到着を待つ。
するとやがて、いつもの黒塗りの萌の外車が現れ、駐車場に停車した。
いつものように石川さんが後部座席のドアを開けると、萌が車から降りてきた。
「陽君、おはよう。」
車の横に笑顔で立っている萌は、全体が薄ピンクの光沢があるチェック柄ワンピースを着ていた。
袖の部分が紺色で、腰の部分に同じく紺色のリボンが結んである。
このワンピースがブランド物かどうかは、俺には分からない。
ヘアスタイルはいつものように、長い黒髪の両サイドを薄グリーンのリボンで結んである。
足元には薄グリーンのハイヒール。そしてバッグは…これは俺も知っている。シャネルのバッグだ。
更に胸元には、銀色のキラキラしたネックレスをしている。これって、ダイヤモンド?
ファッションに疎い俺には全く分からないが、とにかく私服姿の萌は、とても可愛かった。
メイクはキラキラリップを塗っている以外は特になにもしていないようだな。
まあ、萌はまだ中3だし、素顔で十分。つか逆に十代の少女には余計なメイクはしないほうがいいと俺は思う。
「陽君、そんなにじろじろ見ないでくださる?。なんだか恥ずかしいわ」
「いや、萌ちゃんがあまりにも可愛いんで、見とれてしまったよ」
「もう陽君たら、お上手ねえ」
そう言って、萌は少し苦笑いをした。
そしてすぐに真顔になって、俺の全身をじーっと見つめて言った。
「陽君、お買い物に行きましょう。私が陽君の服を選んでさしあげるわ」
「ああ、うん」
すると石川さんが、萌に、声をかけた。
「お嬢様、本当に私がお供をしなくて、よろしいのでしょうか?」
「ええ、今日は私と陽君と二人きりにしてちょうだい。石川、あなたは家に戻っていなさい」
「しかし、私はお嬢様の運転手兼ボディガードですので、それではご主人様に叱られてしまいます」
「大丈夫。お父様には昨晩私からお話してあるから。あなたに迷惑はかからないわ」
「…かしこまりました、お嬢様。お気をつけ下さい」
そう言うと石川さんは、車を走らせて帰って行った。
すると萌は、俺に笑顔を向けながら言った。
「石川はね、若い頃自衛隊に入隊して、その後海外で傭兵をしていたの。まあ戦闘術のプロね。それでお父様が私の運転手兼ボディガードとして、彼を雇ったのよ」
傭兵…石川さん、凄い経歴だな。まあ俺もなんとなく、ただ者じゃない雰囲気を感じ取ってはいたけど。
萌といると、なんだか現実じゃなくて、ドラマや映画の世界に身を置いているような錯覚に陥ることがある。
「さあ陽君、お洋服を見に行きましょう」
そう言うと萌は、俺の腕に自分の腕をからめてきた。
そして俺たち二人は、仲良く繁華街を歩いて行った。
◇
しばらく歩いていると、やがて萌が、一軒のお店の前で足を止めた。
「陽君、着いたわ。ここよ」
俺は萌の指をさしたお店を眺めた。外装からして、高級そうなアパレルショップだ。
こんな高級そうなお店、俺には全く縁がない。服と言えばユニクラやGAT、それにしまもと、でしか買ったことがない。
「このお店はね、お父様やお母様と時々来るのよ。さあ、入りましょう」
萌はそう言うと、涼しい顔でショップ内へと入って行く。俺も萌の後に続く。
「いらっしゃいませ。ああ、萌お嬢様、毎度ありがとうございます」
ショップ内へ入ると、上品な服装の美人系お姉さまと、30代くらいかな?スーツを着たイケメン店員が俺たちを出迎えた。
俺は店内をきょろきょろと見回した。
店の中央には高級そうなアクセサリーがショーケースに入っている。
その奥にはバッグや小物が並べてあり、そして店の左右に、レディースとメンズコーナーが分かれているようだ。
「萌お嬢様、本日は、何をお探しでしょうか?」
「今日はね、私のお友達を連れてきたの、彼は紅井陽君。私の大切な友人だから、よろしく頼むわね」
お姉様の店員さんが俺の全身を一瞥して言った。
「かしこまりました。では本日は、ご友人の陽様のお洋服をお求めでしょうか?」
「ええ。そうね。陽君に、スーツとシューズ、それにバッグを見立ててちょうだい」
「承知致しました。では私がご案内させていただきます」
イケメン店員がそう言うと、俺と萌をメンズコーナーへと案内して行った。
「お嬢様、スーツはこちらなどいかがでしょうか?」
「そうね…色合いが少し違うかしら」
そうして俺、萌、店員さんと三人で、スーツやネクタイ、靴、バッグなどを選んで行く。
やがて萌の満足のいく品物が揃ったようだ。萌は笑顔になって言った。
「そう、これでいいんじゃない?陽君は気に入った?」
「あ、はい。」
俺はそう答えるだけで精一杯だった。
つかこれって、全部で一体いくらになるんだ?今日は俺の全財産、3万円しか持ってきていないぞ。
俺がうつむいてきょどっていると、萌が察したのか、笑顔で言った。
「お支払いのことなら大丈夫よ。私が全部済ますから」
「いや、それはいくらなんでも、悪いよ」
「違うの。私がそうしたいの。これは、私のワガママよ。だから、私の言うことをきいてちょうだい」
萌の有無を言わさないような瞳に俺は負けてしまった。
「うん、わかった、萌ちゃん、ありがとう」
「決まりね。じゃあ陽君、ここで着替えてしまいましょう」
「え?ここで着替えるの?」
「そうよ。じゃあ、青山さん、よろしくね」
「萌様、かしこまりました。では陽様、VIPルームの方へどうぞ」
そうして俺は青山というイケメン店員に連れられて、VIPルームとやらに入って行った。
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