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☆第20話 修羅場の後に

皆様、毎度ご愛読ありがとうございます。

仕事の都合上、投稿スピードにバラつきがありますが、

今後もよろしくお願いします。

『わーん。陽、私、悔しいよう。わーん』



愛菜は、湊斗の教室での蛮行を目の当たりにし、俺の胸の中で泣き続けた。


しばらくそうしていると、愛菜も少し落ち着いてきたようだ。



「私、悔しいよ。陽があんな風に馬鹿にされて、あいつ、絶対に許せない!」



俺を見上げた愛菜の顔は、怒りで一杯だった。


俺も正直ショックを受けたし頭にもきたけど、それより愛菜のことが心配だ。



「愛菜、大丈夫だよ。俺はもう空のことは、何とも思ってないから」



そう言って俺は、愛菜の頭を撫でながら慰めた。


それにしても、空は俺をふって、あんな奴とどうして付き合い始めたんだろう。


俺には空の気持ちが全く理解できなかった。





俺はその日の夜、なかなか寝付けなかった。


湊斗のニヤニヤした、スケベったらしい顔。そして目の前での空と湊斗のキス。


それらが頭の中に浮かんでは消えて、眠れなかったのだ。


俺は一体何を考えているのだろう?嫉妬?怒り?俺はまだ空に未練があると言うのか?


自分の気持ちが自分でよくわからない。空の事はふっきったはずだろう?


そうしているうちに、時間は深夜3時を過ぎていた。


俺はスマホにイヤホンを繋いで音楽を聞きながら、やっと眠りについた。





そして翌日の朝、俺はいつもどおり一人で登校した。


歩道を歩いていると、中学校の校門の前に見慣れた黒塗りの外車が停車していた。


俺が近づいて行くと、運転手の石川さんが後部座席のドアを開け、萌が降りて来た。


萌は俺に気付くと、なんだか暗い表情で挨拶をしてきた。



「陽君…おはよう」



「やあ萌ちゃん、おはよう」



「陽君、昨日は大変だったみたいね。愛菜さんからLINEで聞いたわ。大丈夫かしら?」



「うん、大丈夫だよ。ありがとう」



昨日の夜、愛菜から萌にLINE通話が来たそうだ。


そして愛菜が、萌に昨日の出来事を話したという。


愛菜は泣いたり怒ったり情緒が不安定だったので、萌は慰めながら、話を聞いてあげたそうだ。



「本当はね、私その後、陽君にLINEしようと思ったんだけど、なんだか今はそっとしておこうと思ったの」



「気遣いありがとうね、萌ちゃん。俺、ほんとに大丈夫だから。それより、愛菜が心配だなあ」



「そうね…でも愛菜さん、最後には落ち着いていたから、大丈夫だと思うわよ」



そう言って萌はニッコリ笑ったが、すぐに顔を曇らせた。



「それにしても碓氷湊斗さん、ずいぶん酷い事するわよね。私は彼、嫌いだわ」



萌もそんな風に感じているのか。じゃあ他の大多数の女子は?


萌は一瞬だけ怒ったような表情をしたが、すぐに平静な顔になり話を続けた。



「あのね、碓氷湊斗さんのお父さんの会社と、うちの道明寺グループって、取り引きがあるみたいよ」



「取り引きって、どんな?」



「さあ、私も詳しくはわからないけど、なんか関係があるみたい。」



萌と話をしていると、萌がまだ中3だという事を時々忘れてしまう。


博識で頭が良く、やっぱり萌ほどのご令嬢は違うなあと、つくづく思う。


なんていうか、子どもの萌と大人の萌が共存しているような。


そんなところが、俺にはとても魅力的に感じる。



「そうだ陽君、今度のお休みに一緒に何処かへ出かけましょう。少しは気晴らしになると思うのだけれど…」



「うん、いいよ!一緒に遊びに行こう」



「良かった。お誘いして断られたらショックだったわ」



そう言って萌は悪戯っぽく笑った。まだ中3の少女萌が、顔を覗かせた一瞬だった。





俺は萌と別れ、高校の校門をくぐり、校舎へと入って行った。


教室に入って自分の席に座ると、大輝、優太と美織がやってきた。



「陽、昨日は嫌な思いをしたな、大丈夫か?」



大輝が心配そうに話しかけてきた。昨日は大輝も俺の為に怒ってくれたんだよな。



「ああ、大丈夫。何ともないさ、ありがとうな」



「そうか。それにしてもあの湊斗の野郎、相当なクズだな。なんであんな奴が女子にモテるんだ?」



「さあね。俺にも分からないよ」



「いくら金持ちで学校一のイケメンでも、性格があれじゃあな。マジ、理解できないわ」



そして優太も珍しく怒った様な表情で言った。



「俺も湊斗には腹が立ってる。陽、そのうち湊斗のパソコンにハッキングして、脅しのネタを掴んでやるからな」



いやいや優太、おまえ犯罪行為だけは止めてくれよ。こいつは本当にやりかねないから怖いわ。


すると美織も何やら曇った表情で話しかけてきた。



「陽、今日は空、体調が悪いから学校を休むって。昨日のことと関係があるのかしら」



「さあね。俺には関係ないよ」



「私ね、空とは親友なんだけど、あの湊斗って人は、正直、大嫌いなの」



美織によると、湊斗はいつも、「俺にはいくらでも女が寄って来る。どんな女も最後は俺の前にひれ伏すんだ」と豪語しているという。


なんて奴だ。全くあきれ果てて言葉もないや。


でも、そんな奴に女子達が次々と寄っていくんだよな。俺には理解できないわ。



「陽はあいつと全く正反対だよね。優しくて、穏やかで、そして一途なんだよね。ねえ?陽」



気付くといつの間にか愛菜が俺の後ろに立っていて、そう話しかけてきた。



「愛菜、おはよう。昨日は、なんかごめんな」



「なんで陽が謝るのよ。陽は何も悪いことしてないじゃない」



「それは、そうだけど…」



「昨日は私もつい感情的になっちゃった。でも、得したこともあるよ」



「ん?なんだい?」



「それはね…陽に頭をいい子いい子して慰めて貰ったことだよ、きゃはは」



そう言いながら愛菜は、俺に体をすり寄せてきた。


よかった。いつもの愛菜に戻ったようだな。本当に良かった。


そして調子に乗った愛菜が、俺の頬に顔をすりすりしてくる。


するとそれを見たロリコン拓也がすっ飛んできた。



「愛菜ちゃーん。陽にばかりズルイよー。俺にもすりすりしてよー」



「そんなの嫌よ。拓也はあっちいって!シッシッ!」



こうして秒で撃沈した拓也は、すごすごと自分の席に戻って行った。



それにしても、昨日は確かに嫌な思いをしたけど、そのお陰で俺達の絆がさらに深まった気がする。


俺は、自分には大切な友達がいるということに、本当に感謝していた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >私ね、空とは親友なんだけど、あの湊斗って人は、正直、大嫌いなの 何故美織は空に相談されてたのに止めなかったのか? 何故傲慢な男だと知ってたのに、陽や友人に相談をしてでも止めようとし…
[一言] 萌がクズ男親の会社を潰し、クズ男が路頭に迷うパターンですかね
[気になる点] 空これは間男に別れろ言われて別れた可能性出てきたな・・・ 弱みでも握られてるのかな
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