☆第18話 愛菜Side
今回は、愛菜の心情を綴ったお話しです。
いつもは調子にのって陽をからかっている愛菜ですが、その心の内に秘めた想いは…
私、陽のことが大好き。中学生の頃から、ずっと…
陽とは中1で同じクラスになって、席も隣同士になったんだ。
「俺は紅井陽、よろしくね、お隣さん!」
陽は私に笑顔で話しかけてくれた。それが私と陽の最初の出会いだった。
私も「私は神野愛菜だよ!よろしくね」と明るく応えた。
陽と色々話しているうちに、陽には空という幼馴染がいることがわかったの。
そして、どうやら、陽はその空ちゃんのことが好きみたい。
空ちゃんは別のクラスだったけど、休憩時間に、よく陽に会いに来ていたよ。
二人で楽しそうに笑い合ってた。
それを見て私、ああ二人は両想いなのかなって思った。
陽と絡んでいくうちに、私、陽のことがどんどん好きになっていったの。
陽はすごく優しくて、話も面白くて、私はどんどん陽に魅了されていったわ。
それに陽って、眼鏡をかけているから分かりづらいけど、結構なイケメンなんだよ。
眼鏡を外すと、イケメンだけど可愛さもあって、中性的な顔立ちなんだ。
陽って、なんか可愛げがあって、親しみやすいのよね。それに人を引き付ける魅力もあると私は思う。
私調子に乗って、つい、そんな陽の事からかうような態度とっちゃうんだ。
でもね、私がどんなに好きになっていっても、陽の心の中にはいつも空ちゃんがいたの。
それは私にもわかってたけど…
でも、私の陽を好きな気持ちは抑えることができなかった。
それでも私は二人のことを邪魔しないように気をつけながら、クラスメイトとして陽と接したわ。
私、その時はそれでいいと思ってた。陽と一緒にいられるだけで十分幸せだって。
完全な片思い。でも、私の初恋。
◇
そして私達は中学2年に進級した。
陽とは同じクラスのままで、本当に嬉しかった。
空ちゃんはまた別のクラスだったけど、中1の時のように、休憩時間や昼食の時に陽に会いに来ていた。
仲良くしている二人を見るのは正直つらかったけど、でも陽が笑顔でいられるなら、それでいいやって。
そして私の一番の思い出は、中2の時の学校祭。
クラスでお化け屋敷やヨーヨーすくいなど、色々な出し物をみんなで考えた。
その中の出し物の一つ、かき氷屋さんを、なんと、陽と私二人でやることになったの。
私は嬉しくて嬉しくて、飛びあがる思いだったわ。
陽と二人で、テーブルの設置や飾りつけなど、色々工夫しながら準備して、とても楽しかった。
その時だけは、なんだか陽を独占しているようで、私、ついつい舞い上がっちゃった。
そして学校祭当日、陽と二人並んでのかき氷屋さん。
陽がかき氷を作って、私が接客して、二人の共同作業は順調だった。
そしたら、空ちゃんが女友だちとやって来たの。
「空、待ってたよ!さあ、空は何味がいい?」
陽は満面の笑みで空ちゃんに近づいて行って、楽しそうに話し込んでいた。
私はその光景を見て、現実に引き戻されたわ。
そうだった。陽には、空ちゃんがいたんだ。
私は涙が出そうになるのを、つくり笑顔で必死にこらえた。
これでいいじゃない、陽が幸せなのが、一番なんだから…
私は必死でそう自分に言い聞かせたわ。私は泣かない。いつものように、笑顔の私でいようって。
◇
そして中3になった。
空ちゃんも今度は同じクラスになって、陽と空ちゃんの間はますます接近していったみたい。
陽と空ちゃんが私立青蘭学園高校に進学を希望していると知った。
それで私も同じ高校に進学したいって。
私、ストーカーみたい?きもい?
でも、私は、どうしても陽と同じ高校に行きたかった。
受験勉強も必死に頑張ったわ。
両親に青蘭学園高校に進学したいと相談したら、お父さんに、県立にしてくれないかと言われた。
よくわからないけど、多分、経済的事情だったんだと思う。
私は両親と何度も話し合った。どうしても青蘭学園高校に行きたいって。
やがてお父さんが、「おまえの気持ちはよく分かった。自分の好きな高校を選びなさい」と言ってくれた。
やった!これで陽と同じ高校に入れるかも知れない。
私はとにかく勉強を頑張ったわ。それこそ必死で。
◇
そして夏休みが過ぎて、二学期が始まったばかりのある日。
空ちゃんが陽に告白をして、二人が正式に付き合い始めたと聞いたの。
それを聞いて暫くは、私は家に帰ると部屋で一人泣きじゃくった。
こうなることは、わかってた。わかってたけど…
私はどうしたらいいの?二人を祝福したらいいの?
私は、陽の幸せを一番に考えていたんじゃないの?
わかってる。すべては私の片思い。叶わない恋。そんなのわかってるよ。
でも…でも…とても悲しくて、悲しくて、自分の気持ちがどうしても抑えられなかった。
涙が勝手に、どんどん溢れてくるの。私、バカみたい。
それでもやっぱり、私は陽のことが好き。だから、同じ高校を目指す。
もちろん、二人のことを邪魔する気はない。
ただ、陽のそばにいたいだけ、ただそれだけ…
◇
そして私は無事に青蘭学園高校に進学できた。
陽と空ちゃんと同じ高校。
クラス表を見ると、陽と空ちゃんは同じクラス。私は別のクラス。
でも私はこれでよかったと思ったわ。陽から少し離れているくらいが、ちょうどいいって。
そして一学期が終わり、夏休みが終わり、二学期のはじめ。
陽と空ちゃんが別れたと知った。
空ちゃんが陽を捨てて、他の男子にのりかえたんだって。
それを聞いて、私の中に怒りがこみあげて来た。怒りで手が震えた。
二人とも、幼い時からずっと仲よしだったのに。空ちゃん、なんで?どうして?
空ちゃん、空、あんた、なんで陽を傷つけるようなことをしたの?何故?
空、陽がどんな気持ちだったか、あんたにわかる?陽がどんなに傷ついたか。
私は、陽を傷つけた空を、絶対に許さない!絶対に!
もう私、自分の秘めた想いを隠したりしない。
私、覚悟を決めたわ。
私は陽が好き、大好き。
だから、これからは私が陽の心を癒して、慰めるんだ。
私が陽を…
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