☆第17話 決戦を終えて
俺は本当に困り果ててしまっていた。一体どうしたらいいんだろう?
萌の弁当の方が美味しかったのは事実。
やっぱり引き分けにしたほうが、丸く収まるんじゃないか?
うーん…
でも、でも、やっぱり自分自身に嘘はつきたくない。
愛菜がどう思うのか心配だけど、やっぱり公正に判断して答えを出した方が、いいと思う。
「さあ、そろそろ陽にはジャッジメントしてもらいましょう!」
そう言って優太が答えを促してくる。
俺は意を決して答えた。
「勝者は……萌ちゃん」
「おおっと、勝敗が決まりました!勝者は、道明寺萌ぇーーー!」
優太がそう言うと、ギャラリーから歓声と拍手が沸き上がった。
「陽君、ありがとう」
萌が俺を見てニッコリと微笑む。
一方愛菜が目を吊り上げて、萌を睨んでいる。
「ちょっと萌ちゃん!これって全然フェアじゃないでしょうが!」
「何がですの?」
「あんたは高級食材を使って、おまけにシェフまで味方につけて、こんなのズルイじゃないのよ!」
「そうかしら?私は自分の思うように作ったつもりよ」
「こんなの最初から勝負になんてならないわよ!」
確かに愛菜の言うことはもっともだ。
二人が弁当対決を言い出した時、俺が止めるべきだったんだよな。全て俺の責任だ。
俺は、愛菜が可哀そうになってきた。俺の為に、一生懸命に弁当を作ってくれたのに。
弁当対決なんて、必死で止めるべきだった。俺の心は後悔と申し訳なさで一杯になっていた。
俺は二人に語りかけた。謝罪がしたかったのだ。
「愛菜、萌ちゃん。全て俺が悪かったんだよ。弁当対決なんて、俺が二人を止めればよかったんだ。本当にごめん」
「いや、陽は別に悪くないわよ。私たち二人が勝手に言い出して、勝手にやったんだから」
萌が俺をじっと見つめながら言った。
「陽は悪くない。もういいわよ。私は陽の為に一生懸命にお弁当を作った。それでいい」
愛菜は、逆に俺を慰めるように、必死で笑顔を見せた。
「私は私の気持ちを込めて陽にお弁当を作った。それが陽に伝わったとしたら、私はそれで満足だよ」
「うん、愛菜の気持ちは十分に伝わったよ。愛菜の弁当も、本当に美味しかったよ」
俺はそう言って、愛菜の頭を撫でた。
すると萌が、はぁーっと息をはいてから、愛菜に向けて言った。
「愛菜さん、あなたの言う事も確かに一理あると思うわ。私もなんだか、むきになってしまったわ。ごめんなさい…」
「萌ちゃん、もういいわよ。勝敗なんてどうでもいい。だって、私達それぞれが陽の為に一生懸命にお弁当を作ったんじゃない」
「愛菜さん…ごめんなさい。ありがとう」
「萌ちゃん、私たち二人がいがみ合うと、陽が困ってしまうわ。お互い、陽の気持ちを一番に考えない?」
「そうですわね。愛菜さんの言う通りだわ。私たち、バカなことしちゃったのかしら?」
「そうね。私たち、バカだったわね」
そう言うと、愛菜と萌は見つめ合ってクスクスと笑った。
「陽君、ごめんなさい。私、陽君を苦しめるようなことをしてしまったわ。反省しています」
「陽、私もごめんね。なんか変なことに巻き込んでしまったわ」
「いや、俺も本当にごめん。俺はただ、みんなで仲良くしたいだけなんだ。愛菜も、萌ちゃんも、俺の大切な友達なんだよ」
俺は二人に頭を下げて言った。
「陽、もうわかったから。はあー、なんだかスッキリした。萌ちゃん、これでうらみっこなしにしましょう」
「ええ、そうですわね」
「じゃあさ、萌ちゃん、仲直りの握手しようよ?」
「ええ、いたしましょう」
そうして二人は立ち上がって、かたい握手をした。
するとクラスメイト達から歓声があがった。
「二人とも良かったよ!よく頑張ったね!」
「愛菜ちゃんも、萌ちゃんもサイコー!感動した、ありがとう!」
これでなんとか丸く収まったようだ。
よくドラマやコミックでケンカの後に仲良くなるシーンがあるが、これが現実でよかった。
愛菜も萌も、俺の大切な友達だからな。仲良くしてもらいたいのが俺の本音だ。
そして昼食休憩が終わった。
愛菜は「バイバイまたねー」と俺に手を振って、萌はちょこんと頭を下げた。
そして二人で何やら楽しそうにしゃべりながら教室を出て行った。
◇
あれから、愛菜と萌は意気投合して仲良しになったようだ。
お互いに、LINE交換までしたという。
弁当対決でお互いにぶつかり合い、言いたいことを言い合って、スッキリしたのか。
それとも対決後、俺のことを気遣ってくれているうちに、二人の気持ちが変化したのか。
まあこれって、結果オーライってやつか?
とにかく一時はどうなることかと思ったが、二人が仲良くなって俺も本当に嬉しいよ。
これで俺の周りも平和になるかと思ったのもつかの間、またやっかい事が俺に訪れようとしていた。
そう、ついにあいつが現れたのだ…
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