☆第15話 愛菜 VS 萌
皆様ご愛読ありがとうございます。感謝いたします。
さて、次話は、愛菜と萌のお弁当対決です。
どうぞ、二人のバトルにご期待ください。
陽!お弁当タイムだよー!一緒に食べようよーきゃはは」
愛菜がいつもの明るい調子で教室に入って来た。
「陽、お弁当……え、この子、誰?」
愛菜はいぶかし気な表情で、俺と萌を交互に見た。
そして隣の席からイスを持ってきて、俺の隣に座る。
「で?陽、この子、だれ?」
「えと、この子は…」
「私は、道明寺萌です。ごきげんよう」
萌はニッコリしながら答えた。
「そうだ、あんた、中学の道明寺萌じゃないの!なんであんたが陽と一緒にいるのよ!」
「それは、陽君と私は、お友達ですもの」
萌が、ニッコリ笑顔を崩さないまま答える。
「陽君?お友達?あんたたち、いつから友達になったのよ。つかあんたまだ中学生じゃないの!」
「そうですわ、私はまだ中学生ですわよ。それが何か?」
「陽、どういうことよ!それにこの重箱は何?これを道明寺と一緒に食べていたの?」
今度は愛菜の矛先が俺に向かってきた。
しまった。俺は萌の弁当が楽しみで、愛菜のことをすっかり忘れていた。
「いや…愛菜、それは…」
「とにかく、私もここでお弁当食べるからね!」
俺がどもっていると、愛菜は自分の弁当を机の上に広げた。
そして弁当のふたを開ける。
中身は玉子焼きに唐揚げにハンバーグ、ウインナーなど。愛菜はこれらを全て自分で作っている。
「道明寺さん、私はこうやって自分でお弁当を作って、いつも陽とおかずを交換し合いながら食べているのよ!」
「そうなのね。ところで、あなたのお名前は?陽君とはどんな関係かしら」
「私は神野愛菜。陽との関係は…そうね、友達以上、恋人未満の関係よ!」
そう言うと愛菜は、俺の腕を掴み、寄り添って来た。
おいおい愛菜、友達以上恋人未満て、俺達はいつからそんな関係になったんだよ!
頼むから、余計なことを言わないでくれ。
すると、それを聞いた萌の顔が少し曇った。
「友達以上……陽君、そうなの?」
「いや…そんなことは…ないと…思う」
「陽、何よ!別に道明寺さんに気を遣う必要ないじゃないのよ!」
愛菜はそう言って、頬を膨らませながら俺を睨んだ。
ふと周りを見ると、クラスメイト達が何事かと寄って来て、遠巻きにして俺達を観察している。
おいおい、みんな見てるじゃないか。頼むから大事にしないでくれ。
「で、道明寺さん、その豪華なお弁当は、自分で作ったの?」
「これは、うちの専属シェフが作ったものですわよ。良かったらお召し上がりになりますか?」
「いらないわよ!専属シェフだかなんだか知らないけど他人が作った物じゃない。それじゃあスーパーの弁当と一緒じゃないのよ!」
「スーパーの弁当ですって?それは心外だわ。愛菜さん、ちょっと言い過ぎじゃないかしら?」
「道明寺さん、見た目は確かに豪華かも知れないけど、他人が作った弁当で陽が喜ぶとでも思ってんの?」
「他人じゃないわよ。うちのシェフが、陽君の為に愛情を込めて作ったお弁当よ?」
「シェフが愛情を込めてどうすんのよ!あんたが作らないと意味がないでしょ!」
愛菜と萌が火花をバチバチに散らしてどんどんヒートアップしてきている。
これは、どうにかしないとマズイぞ。
「あの…二人とも、そんなに興奮しないで。たかがお弁当じゃないの」
俺はなんとか二人を諫めようと、必死になって言った。
「陽君、たかがとか、そんな言い方はないと思うわ。私、陽君とのお弁当、とても楽しみにしていたのよ」
「てか、陽は黙ってて!これは私と道明寺さんとの問題なんだから!」
ダメだ。もう俺が口を挟める状況じゃなくなってる。
それに、クラスメイトたちがどんどん集まってきているじゃないか。
神様、俺は一体どうしたらいいんですか?
「で、道明寺さんは自分でお弁当作れないの?どうせご令嬢様はお料理なんて出来ないんでしょ?」
「そんなことはないわよ。私、お料理は得意よ。少なくとも、あなたのそれよりは美味しいお弁当が作れるわよ」
「それ、ですって?キーーー!!上等じゃないのよ!じゃあ勝負しましょう!」
「勝負って、なんですか?」
「だから、私とあんたで、陽にお弁当を作ってきて、そして陽が二人のお弁当を食べてジャッジするのよ!」
「なるほど。いいわよ。望むところですわ」
おいおい、お弁当勝負だって?俺が二人の弁当のジャッジ?勘弁してくれよ。
愛菜も萌のペースに乗せられ過ぎなんだよ。頼むから冷静になっておくれ。
「じゃあ道明寺さん、決戦は、明日の昼休みでいいわね?」
「ええ、よろしくてよ。でも勝敗は決まっているようなものですけれど」
「ふっ、大した自信ね。私がそのあんたの鼻っ柱をくじいてあげるわよ!」
そうして明日の昼休みに、愛菜と萌のお弁当対決が決定してしまった。
俺達は弁当を食べ終わり、愛菜と萌が立ち上がった。
「じゃあ、道明寺さん、明日は逃げたりしないでね!」
「愛菜さんこそ、仮病で学校を休んだりしてはダメよ?」
「ムキーーー!!マジむかつく!道明寺さん、明日はちゃんと自分で作ってきなさいよね!」
そうして愛菜と萌は、ヒートアップしたまま二人で教室から出て行った。
どうしてこんな展開になってしまったんだ?弁当対決とか。困ったなあ…
◇
こうして明日の愛菜と萌の弁当対決は、クラスメイト達の知ることとなった。
噂を聞きつけて、大輝、優太、拓也の三人が俺の席に来た。
「陽、明日、愛菜ちゃんと萌ちゃんの弁当対決があるんだって?面白そうだから俺達も見学するぞ」
大輝がケラケラと笑いながら言う。大輝、笑いごとじゃあないんだぞ。
「俺はやっぱ、愛菜ちゃんを応援するかな。でも、中3の萌ちゃんも捨てがたいなあ」
拓也、ロリコンのお前には、そこは悩みどころだな。つか、そんなこと言ってる場合じゃないんだよ!
「俺は中立だな。てか、折角だから、いっそ賭け事にしちまおうか。稼げるかもな」
おいおい優太、おまえ何を言い出すんだよ。俺でギャンブルなんてするんじゃねーぞ!
すると、美織も近づいて来た。
「陽、明日、お弁当対決があるんだって?私も参戦しようかしら」
おいおい美織、お前が参戦したら三つ巴で余計にめんどいことになるじゃないか。頼むからやめてくれ。
それにしても…こうなると明日が来るのが怖い。
だからと言って、ここまで来たら学校を休む訳にもいかないし。
もういいや、どうにでもなれ!!
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