☆第14話 萌のお弁当
皆様ご愛読ありがとうございます。
執筆がスローペースで申し訳ありませんが、今後もご愛顧の程よろしくお願いします。
あの後、俺は運転手の石川さんに車で家まで送ってもらった。
萌はディナーを食べていってほしいと言ったが、そこまで甘える訳にはいかない。
俺は萌に「また今度ご馳走になるよ」と言って帰って来た。
帰宅して制服から部屋着に着替えて夕食を食べ、お風呂に入った後、俺は部屋でベッドに寝転んで天井を見ていた。
萌、ご令嬢、学園一のセレブと言われて、きっと周りからみれば幸せそうに見えるのだろう。
でも、いくらお金があって裕福な暮らしをしていても、それで幸せとは限らない。
もちろん、お金は沢山あればそれに越したことはないだろう。
でも、お金イコール幸福ではないんだ。
俺は萌と出会って、そんな風に考えた。
『私は不幸だわ。周りの人は贅沢だとか言うけど…私は、不幸』
萌の言葉が、俺の心に留まっていて忘れられない。
もし萌が自分は不幸だと感じているのなら、萌には幸せになってほしいと思う。
俺は友達として、自分に出来る事は何でもしてあげたい。萌の笑顔が見たいから。
そんなことを考えていると、萌からLINEが入った。
『陽君、今日はありがとう。陽君とお話して、少し気分が晴れたわ』
『萌ちゃん、良かったね^^もし何か悩み事とかあったら、いつでも相談にのるよ!』
『ありがとう!でね陽君、明日のお昼なんだけど、私が陽君の分のお弁当も持っていくから』
『いや萌ちゃん。そんな気を使わなくていいよ(;'∀')』
『違うの、私がそうしたいの。それに、陽君にも会いたいし』
青蘭学園中学には給食はない。
高校と同じく弁当持参か購買コーナー、もしくは学食で昼食をとることになっている。
『そっか、じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな』
『うん、そうして。だから陽君、明日はお弁当持って来なくていいからね』
『わかったよ!ありがとうね!』
『あのね、陽君』
『なあに?』
『なんでもない。じゃあ、明日、学校でね』
『了解!('◇')ゞ』
『あはは、顔文字おもしろーい。じゃあ、陽君、またね』
萌、本当は気さくで明るくていい子なんだよな。今日、最初会った時とは印象が全然違う。
もしかしたら萌は、幼い頃からご令嬢としての立ち振る舞いみないなものを身に付けて行って、それがクラスメイトとかには何か馴染めないものを感じているんじゃないだろうか。
もちろん青蘭学園には他にも上流階級の生徒は何人もいるけど、多分、萌は別格なんだろう。
明日…なんだか楽しみだなあ。このワクワク感はなんだろう。
もしかしたら、俺、萌のこと…いや、そんなはずはない。
大人びたところはあるけど、萌はまだ中3の女の子。俺にとっては友達で、妹みたいな存在だ。
そう、萌は妹みたいな友達…
◇
翌日の学校。午前中の授業が終わり、昼食時間となった。
俺は萌に言われたとおり、今日は弁当を持ってきていない。
大輝、優太、拓也の3人は、いつもどおり学食を食べに行っている。
空も、弁当を持って教室を出て行った。まあ、いつもどおりだ。
「陽君、ごきげんよう」
声の方を見ると、萌が後ろのドアから、ちょこんと顔を覗かせている。
「やあ萌ちゃん、入っておいで!」
そう言うと俺は立ち上がって、萌に近づいて行った。
萌を見ると、ピンク色の風呂敷を手に持っていた。この中にお弁当が入っているのだろう。
でも…なんか、やけにでかい気がする。
萌の顔を見ると、ニコニコ笑顔で嬉しそうに俺を見ている。
「さあ、こっちだよ」
俺は拓也の席からイスを持ってきて、萌を俺の机の前に座らせた。
「陽君、お弁当、一緒に食べようね」
萌はそう言うと、風呂敷を机の上に乗せて開いた。
!!
何だこれは!!
風呂敷から出て来たのは、高級そうな3段の重箱だった。
これって、漆塗りとかじゃないのか?よくわかんないけど。
そして萌が重箱を開けて机の上に並べる。
その中身は豪華絢爛で、まるでお正月のおせち料理みたいだ。
えと、ローストビーフに、海老チリに…これは、もしかして伊勢海老?
あと、なんか、煮魚に金粉が振ってあるみたいだけど…
俺が驚きで声も出せないでいると、萌がニコニコしながら言った。
「これ、うちの専属シェフが作ったんだけど、気に入ってもらえたかな?」
なんだって?専属シェフ?
ええと、運転手にメイドに、専属シェフまでいるのか?一体どんな暮らしだよ。
「陽君どお?気に入らない?」
萌が心配そうな顔になって、俺をじっと見つめる。
「いや、超豪華過ぎてびっくりしただけだよ!お、おいしそうだね」
「そう、よかった!味も一流だからね。どんどん食べてね。紅茶も持ってきたから」
そう言って萌は満足げに笑った。
俺は萌から、これまた高級そうな箸を持たされた。黒をベースに金色がまだらに…
えと、じゃあ、まず、海老チリを…
俺は海老チリを箸でつまんで、口の中に入れた。
もぐもぐ…
「陽君どお?美味しい?」
「うん、めっちゃ美味しいよ」
「よかった、えへへ」
萌は安心したような笑顔を見せると、自分も食べ始めた。
多分美味しいんだけど、ぶっちゃけ、驚きに味覚が追い付いていかない。
そうして二人で弁当を食べていると、聴きなれた声が聞こえて来た。
「陽!お弁当タイムだよー!一緒に食べようよーきゃはは」
愛菜がいつもの調子で教室に入って来た。
この状況、なんだかヤバイことになる気がする…
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