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☆第13話 萌の初めて

毎度ご愛読ありがとうございます、

皆様の陰で、執筆作業が出来ております。

さて、今回のお話しは、陽と萌の…

さあ、物語の幕があがります。

萌は、紅茶を飲みながら話し始めた。



「実はね、私、登下校の時、何度か陽君と彼女、空さんを見かけたことがあるの。二人はいつも楽しそうに笑い合っていて、幸せそうで、私、羨ましく思ってた」



「空だって?萌ちゃんは、俺と空のこと、知っていたの?」



萌が何故空のことを?俺は疑問を萌にぶつけた。



「ええ。だってあなたたちの噂は、中学にまで広がってきていたもの」



「ああ、学校一の美少女と、ダサ男子のカップルの噂ね」



「そう。あ、でも私は陽君のこと、そんな風に思わなかったわ。なんか、穏やかで、優しそうに見えたの」



そうか、俺達の噂は隣の中学まで広がっていたのか。今では俺の黒歴史だな。


萌は、紅茶を飲みながら話を続ける。



「あなたたち二人は、私の思い描く理想のカップルに見えたの。私もあんな恋愛がしたいなって」



俺は黙ったまま、萌の話を聞いていた。



「そしてあの夜、雨でずぶ濡れのまま歩いている陽君を見かけたの。私は思わず陽君に近づいていった。そうしたら、赤信号の横断歩道に飛び出そうとするじゃない。だから、私、陽君の腕をつかんで助けたの」



そうか、萌は俺を見かけて近くにいたのか。だからとっさに俺を助けることができたんだ。



「その時は私、なんだか急に恥ずかしくなってすぐにその場を離れたけど、陽君に何があったのか、ずっと気になっていたの」



なるほど。萌はその後の俺と空のことを知らないんだな。その噂は聞いていないんだ。



「それでね。私、そのことがどうしても気になってしまって、陽君に話を聞きたいと思ってたの」



そうだったのか。


俺は何も知らない萌に、俺と空との出来事をかいつまんで説明した。


空とは中学3年の時から付き合い始めたこと。そして同じ高校、青蘭学園に入学して、幸せに過ごしていたこと。


そして……空に突然別れを告げられて、ショックで街中を彷徨っていたこと。



「でもどうして?あんなに幸せそうにしていたのに。どうして空さんは陽君と別れようとしたの?」



「それは……空が浮気をして、他に男をつくって、それで…」



それを聞いた萌は、驚いた顔をして両手で口を覆った。



「陽君…かわいそう。空さん…ひどい」



萌の顔を見ると、涙目になっている。


そしてやがて涙が一筋流れ出て、チャポンと紅茶の中に落ちた。



「あんなに幸せそうだった二人の仲が壊れてしまった。現実じゃなくて、恋愛小説の話だったらいいのに…」



「萌ちゃん、これが現実。現実と恋愛小説とは違うんだよ」



「そうね。現実だからこそ、より残酷なのね…」



萌は、うつむきながらそう言った後、表情を曇らせた。



「私…どうしよう」



萌が、困ったようにつぶやく。



「実はね、私が陽君を家に呼んだのは、二人の恋愛話を聞かせてもらいたかったの。男子の陽君に。私は小説の中での恋愛しか知らないから。それに、あの日の陽君のことも気になっていたし」



「そっか。でも恋愛の話なら、同じ中学の男子に聞いたらいいんじゃないの?」



「それは無理よ。私、学校では浮いた存在だもの。みんな、私を遠ざけているの。だから、もしかしたら優しくて気さくそうな陽君なら、こんな私ともお話してくれるんじゃないか、そう思って家に呼んだの」



そうか。萌は学校では友達がいなくて、誰かと話がしたかったのかな。


それにしても、何故、学校でうまくいってないんだろう。俺は萌に聞いてみた。



「萌ちゃん、学校で浮いてるってどうして?」



「陽君…今の私、幸せに見える?」



「萌ちゃん、今、幸せじゃないの?」



「私は不幸だわ。周りの人は贅沢だとか言うけど…私は、不幸」





萌は幼い頃から、道明寺グループの社長令嬢として育って来た。


幼稚舎時代、小学校時代はまだよかったが、青蘭学園中学に入った頃から、クラスメイトが萌を遠ざけるようになったと言う。


あの、道明寺グループのご令嬢、学園一のセレブと言うことで、皆も腫れ物に触る様な気持ちだったのかも知れない。


今の萌の心の支えは、恋愛小説を読むことなんだという。


学校の休憩時間や帰宅してから、ずっと恋愛小説に没頭しているという。


そして楽しい恋愛を想像して、ずっと憧れていたらしい。


そんな時、俺と空が楽しそうにしているのを見かけて、羨ましく思ったそうだ。


なのにあの日、俺がずぶ濡れで街を彷徨っているのを見て、どうしたのかと気になっていたという。


実はあの夜、俺が空にふられて街を彷徨っていた夜、萌もあてもなく街を歩いていたのだという。


萌はその日学校で嫌な思いをして、そして夜の街を彷徨っていた。



周りから見れば、超セレブな萌はたぶん幸せそうに映ることだろう。


だが、本人は、私は不幸だという。


俺は、なんだか萌に同情心が沸いてきていた。





「あの…陽君?」



「なあに?」



萌は頬をピンク色に染めて、思い切った様に言った。



「あの…その…私と、お友達になってくれませんか?」



そう言うと、萌はうつむいてしまった。


俺はそんな萌に、同情心と、そして、なにか可愛らしさを感じた。



「いいよ!友達になろう」



「え?いいの?」



「もちろんだよ。萌ちゃんと俺は、今日から友達だ」



「嬉しい、ありがとう!」



萌は頬をピンクに染めたまま、ニッコリと微笑んだ。



「じゃあさ、よかったら、LINE交換しようか?」



俺は笑顔で萌にそう提案した。



「私、男子とLINE交換したことないんだ。だから…」



「だから?」



「だから…陽君が、私がLINEする初めての男子だね!」



萌はそう言うと、満面の笑みになった。


そしてやがて二人で、クスクスと笑い合った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 萌ちゃん可愛い! 自分のことを不幸だと言う萌ちゃんが、陽くんといることで幸せと言う日が来ることを願うばかり!!! そしてもちろん逆も然りで、陽くんも幸せになれるといいな。
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