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☆第1話 プロローグ①

俺は呆然としたまま、街を歩いていた。


ただ、トボトボ、トボトボと。


何処かへ行くあてもなく、かといって家に帰る気にもなれず、ただ、ぼんやりと歩いていた。


やがて雨雲がわき、ゴロゴロと雷が鳴りだしたが、今の俺には、何の感情も無い。


そして急にスコールのような雨が降ってきた。


夕暮れ時から既に暗闇へと変化した街を、雨の降る中ずぶ濡れになったまま、ただただ歩いていた。



何故…何故…




「あぶない!!」



キーーーーーーーーッ!! 



車の甲高いスキール音が鳴り響く。



「うわああああ!!」



ドタッ!!








俺、紅井あかい よう月野つきの そらは家が隣同士で、幼稚園からの幼馴染だ。


俺と空の両親も仲が良く、ずっと家族ぐるみの付き合いをしてきた。


幼稚園でも二人はいつも一緒に遊んでいて、まるで双子のように仲が良かった。



「私、陽ちゃんのお嫁さんになるんだ」



空は俺にニッコリ笑顔でいつもそう言っていた。


そんな時はいつも、俺は空の頭を撫でて「ありがとう」と微笑むのが常だった。




そして俺達は同じ小学校に入学し、それから時を経て同じ中学校に入学。



幼い頃から可愛かったが、中学生になった空は、俺からみてもかなりの美少女に成長していた。


長い黒髪に、パッチリしているが少し目尻が垂れていて愛らしい瞳。


そしてちょこんとした小さな鼻。うすピンクの唇。それから、少し高音の、いわゆるカワボ。



そんな空だから当然かも知れないが、入学当初から学校一の美少女と噂になり、空は中1から既に何人もの男子達に告白を受けていた。


でも空はその全てを「好きな人がいるから」と言って断っていた。


すると学校内で、空ちゃんの好きな人は誰なのかと色々憶測が広がっていったが、その中に俺の名前は出てこなかった。



俺は空に、好きな人って誰なの?と聞いたことがある。


すると空は当たり前のように「陽ちゃんに決まってるじゃない」と笑顔で答えた。



空とは中1中2と別のクラスで、お互いのクラスを行き来して相変わらず仲良くはしていたが、周りから見れば幼馴染とはいえ、学校一の美少女が俺みたいなダサ男子を好きだとは思いもしなかっただろう。


幼稚園や小学校時代と違って、俺と空は中学に入って、なんとなくお互いを異性として意識し始めていたと思う。


相変わらず仲良し二人に変わりはなかったけど、何か少し距離を置くと言うか、今思えば思春期を迎えた二人にとって、子供から大人のへの変わり目だったのかも知れない。



中3で同じクラスになり、俺の空への想い、恋愛感情は増々強くなっていった。


空の美少女さも更に磨きがかかってきて、胸の膨らみも大きくなり、男子達の空への告白合戦もヒートアップしていった。


でも、どんなに男子達が告白しようとも、空の気持ちが揺らぐことはなかった。


数々の男子達が、空の決まり文句「私好きな人がいるの、ごめんなさい」であっけなく散っていった。



空は俺の事を好きと言ってくれていて、もちろん俺も空の事が大好きだ。


でも俺達はまだ恋人同士とは言えない関係だと思う。


だって、「付き合おう」とか、お互いに告白自体はしていなかったのだから。


放課後一緒に帰ったり、スタバでお茶したり、二人で映画を見に行ったり、ショッピングをしたり…


これってもう既に付き合っている状態だよね。ただお互いにちゃんと告白をしていないだけで。


実際俺は何度か正式に告白をしようと思った事があった。はっきりと「付き合おう」と一言おうと。


でももう既に恋人同士と言えるような関係で、今更告白しても意味がないのかなとも思った。



そんな状態で中学校最後の夏休みが過ぎて、二学期が始まってすぐのある日の放課後、俺は空に校舎の屋上に呼び出された。



「陽ちゃん、ちょっと話があるの」



「どうしたの?」



「うん…私ね、陽ちゃんが大好きなの」



「俺も、空が大好きだよ。大切に思ってる」



「ありがとう。陽ちゃんさ、幼稚園の頃から、私が陽ちゃんによく言っていた事、覚えてる?」



「それって、俺のお嫁さんになるってこと?」



「そう。私、その気持ち、ずっと変わってないよ。今でも大好きだよ」



「ありがとう、俺も同じ気持ちだよ」



「私も同じ思い。でね、今までお互いに…ちゃんと告白していなかったから、私、なんだかずっと宙ぶらりんみたいな思いでいたの」



そうか、空も俺と同じ気持ちでいたんだな。


俺も、もっとはやく、ハッキリと告白していればよかったのかも知れない。



「でね、お互いにこのままじゃいけないって思ったの。陽ちゃんからは、いつまで待ってもその言葉がないし。だから、もう私が言うね」



「うん」



「陽ちゃん、私の彼氏になってください。正式に、付き合ってほしい」



「空…ありがとう。俺の彼女になってください」



「よかった。これで私達は、本当の恋人同士だよ」



「うん、なんか、スッキリしたぁ」



「私も、スッキリ」



そうして二人でクスクスと笑い合った。


そしてすぐに空の顔が真剣な表情になった。


頬をピンク色に染めた空が、俺に接近してくる。



「陽…大好き」



「俺も、空が大好き」



そして俺達はハグをした。恋人同士としての、初めてのハグを。


残暑の太陽が屋上を熱く照り付けていたが、俺達はそれ以上に熱く抱き合い続けた…





それからの二人は、恋人同士として、お互いさらに距離を縮めていった。


俺達が正式に付き合い始めたことは、すぐに学校中に広まった。


二人を祝福してくれる生徒や、嫉妬の目で俺を睨みつけてくる男子達や、色々な反応があった。


でもそんな他人の目なんて、俺達二人にはどうでもよかった。


それからは、空に告白をしてくる男子はいなくなった。


俺と空は今までと変わらず、毎朝一緒に歩いて中学校に登校して、そしてまた一緒に帰ってくる。


ただ、お互い正式な恋人同士となったことで、お互いに対する行動は、少し変わってきた。


帰り道はいつも家の近くにある小さな公園で、ブランコに二人で座りながら色々とおしゃべりをした。



「陽、大好きだよ」



「俺も、空のことが大好き」



帰り際にはいつもそう言い合って、お互いの愛を確かめ合うように、唇を重ねた。





その年の冬、クリスマスイヴの夜。空の家にお互いの家族が集まってワイワイと騒ぎ楽しんだ。


受験勉強に追われていた俺達には、つかの間のご褒美。


そして俺と空はお互いにプレゼント交換をした。


俺はクリスマスにちなんで、小さな十字架の付いたネックレス。


空は俺に手編みの白いマフラーをプレゼントしてくれた。



そして次の日の午後、俺達二人は外に出掛けて行った。


その日は雪が降っていて、ムードのあるホワイトクリスマス。


二人でパスタ屋で夕食をとり、手を繋ぎながら街を歩いた。


やがて、空は俺の腕に寄り添いながら歩く。そして時折小首をかしげて俺の顔を見た。


そして二人は立ち止まって見つめ合い、甘いKissをした。


雪の降る夜、寒かったけど、街のクリスマスの電飾がとても綺麗だった。


まるでクリスマスの街の賑わいが、二人を祝福してくれているようだった。


その夜、二人は初めて重なり合った。お互いの愛を確かめ合うように…



俺は空とのこの楽しい日々が永遠に続くような、そんな気がしていた。

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