第五話
トントントン、ジュュー。
ミネアは台所でお昼を用意していた。
中々料理が進まない。
はぁ…
何度目のため息か、チラッと窓の外を見ると森で出会ったあのパーティーが庭で野営まがいをしている。
もちろん室内のベットには先程の重症者が寝ている。
はぁ、何でこんな事になってしまったのか…
さかのぼる事、数時間前
ー
ーー
「どこへ行く?」
「いや~、怪我の手当ても終わったので家へ帰ろうかとー…」
「まだ、質問の答えを貰ってないが?」
ドキッ
やっぱり答えないとダメかぁ…
「はぁ。さっきの魔法でしたっけ…あれは…」
「アラン!出発の用意ができましたよ。さぁ、森を出ましょう!!」
「、、、あぁ、今行く。」
ミネアが答えようとした声を遮ってアランを呼ぶ声がし、渋々アランも答える。
ナイスタイミング!!
よし、これで逃げれる。
なんて思ったミネアは甘かった。
でわ、私も。と一つお辞儀をして帰ろうとしたのだが、ん?腕を離してもらえない…
「あのー、手離してもらえますか?」
早く離してよー。そんな思いで問いかけると何故か先程問い質されてた時の顔とは打って変わって満面の笑みでこちらを見ていた。
うわー、嫌な予感しかしない…
「先程君は家に帰ると言っていたね。」
「そっ、そうですが…」
「ここから君の家は近いのかな?」
「!!!」
あー、この流れはまずい。何とか回避しなきゃ!ミネアは顔を少し引きつらせながら答える
「えっと、遠くはないですが…近くもないかなぁーっと…」
「ほぉ、近くはなくても軽装で森に入る事が出来るくらいの距離なのだろ」
あー、どんどん詰められていくー…
「まぁ、そうなんですけど…家は私1人なので装備にうるさく言われないので…」
「へぇー」
しまった!!
ミネアは直ぐに口を閉じたが既に遅かった。
アランがニヤニヤしながら口を挟んできた。
「1人って事は、俺たちを連れてってくれても問題ないよな?それに、ほら重傷者もいるし早く休ませてあげたいだろ?俺らの拠点まではだいぶ遠いんだよな。何、女の子1人の家に入れろとは言わない。周りで少し休ませてもらえば十分だから。」
ずいッとアランは顔を近づけてニコっとしながらミネアに追い討ちをかけた。
あー、笑ってるはずなのに、この人の顔が悪い人の顔にしか見えないわ…
はぁ、と頭をかかえミネアは降参した。
ー
ーー
ーーー
「あーぁ、もっと世渡り術を学んでおくべきだったかしら…」
後悔先にたたずとは言うが、今日森へ入ったことは失敗だったなぁ…運がいいと思ったんだけどなぁ。
結局七色アザミはなくなっちゃうし、変な人達まで連れて来ちゃうし…
カタン。
と作っていたご飯を器に盛り、温かいうちに庭でキャンプを張っている人たちに持っていく。
「これ、どーぞ。栄養効果の高い薬草が入ってる粥ですので、少しは早く回復出来るかと思います。」
「あぁ、悪いな。」
ニコっと笑ってアランが答えるのだが全然悪いと思ってなさそうだ…
「すみませんね、彼は中々捻くれた性格をしているもので」
後ろからひょこっと清潭で優しそうな顔をした騎士がミネアの考えを読んだかのように答えてくれた。
「そういえば、助けて頂いたのに自己紹介がまだでしたね。私は王宮騎士団が1人リザルド・マクラベルと申します。そして、彼がアラン。あちらにいるお二人はアルバード・キグスにブラン・ノルマンディです。そして、ベットを貸して頂いてる者はジュード・ハバロスと申します。皆王宮騎士団をしております。」
リザルドと名乗った男はご丁寧に皆の紹介をしてくれた。
どの人も姓がある、と言うことはやんごとなき方々なのだろう。この国では貴族階級以上ではないと姓は持っていないのだ。
「あっ、私はミネアと言います」
ペコっと頭を下げて軽く名乗る。
「ミネアさんとおっしゃるのですね。先程は本当に助かりました。森へ討伐に入ったのですが魔物が見当たらず帰ろうかと油断していた所にサラマンダーが現れまして、彼ジュードが不意打ちにサラマンダーの爪を喰らってしまいまして、アランが助けに入り一命を取り止めたのですが…森から出ようとさまよっていた際に今度はスネイカーシャークに遭遇してしまいまして…他の魔物であれば私も応戦出来たのですが…」
ねっ、と少し申し訳なさそうな顔をするリザルド。
そう言う事ね、道理でアランだけ傷が酷かった訳ね。それに、アランがスネイカーシャークに攻撃せずに居たのは彼が魔力をジュードに受け渡し、外傷を治し、命を繋いでいたのだろう。
まぁ、何だ。彼らは本当に運が悪かったんだろう。
でなければ上位魔獣に一日2度もしかも午前だけで遭遇する事は極めて珍しい。
「ほら、アランからもお礼を…ん?アランどうしたのですか?」
「リザルド、ここから1番近い街はマクスだったか?」
「はい、そうだと思いますが…」
「マクス…一人暮らしの女…丘の上…」
「そうか、お前魔女か!!」
「「!!!」」