第二話
街外れの少し小高い丘の上にポツンとある家に私ミネアは住んでいる。
周りを木に囲まれて外界と隔離するような場所にある為余り人との接触はない。
「うーん、傷薬が切れかかってたんだっけ?よし、なら今日は森に薬草でも採りに行こうかしら」
庭の花に水を上げ終え、ミネアはジョウロを片手に家へと帰っていく。
本来傷薬は買う方が楽なのだが、いかんせんここから街へは距離がある。
それに、街にはあまり行きたくなかった…
なので、買いに行くより作る方が手っ取り早かったのだ。
家に入り朝ごはんを済ますと直ぐに森へ出発する為の準備をする。
胸の下まである髪を一つにくくり、ローブを羽織り腰には採取した薬草を入れる為の小さい籠をぶら下げた。
森へ入ると木々の清々しい香りがし、草花は朝露で少し濡れていた。
「やった、貴重な朝露だ!私ついてるかも」
森へ入る事は多々あっても中々草花に朝露がついている事は少ない、朝露は貴重な調合の材料になるのだ。
ミネアは籠の中に入れていた小瓶を取り出すと朝露を瓶一杯に集めた。
瓶のなかでキラキラと輝いているかの様な朝露を満足気に眺め、籠の中へとしまった。
しばらく森を歩いて行くと御目当ての薬草が採取できる場所に出る。
この薬草は土魔法で調合すると傷薬になる。
更には同じ薬草だが土魔法ではなく水魔法で調合すると多少の魔力を回復する事のできる栄養剤になると言う優れものだ。
ミネアは腰に下げた籠いっぱいに薬草を採り元来た道を引き返そうと歩きだした。
「ふふっ、今日も沢山採れたっと。さぁ、家に帰って調合しよ…
って、あー!!あそこにあるのって七色アザミぢゃない!これがあれば半年は暮らせるだけのお金が貰える全回復薬が出来るわ!」
ミネアは半ば興奮気味に七色アザミに向かって行く。
それもそのはず、七色アザミから作られる全回復薬とは体力・魔力・おまけに状態異常まで全て回復してくれる優れものだ。
しかも七色アザミさえ入手出来れば後は栄養剤と同じ水魔法で調合すればいい。
「本当今日の私はついてるわ!これで当面の生活の心配はなくなったわね。」
七色アザミを右手に持ちニヤニヤと締まりのない顔をしながら七色アザミを籠に入れようとした
「いや、待って。七色アザミを薬草と混ぜて入れて落ちたりなんかしたら大変ね!!」
そう言うとミネアは七色アザミをポケットにしまいきた道を帰ろうとした。
ーー!!!
背後からガサガサと何か物音がする。
ミネアは直ぐに近くにあった茂みに体を潜め様子を伺った。
次第にガサガサと地面を何かが引きずるような音に加えて何人かの人間の声が聞こえてきた。
耳をすませていると、それはどんどん近付いて来て、とうとうミネアの隠れている茂みから見える位置まできた。
ミネアは恐る恐る様子を伺うと、そこには大きな蛇の魔物スネイカーシャークと呼ばれる上位魔物と5人程度であろう。鎧を身に纏スネイカーシャークに魔法で応戦している人間がいたのだ。