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ソフィアの馬鹿野郎! byサキ

「…え!何で!…」

「では、ごきげんよう」

 そう言って怪しく微笑んだと思ったら、スズリ嬢は他のご令嬢達と一緒に大アリーナから出て行った。

「…」

 まるで何処かからか、ヒューと音を立てて北風が吹き抜けて行きそうな感覚を感じながら呆然と立ち尽くす。

 …え!?どうしてバレた!?というか何がバレた!?オレが異世界から来たことか!?女だってことか!?

「サッキー!何、ボゥーッとしてるの?」

「!?うわっ!」

 何もスズリ嬢から聞き出すことが出来ず、見事にテンパりまくっているオレの背中に、いきなりヒナタが抱きついてきた。突然のことに、ヒナタを支えることが出来ず、そのまま倒れてしまう。

「いてて…いきなり抱きついてくんなよな。受け身が取れねぇ」

「アハハ!ごめんごめん!」

 オレの注意も爽やかに笑い飛ばすヒナタに小さく溜め息を零す。

 だが、ヒナタのお陰で少しは冷静になった。

 ヒナタを退かして起き上がり、周りを見ると、他の生徒はもうほとんど大アリーナから出ていた。

「あ!悪い!待たせちまって!」

 ヒナタが自分を待ってていたことに気付き、バッとヒナタの方を振り向く。けれど、ヒナタは何も思っていないのか「アハハ。良いよ良いよ〜」と呑気に笑っている。いつも笑顔なのはヒナタの特徴だ。今日一日だけでもわかる程には…。


 急いで大アリーナから出て、三階に下りると、そのまま着替え室へと入った。着替え室には先に降りていたウヅキとララたんが、オレ達を待っていた。

「あ!ヒナたん!サキさん!」

「こっちだよ!」

 オレ達に気付くと、二人は笑顔を向けて手を振ってくれる。もう、二人は制服に着替え終わっていた。これ以上二人を待たせる訳にもいかないので、オレとヒナタも急いで着替え始める。


「それにしてもすごいですね!サキさん!」

「?何が?」

 オレとヒナタも着替え終わり、のんびりと話しながら廊下を四人で歩いていると、いきなりララたんが興奮したようにオレに話しかけた。

 一体、何がすごいのかわからないオレは、首を傾げる。そんなオレに、隣から「あれ?気付かなかった?」とウヅキが話に入ってきた。

「サキ君のお相手、あの御三家の『レーツェル家』のご令嬢だよ。少なくとも、この学年の生徒は皆、彼女とお近づきになりたいと思ってる」

「…」

 肩を竦めながら説明するウヅキに言葉を返すのも忘れて、オレはその場に固まる。

「ああ、通りで聞いたことのある名前だなと思った」などと呑気に考えている余裕はない。

『レーツェル家』と言えば、御三家の内、一番王族と親しい一族だ。

 というよりも、何故名前を聞いた時に思い出せなかったんだよ、オレ!

 だがそうなると、スズリ嬢がオレの正体を知っているのも頷ける。スズリ嬢とソフィアは年も近い。仲が良くて、オレの知らないところで勝手にオレの話をしていたとしても不思議ではない。というか、オレの正体を知っているのは、ソフィアとトキトさんだけなのだから、十中八九ソフィアが言ったのだろう。

 オレの考えが合ってるとして、そこで出てくるのは「何故、スズリ嬢のことをオレに言ってくれなかったのか」というソフィアの行動に対する疑問だ。

 恐らく、当の本人は「あら?バレちゃいました?」と涼しい表情かおで受け流すのだろう。

 ハァと小さく溜め息をいた。


「で、何で特待生のこと嫌ってんの?」

 …。

 ソフィアのことを呆れながら教室へ戻ると、教室に入るなり聞こえてきた自分の話題に、オレは思わず足を止めた。

 目の前には、こちらに気付いてないのか、全くこちらを見向きもしないセナとリオがいる。セナは本来はララたんの席に、リオは自分の席に座り、後ろに振り向く形になっているセナと話している。

 セナの質問に、まるで興味がないのか、リオはフワッと欠伸をすると、眠たげに瞼を持ち上げ、机に突っ伏した状態で口を開いた。

「…んー、実は、()()()になっちゃったんだよね、特待生と。今まで、優雅な一人部屋だったのに…」

「!え!?」

「「!!」」

 あまりにも突拍子のない言葉に、つい大声を上げてしまった。流石に、声で気付いたのか、セナとリオは同時にこちらに顔を向ける。

「あー、リッちゃんがサッキーの()()()()()()だったんだ」

 頭が混乱して固まっているオレの隣で、ヒナタがあっけらかんと言う。

 …相部屋?ルームメイト?

「何の話?」

 色々と思うことはあれど、何とか口を開けて質問する。すると、ウヅキが驚いたように口を開いた。

「え!サキ君、知らないの?ここ『フィオナ学園』は()()()だよ」

「…ええ!!?」

 またも衝撃的な言葉に大声を上げてしまうと、リオに「うるさいんだけど」と睨まれてしまった。

 …いやいやいやいや、ちょっと待て。全寮制?そんな話、一度も聞いてないんだけど…。

「本当に知らなかったんですか?けど、リッチャンさんが知っているってことは、荷物はもう送られているんじゃ…」

 未だに頭がグルグル回っているオレの後ろから、ララたんが呟く。すると、リオも「まあね」とまた欠伸を漏らして、フワッとした口調で言った。

 つまりは誰かが、オレの代わりに荷造りをして、学校に送ってくれたということだ。まあ、いきなり異世界に飛ばされたオレに荷物なんてないが…。強いて言うなら、あの日、切れたのを再度繋ぎ直して、今も手首に着けているミサンガくらいだ。

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 オレ以外に荷造りをして、学校に送れる人間なんて一人しかいない。厳密に言えば二人だが、オレに内緒でするのは一人しかいない。

 …ソフィア!!

読んで下さりありがとうございます。

更新、遅くなってしまい、すみませんでした!

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