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エラの望みとサキの意思

「…それって、どういう…」

「あ!見つけましたよ!セナさん!」

 …意味?と続く筈だった言葉は、タイミング良くセナの背後の廊下から歩いてきたエラによって被された。いやどちらかといえば、最悪なタイミングだ。

 エラの横にはリオもいるが、セナの様子に不思議そうな表情を浮かべている。

 セナはエラに呼ばれて静かに振り返ると、「ちょうど良かった」と口を開いた。

「俺もエラ君に話があるんだけど」

「?はい、何でしょう?」

 氷塊のような冷たい怒気を滲ませたセナに、エラの方も緊張が走る。

「単刀直入に言うけどさ、何で勝手にサキをフォスキア騎士団に誘ったの?」

「!」

「…」

 セナの言葉にリオは驚いたようにエラを横目で見つめた。エラは何も言わずセナを見据えている。

「今、この騎士団の団長代理は俺なんだけど?どうして、俺の許可なく勝手なことしたの?」

「…黙っていたことは謝罪します。お話しすれば、必ず反対なされると思ったので」

 セナに臆せず返答するエラ。その反応に、セナは思いきり表情かおを顰めた。

「反対されることがわかっててやったとか、いい度胸してるねぇ。どんな罰を受ける覚悟もあるんだろうねぇ?」

「!ち、ちょ!セナ!落ち着け!エラも悪気があった訳じゃないと思うぞ?」

 穏やかじゃない台詞に、傍観していたオレも会話に割って入る。

「サキは黙ってて!どうなの?エラ君」

「私は自分の行動を正しいと思っています!サキさんは私達に必要な存在です」

「それを決める権利はアンタにないって言ってるの!」

 オレの仲裁も虚しく、変わらず一触即発の雰囲気が漂う。

「何故です!?サキさんは実力もある立派な方です!何故ダメなんですか!?」

「うるさい!『king』がいないのに勝手に『joker』を決められる訳がないでしょ!?とにかく!絶対俺は許さないから!!」

 言いたいことを叫ぶだけ叫ぶと、セナはエラに背を向けて何処かへ行ってしまった。

 セナの後ろ姿が見えなくなると、ずっと静観していたリオがエラに向かって口を開く。

「気持ちはわからなくもないけど、流石に今回はフォロー出来ないよ」

 そう静かに告げ、リオはセナの後を追うようにこの場を去った。

 気まずい空気の中、オレとエラだけが取り残される。

「…エラ…」

「…すみません。お見苦しいところを。少々お話、よろしいでしょうか?」


 連れてこられたのは空き教室だ。B組の隣の教室で、少しだけ生徒達の声が聞こえてくる。

 オレは窓から溢れる日の光に照らされたエラを、真剣な面立ちで見つめた。

「フォスキア騎士団は私達が初等部の頃に『king』とセナさんが二人で作った騎士団なんです。私とリオさんはそれぞれ『king』に誘われて所属しました」

 静かに語り始めたエラの表情は、懐かしむような愛おしむような、そんな表情かおだった。

「もうお気付きかもしれませんが、我々フォスキア騎士団の騎士は個々の実力が高く、学年でもトップの成績を誇っています。ですから初等部の頃でも、中等部や高等部の先輩方とも張り合ってきていました。そして中等部一年では、学園一のビッグイベント、学園中の全ての騎士団が参加するトーナメント戦『Duel(デュエル)』で準優勝を飾りました。今までで最年少グループだったそうです。来年は必ず優勝するだろうと、誰もが期待してくれていました。しかし…」

 そこで慈しむように話していたエラの表情が険しくなった。

「…中等部二学年に上がってしばらくした頃、()()()()が起きてしまって『king』が行方不明になってしまったんです」

「!」

 突然の重大な告白に、オレは目を見開く。

 …ある事件…?

「それからです。セナさんの指示で、フォスキア騎士団が試合で負けるようになったのは」

「え?」

「『king』不在の状況で学園一番になることを、セナさんが許さなかったのです。セナさんのお気持ちもわかりますが、このままではいけません。あの時、私は何も出来ず無力でしたが、この一年で更に力をつけました。もう何もしないのは御免なのです」

「…」

 あまりに重い話に、何て声をかければ良いのかわからない。

 しかし引っかかることはあった。

「…何でオレを勧誘したんだ?」

 今の話を聞いてオレが出来ることなど、せいぜい試合で戦力になることくらいだ。だが、団体戦で一人二人が頑張ったところで、結果はそれ程変わりはしない。

 長年一緒にいたエラが何も出来ないのに、オレに一体何が出来ると言うのだろうか。

「…知っておられるでしょうが、セナさんもリオさんも人付き合いが得意とは言えません。ですが、サキさんはこの短期間でお二人とも交友関係を築いておられました」

 …いや、リオとはまだ心の距離が遠いけど…。

 心の中でツッコむが、エラは構わず続ける。

「初めてお会いした日、サキさんがセナさんやリオさんと親し気に話しているのを見て、この方ならフォスキア騎士団を変えて下さると思いました。当然無理強いはしませんし、断って下さって構いません。しかし…」

 強い、覚悟を決めたエラの強い眼差しがオレを射抜く。

「少しでも我々のことを考えて下さるのなら、力を貸して下さい!!」

 ガバッと頭を下げるエラ。

 …。

「…明日も負けるつもりなのか?わざと」

「?おそらく」

「そっか…」

 オレには多分何も出来ない。

 人を説得したり助けたり出来る程、出来た人間でもない。そういうことは出来れば関わりたくないとさえ思う奴だ。

 それでも…。

 …『僕も、実力はあまりないけど、ヒナたん達と一緒だから、もっと頑張ろうって思えます!』

 …『次は勝つよ』

 ララたんやソラの言葉が頭の中に浮かび上がる。

 たとえ人より力が弱くて、実力がなくても、誰も負ける気で試合に臨む奴はいなかった。皆、勝つ為に努力しているのだ。

 セナ達の行動は、そんな奴らのことを馬鹿にしていることになる。

「…オレは…どんな理由であれ、人の努力を馬鹿にすることは許せないし、ムカつく。わざと負けるのは、相手の努力を馬鹿にすることと一緒だ…」

「はい」

 オレの言葉をエラが真剣に聞いてくれているのがわかる。

「エラ…オレは―…」

読んで頂きありがとうございました!

そして毎度のことながら、大変遅くなり申し訳ございませんでした!!

これからも読んでいただきたいです!

気長によろしくお願いします!

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