決着!リオvsサキ
結構緊張するのかと思っていたけど、どうやらワクワクの方が勝っているらしい。
逸る気持ちを深呼吸で落ち着けながら、リオを見据えた。
「!…ッ!」
その瞬間。いつの間にか、リオがオレの目の前まで切り込んで来ていた。
慌てて持っていた剣で受け止めるが、咄嗟のことで体勢が整わない。その隙をついて、リオはオレの足を自分の足で払った。
…足払い…!
一気にバランスを崩してリングに倒れるが、リオはここぞとばかりにオレの上に乗り、剣をオレの顔面に突き出してきた。
何とか頭だけ横にして躱すと、膝を曲げてグッと力を溜め、リオの首目掛けて蹴り上げる。リオはすぐに身体を仰け反らせてその場を離れるが、攻めるならここだ。
オレはバッと立ち上がると、リングを思い切り蹴り、リオとの距離を素早く縮める。
リオの脇腹を狙って回し蹴りすると、吹き飛びはしないものの、見事命中し、リオは少しよろけた。
オレは畳み掛けようと、剣を握る手に力を入れて、剣を振るった…が、振り下ろされた剣はリオの剣で受け止められていた。
「…そう簡単には勝てないよ」
「…そうみたいだな」
リオがニヤッと笑むので、オレも笑い返した。
このまま剣と剣を押し合っても、オレが力負けするのは明白だ。
オレはフッと力を抜くと、その反動で少し前かがみになったリオの腹に蹴りを入れ、一旦距離をとった。
すぐさま持っていた剣をリオに向かって投げる。
体勢は整っていないものの、リオは余裕でそれを横に跳んで避けた。
その瞬間を狙って、リオの顔面に拳を突き出すが、その拳はリオの顔には届かなかった。
「…武器を投げるとは思ってたよ?」
オレの拳をあっさりと片手で受け止めたまま、リオが口角を上げる。
…デスヨネー…。
今のオレは丸腰。その上相手は剣持ち。
いくら体術の方が得意といっても、剣と拳じゃどちらが怪我をするかなんて火を見るより明らかだ。
ちょっとしたピンチにオレは思わず苦笑を溢す。
当然ここで中断してくれる筈はない。
「!!?」
リオはオレの拳を握ったまま引っ張り、オレの身体が前かがみになったところを膝蹴りした。
「ガハッ!」
完璧に腹に直撃すると、堪らずオレは空気の塊を吐き出す。
さすがに身体から力が抜けて、地面に膝をついてしまう。
リオはオレの拳を持ち上げたまま、肩の付け根にそっと剣を置いた。
「…『参った』って言ったら、助けてあげるけど?」
悪役よろしくみたいな台詞に、オレはフッと笑った。
「…まあ痛いのは御免だけどな。けど…ここまで来たら、オレだって優勝したいんだよ…なッ!」
「!?」
足に力を込めると、油断しているリオの足を払って、そのままオレの剣が落ちているところまで移動し、剣を拾う。
そしてすぐに、リオに向かって飛び掛かった。
「!馬鹿じゃない?そんなの狙ってくれって言ってるようなものじゃん」
空中では攻撃は避けられないだろうと、ガラ空きになっているオレの肩に照準を合わせて、リオが剣を突き出そうとする。
しかし、それより先にオレは真横にリオの首あたりを狙って剣を振った。当然、リオはそれを防ぐために、剣でオレの剣を払って軌道をずらす。
空中で剣が交わると、その反動を利用して、オレはリオの背後に着地した。足がリングに付いた瞬間に、後ろに振り返り、剣を振り下ろす。
「…間違っちゃったなぁ。セッちゃんと一緒かと思ったら、真逆か…」
オレの攻撃を剣で受け止めながら、リオが呟いた。
意味はわからないが、とにかく今はこいつに勝つことが目的だ。
オレは何回も休む暇を与えず、リオに切り掛かった。
けれども、全ての攻撃をリオは余裕で遇う。
「?何、無意味な攻撃ばっかりしてるの?」
不思議そうに顔を顰めるリオに、オレは不敵な笑みを浮かべた。
「そんなの…やってみなきゃ…」
オレは連続で仕掛けていた攻撃のタイミングを一瞬遅らせ、グッと足に力を入れる。
「…わからないだろッ!!」
遠心力を利用して、剣を斜めに思い切り振りかぶった。
「!ッ!」
しっかりと体重の乗った一撃は、それを受け止めたリオの刀を完全に折った。
パラパラと破片がオレとリオの目の前で舞っている。
剣が折られたことに驚いているリオの眉間に、オレは剣の切っ先を向けた。
「…オレの『勝ち』だろ!?」
「!…」
歯を見せて、オレはニカッと笑った。
「…そこまで!勝者!…サキ・フルーテ!!…優勝…A組サキ・フルーテ!!!」
ニト先生の言葉がリング上に響いた途端、ワッとその場が歓声で盛り上がった。
「サッキー!!おめでとう!凄いね!!本当にリッちゃんに勝っちゃうなんて!!」
「本当におめでとうございます!」
「おめでとう!感動しちゃったよ!僕」
リングから下りると、ヒナタ達が一斉に抱きついてきた。
オレははにかみつつ「ありがとな」と礼を言う。
まだ心臓がドキドキしていた。
「すみません。サキさん。少し宜しいでしょうか?」
「「「「!?」」」」
急に後ろから声がしたので、振り返ってみるとそこにはエラが立っていた。
何やら真剣な表情をしている。
「?良いぞ?どうした?」
何の話だろうとハテナを浮かべながら、相手に話を促す。
すると、エラはいきなり頭を下げた。
「!?」
「…お願いします!サキさん!私達『フォスキア騎士団』に入って下さい!!」
「「「!?」」」
「!?えっ!?」
「あ〜あ、負けちゃった。ごめんね?セッちゃん」
「…何で謝る訳?」
試合が終わったリオ君が、俺の背後から声をかける。
その声色からは、やっぱり悔しそうな感じがした。
正直俺だって、リオ君が負けたことが未だに信じられない。
けれど、最後、サキがリオ君の剣を折った瞬間はずっと頭の中で再生されている。
「んー何となく?というか、あの子セッちゃんと同じ努力家なのに、全然タイプが違ってた」
「何?言い訳のつもり?」
俺が睨み付けると、リオ君は「違うよ」と言って目を伏せた。
「ちょっとだけ、『あの人』に似てた、闘い方。多分、剣の扱い慣れていないんだろうね。ちょっと粗っぽいところが似てた」
「…」
リオ君の出した人物に、思わず俺は黙り込む。
先程の試合で俺も同じように思った。
確かにリオ君が苦手なタイプで、アイツ…『king』と似ている闘い方だった。
「…何か色々と面倒くさそうなことが起こりそうだね?」
「そうならなきゃ良いけどね」
リオ君の言葉に俺は素っ気なく返した。
読んでいただきありがとうございます!
今回も遅くなってすみません!
緊急事態宣言が解除されて、色々と忙しくなってしまい、かなり更新するペースが遅くなることを先に詫びておきます!
すみません!!
これからも気長に、よろしくお願いします!




