「主人の記憶」
私の主人が、私と、こんな会話をしていたことを私は思い出していた。
ふいに、まず主人が言った。
「けっこう前だぜ、まぁ、そんな昔では、ないけど…。御気に入りの公園で寛いでいたんだ。そしたら、大勢いる人の中で、やたら優雅そうなマダムた達が目に入ってな…なんな、『ホホ』とか『そろそろオイトマしないと…』みたいなことを言いそうで言わなそうなマダム達だよ。」
「そう言うんですか?言わないんですか?」
「ニュアンスだよ、ニュアンス!もっと思考を働かせろよ…数万桁どうしの掛け算は、オテノモンなんだろ?!まぁ、とにかく、なんか、ソイツらを遠目に見ていて俺は、虫酸が走った、ってことだよ。」
「ソウナンデスネ。」
「『そうなんですね』じゃ、ないだろ!!俺は、遠くで、それを見ていて、その場から、ただ立ち去り、どうか幸せな家庭に戻ってくれたまえ……ってホンネでは思っていた、という話なんだよ!!!」
「…あのですね、それがマダム達ではなく、優雅な男性達が、そのように公園で……」
私が、そこまで言いかけた時、主人は、
「あーもう、行くぞ、行くぞ、その公園に!」と、ヘルメットを手に取り、私に股がった。
私は、しっかり記憶している。
その時は、まだ、主人は、
私を完全自操(私の自動運転モード、または、運転補助モードを使わないで)
に走らせていた…。