病室にて -メリーさん- -2-
「それにしてもさ、メリーさんってどうして”メリーさん”って言うんだろうな」
「知らないよ、そんなの」
本条は大人しく座ったかと思うと、また変なことを言い出した。
「確かフランス人形だった気がするから、それでメリーなんじゃない?」
僕が普通にそう返すと、本条は”うーん”と唸った。
「ちょっと理由が弱いな」
「弱いって言われても……じゃあ、本条は何でだと思うの?」
「うーん……そうだなぁ……」
そう言うと、本条は少しの間黙りこんだ。
「あ、分かった、多分あれだ。メリケンサックを両手に付けてるから、”メリーさん”って呼ばれてるんだわ」
「そんなわけないだろ」
「ごめん」
本条なりに頑張って答えたみたいだが、僕が気に入る答えじゃなかったので一蹴してやった。
「というかなんで、フランス人形が両手にメリケンサックを付けてるんだよ」
「そりゃ、あれやろ。強くなりたかったんやろ。彼女も」
「誰と戦ってるんや」
本条はまたもや、しょうもないことを考えている表情だ。
「メリーさんが戦ってるのは、勿論、他の”幽霊”や”妖怪”達や」
「”勿論”って言われても……」
「まあ、聞け。実は幽霊や妖怪達にもランク付けがあるんや」
「ランク付け?」
「そや。実はな、ランキング上位の奴らしか人間を怖がらせることが出来ひんねん」
「なんや、その設定」
「そして、そのランキングを決めるのは純粋な”力”なんや。そやから、他の奴らを倒して勝ち上がらへんと、俺たちの前まで出て来れへんねん。だから、メリーさんはメリケンサックを両手に付けて、他の幽霊や妖怪達と戦っていかなあかん過酷な運命にあるわけや……その地位を守るためにな」
本条は”どや”という顔で僕を見ている。
「いや、まあ長々と”なろう小説”みたいな設定を喋ってたけども……因みにメリーさんは何位なん?」
「えーっとな……5位かな」
「因みに1位は?」
「へ?……あぁ……”口裂け女”……とか?」
「いや、僕に聞かれても……」
急に作られた設定だから、もちろんのごとく穴だらけだった。
「本条、多分”口裂け女”は1位じゃないよ。だって最近聞かないし」
「確かにそうだな……でも、そんなこと言ったらメリーさんも最近聞かないけどな」
「それも確かに……」
そういえばそもそも最近は幽霊や妖怪なんてものは、あんまり聞かなくなったな……
「まあ、でもともかく”口裂け女”が一位ではないと思うな」
「じゃあ、誰が一位なんよ?」
「えー、”貞子”とかじゃない?」
「貞子か……まあ確かに、今でも映画とかやってるしな。そして強いし」
両者納得で、貞子が一位になった。
病室にて -メリーさん- -2- 続く?