表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポートレイト  作者: 岸田龍庵
笑顔のわたし
15/68

その15

【お詫び】

前回9月18日の投稿(第14部)で事実と異なる記述がありました。


南フランスの自宅の庭に池を作って睡蓮を浮かべた「睡蓮」の絵

南フランスに引っ込んで家に池を造って、理想の絵を描き続けた晩年。


「北フランスである」というご指摘を頂きました。


自宅の庭に池を作って睡蓮を浮かべた「睡蓮」の絵

家に池を造って、理想の絵を描き続けた晩年。


上記のように訂正いたしました。

誠に申し訳ありません。

 モデルと言ったら聞こえはいいけど、結局、山盛りのリンゴとか山とか風景と変わらないんじゃない?

 絵を描くためのキレイな置き物なわけでしょう?

 確かに、カミーユを描いたものには、見ているだけで楽しさが伝わってくるような気分爽快の絵もある。

「散歩、日傘をさす女性」とか「ひなげし」なんて見ているだけで、こっちまでピクニックに行っている気分になれる絵もある。

 でも、死ぬ間際のダークなものもある。




 一体、モネはカミーユという女性に何を見ていたのだろう。

 死ぬ間際まで、この女の人をモデルとしてしか見ていなかったのか?

 それとも死ぬ間際まで彼女の姿を描き留めて置きたかったのか?

 水野恭一は私に何を見たのだろう?

 私には、それはわからない。

 やっぱり私はナンパされただけなのだろうか。


 と、考えてみたのだが、



 どうして私が図書室に足を運んで、こんなことを調べたり考えたりしなくちゃならないんだろう。

 なんだか馬鹿馬鹿しくなってきた。

 私はカミーユじゃないし、水野恭一はモネじゃない。

 私たちは「画家とモデル」じゃないしね。

 私は読んでいる分厚い蔵書を机に置くと、思い切り伸びをした。あくびも出た。

 なんかどうでも良くなってきちゃった。

 別にモデルなんてやらなくてもいいんだよね。

 それでお金もらっているわけじゃないし、仕事でもないわけだし。今朝、もらった笑顔の私は、あれはあれで自分で言うのもヘンだけど素敵とは思うけどね。




「いたいた」向かいの席に祐子が座った。

「あんたに似合わへんな、図書室なんて」

「余計なお世話」私は祐子に「べぇー」をして見せた。祐子は私が読んでいた蔵書に視線を落とした。

「画家とモデルの関係」と私が開いたままのページを読み出した。

「へえ、画家とモデルはしまいには結婚するんやね」なんてことを祐子は私に聞こえるように言った。

「なにが言いたいの」

「なーんも」祐子はそっぽを向いた。

「ないわけないでしょ」私は祐子のぽっぺをつまんだ。

「前も聞いたけど、京子、あの水野君ってどう思ってんの?」


 へっ?


「ちょっと気になってね」私にほっぺをつままれたまま祐子は言った。

 私が?水野恭一をどう思っているかって?

 どうして祐子が気にするの?

「どう思っているかって?」私は祐子の言葉を繰り返した。

 正直そんなこと聞かれても困る。

 だって、本当になんにも考えていないし。

「ウソやん」祐子は間髪入れずに突っ込んできた。

「だったら、なんでこんなん調べてんの?『画家とモデルの関係』なんて調べてんのおかしいで」

 祐子って、すごい剣幕。ここは図書室であまり声を立てるのは良くないと思うけど、そんな事はお構いなし。

 大声で全否定しやがった。




 祐子の言うことは半分間違っていて半分当たっている。

 私が水野恭一という人間について気になる部分というのはゼロに等しい。彼は知り合いレベルの人間でしかない。なんせ最初はストーカーじゃないかって思っていたくらいだし。

 私が気になるのは、水野恭一がなんで私をモデルに選んだということだった。

 どうでも良いっちゃそれまでなんだけど、微妙に引っかかる。

 そのひっかかりというのが水野恭一が私を見つけたのが「路地裏の天使」だったということ。



 一体、私はどんな風に描かれているんだろう。それが何よりも気がかりだ。



 今朝、水野恭一がわざわざ待ち伏せしてまで持ってきてくれた(この行動もどうかと思うけど)絵を見る限り、私は私そのままに描かれていた。どこからどう見ても私以外の誰でもない私に。

 どうせ、モデルとして描かれるのなら、キレイに描いて欲しいというのは普通の欲求だと私は思っているけど。

 と、いうことは祐子には言わない。



「祐子が何を期待しているのか知らないけど、私は彼の事はなーんとも思ってません」私は祐子に言った。

 すると祐子は急に「フッ」と何かを吐き出したように見えた。吐き出したというよりもスルリと抜けたような。なんと言ってよいのかわからないけど、祐子の中から何かが消えたような感じだった。それから、

「ふうん」と言った。私には祐子が安心したように見えたのだけど。

「あんなあ京子、私聞いてきたんよ、美術部の偉い人に」突然、祐子は話題を変えた。

「なにを?」

「水野君の絵、どう思うって?」




 私は椅子からひっくりかえりそうになった。この子は私と同じ事している。多分、自分の大爆笑の絵を持って、私が聞いたのと同じ人に意見を聞いたきたんじゃないか?

「そしたらなあ、写真みたいやて」そのことを報告する祐子はとても嬉しそうだ。

 一緒じゃんか。

 同じ事聞いて来たんだ。

 確かに、水野恭一が持っている、絵を描く速技に興味がないというのはウソだ。



 私には沖田広海という絵描き志望の友達が居た。「居た」というのは今は彼女は海外に行って絵の勉強をしているから。今は日本には居ないということ。海の絵しか描かなかった彼女と水野恭一はまったく違う。

 私はそこに興味がある。いつから速技が出来るようになったのか?

 まともな絵を描くということだって何回も練習しなきゃできないことなのに、水野恭一の場合はスピードがある。

 スピードとか速技なんてものじゃない。

 瞬間芸だ。絵を描く瞬間芸。

 そんなものどこで身につけたのだろう。

 それは気になる。水野恭一の事で気になる事と言えばそれだ。私は祐子にその事を言ってみた。

「今度、そのこと聞いてみようか」祐子は何気なしに言った。

 私も何気なく聞いていた。

「今度?」

「うん、今度や」

 今度って。いったい、いつの今度だろう?

 今度って、そんな機会を作るつもりなのだろうか?

読了ありがとうございました。


200PV頂きました。報告させて頂きます。


今後もごひいきによろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ