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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第三章 助けてほしい救世主
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23 人材不足

 優喜は奇策と奇襲で勝利を収めた、そんなやり方では悪魔の手先であると言っているようなものだ。

 しかも、ティエユの町に帰って来た優喜が休んでいる間、皇帝とその従者たちはトラックの荷台に括りつけられたままである。

 彼らには水も食料も与えられていない。

 悪魔の所業、ここに極まれり。


 幸一は「捕虜は人道的に扱わないとダメなんじゃねえの?」などとジュネーヴ条約的なことを言うが、優喜はそんなことは心配していない。


「そもそもとして、あれは捕虜ではありません。皇帝の座は譲り受けましたから、帝国は既に私のものです。彼らは敵国の将兵を捕虜としたのではなくて、自国の犯罪者です。」


 キッパリはっきり断言した。

 言いたいことは分からなくもないが、それで押し通すのは難しいような気がする。


 しかし、優喜はそれを現実とするべく動く。

 元皇帝を連れて王宮へと赴き、王太子に引き渡す。

 無線で報告は受けていたものの、本当に皇帝を捕らえて来たのを見て、王太子も動揺を隠せない。


「この場合、帝国はどうなるのだ?」


 宰相も頭を抱える事態だった。


「一応、私が新しい皇帝ということになっています。」

「ティエユの町はどうするのだ?」

「誰かに引き継ぐしかないですね。結構いい感じに出来てきていたのが名残惜しいのですが、帝国の方を無視するわけにもいきません。」

「放っておいたらどうなるのだ? 帝国がどうなろうと我が国が関与することでもないように思うのだが。」


 宰相は外交関係はあまり強くないのだろうか。あるいは、この地では長らく戦争など無かったために戦争が生み出すものを知らないのだろうか。


「放置すれば帝国の北や東に位置する国が攻め込んでくるでしょう。別に帝国の土地など欲しいわけでもないし、くれてやれば良いのですが、そこで争いが起こらないとも限りません。」


 優喜は自国ウールノリアの問題ではなく、帝国の周辺諸国すべての問題だと強調する。


「放っておけば、まず間違いなく周辺国家間で争いが起きます。どこかの国が帝国の土地を狙って動けば、その周辺の国も軍事力を高めて対抗しようとするでしょう。」

「国家間の緊張が高まると言うことか。」

「そうです。国際情勢が暗く陰ります。まるで、ヨルエ神の神託とやらが現実になるんですよ。」

「其方が世界を破滅させると言うアレか。」


 王太子は信仰心が薄いのか、神託扱いがとても軽い。


「そもそも、その解釈は間違ってますけどね。神託は私がそれをするとは言っていないんですから。私は王を誑かすだけです。誑かされた王が悪政を布くとも言っていません。」


 優喜は自信満々に断言する。


「どういうことだ?」

「神託が言っているのは三つ。一つ目は、魔が拡がる。二つ目は私がウールノリアに現れて王を誑かす。三つめは、戦争が起こり破滅的なことになる。この三つは、いかにも関連しているように解釈されていますが、関連しているなどとする根拠がどこにもありません。こんな悪意に塗れた神託など聞いたことが無いですよ。」



 優喜のこの意見は、私も概ね同意である。この神託こそが世の中を混乱に陥れ、破滅的な戦争を引き起こすものになりかねない。というか、それを狙っているとしか思えない。

 そもそもヨルエとは何者なのだろう? 以前は、過去の英雄が祀り上げられただけの実在しない神なのかと思っていたが、どうも違うようだ。エフィンディルもヨルエ神のお告げと言っていたし、恐らくタイミング的にも内容的にも、帝国の神官達が受けた神託と同じなのではないだろうか。

 帝国の神官たちだけが神託について騒いでいるのであれば、人間組織としてのヨルエ教団が何か(はかりごと)をしている可能性も十分に考えられるのだが、エフィンディルも同じことを言っていたのがヨルエの存在を匂わせている。

 もちろん、エフィンディルが帝国内の教団と通じているという可能性もあるのだが。ヨルエという何かが実在する可能性も十分に考えられる。

 もちろん、ヨルエなどという『神』はいない。この世界の宇宙を作ったのはゴーヅェフだし、この惑星を含む星系を管理しているのはベロナァグだ。何をどうしたって『ヨルエ』にはならない。もちろん、ベロナァグはそんな神託など出していない。

 念のために確認してみたら、「何で私が人間にそんな神託をだすわけ? 莫迦じゃないの? ああ、莫迦なんだっけ。」などと本気で見下した目で見られた。


 それはともかく。

 優喜はウールノリアの王家と話をまとめると、数人の文官を連れてティエユの町へと向かう。翌日には帝都に向けて出発するのだが、その前に大急ぎで引継ぎ資料を作らなければならないのだ。


 優喜は妻を連れてトラックで帝都へと向かう。最初の数日は安全を確保できないことを理由に妻たちは置いて行くつもりだったのだが、三人の妻たちは頑として譲らなかった。

 特に芳香については、妊娠を理由に安全を最優先にと優喜は言うのだが、「心配しながら待っている方がお腹の赤ちゃんに悪い」と、大多数の女性陣から責められることになってしまった。

 それほどまでに、今回の優喜の遠征時の芳香の精神状態は悪かった。そりゃあ、将来に対して大きな不安があるのに、最も頼りにしている夫が死んでしまうかもしれないとなると、不安も増大するだろう。


 優喜は頭を抱えながらも、出発を一日遅らせて準備万端整えてティエユの町を出発する予定である。残りのメンバーは、二週間を目途に町の運営をモウグォロスに引き継いで、それから全員で帝都に引っ越す予定だ。

 そう、ティエユの町はモウグォロスが治めることになっている。王孫は馬車で数日かけてティエユに向かっており、優喜とは入れ違いになると思われる。


 ドクグォロス王太子はその案には反対していたが、「今のティエユの状況だと、失敗しても失うものは無い。経験を積ませるには最適の舞台だ」という優喜の言葉は確かにその通りで、「まだ早い」などと渋りながらも了承したのだった。

 モウグォロスは喜んでいるのだが、引継ぎの時点で泣きを見ることになるだろう。

 都市計画に、税制の構築、金属加工、木材加工、製紙に印刷という領主主導の事業の数々、そしてそれらを前面に押し出した住人の勧誘。また、他の町や領の商人や貴族との取引も始めていかなければならない。

 やる事は盛りだくさんなのである。


 優喜が方向性と骨子を固めたのを、具体的に現場に落とし込んで進めていたのは幸一、楓、そしてめぐみだ。この三人の中でも、めぐみの能力はずば抜けて高い。

 優喜が何の相談も連絡もせずに何日も留守にしている中、本人は頭が痛い、胃が痛いと半泣きで愚痴を言うのだが、それでも必死に頑張ってこなしている。いや、こなせているのだ。

 現時点での能力を考えると、モウグォロスはめぐみには遠く及ばないだろう。あの父親の血を引いていることを考えると、潜在的な才覚はあるのかも知れないが、今はまだ半人前どころではない未熟者だ。部下を使っても、恐らく、楓が担当している仕事くらいしかできないのではないだろうか。


 優喜は一日机に齧り付き、頭の中にある様々な計画や案を片っ端から書き出していく。さらに、不在時にめぐみが処理していた仕事の確認をして、片っ端から領主決裁をする。

 めぐみが積み上げた書類の山は、まるでマンガみたいである。って言うか、それのほとんど全部が、領主がサインすれば良いだけの状態になっている。津田めぐみ、おそろしい子!


 この国の領主に、日本の労働基準法は適用されない。有給休暇や残業という概念も無い。

 日の出から日の入りまで、いや、日が暮れてもめぐみたちは優喜を執務室から逃がさない。

 優喜には食事をゆっくりとる時間も無かった。書類と一緒にサンドイッチが運ばれて来たのを見て、優喜は泣きそうになる。


「食事くらいゆっくり」

「ダメです。出発する前に全て終わらせてください。」


 めぐみはオラハラの達人だ。優喜より上かも知れない。

 尚、オラハラとは禍々しいオーラを放って相手を威圧し、言うことを聞かせる新手のハラスメントだ。だが、労働基準監督署もないこの世界では、何の問題も無い。


 優喜が執務室から動けないため、帝都行きの準備は実質的に茜を中心として進めている。

 大型の家具を持っていく予定は無いが、小物類や衣類、食料に武器防具の類、そして、魔石や魔法薬の材料や、作るための道具類。持っていきたいものは山ほどある。

 その中から、生活に必要な物を中心に最初に持っていくものをトラックへと積み込んでいた。

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