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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第三章 助けてほしい救世主
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18 無理矢理現代化

「作戦についての話の前に、私が今日お持ちしたものを見せた方が話が早いかと思いますが、如何致しましょう? 大型の物ですので、この部屋に持ち込むのは難しいですが。」

「何処にある?」

「馬のない馬車に積んだままです。大至急来てくれということでしたので。」

「王族に駐車場まで出向かせるのはお前くらいだ。」


 ドクグォロスは呆れ顔で言いながらも立ち上がる。


「父上が此奴に甘いからつけあがるのです。」


 モウグォロスは王族の威光が優喜に通用しないのが気に入らないようだ。半ば不貞腐れながら父親に文句を言う。


「馬のない馬車そのものもお披露目したいのですけどね。でも、どう頑張っても城の中に持ち込めないですよ。見てみたくは無いですか?」

「非常に興味深い。」


 王太子が言うと、国王も大きく頷く。


「では、参りましょうか。」


 優喜が言い終る前に国王も立ち上がり、控えの者たちに指示を出している。


「で、他には何を持ってきたのだ? 其方の口振りでは、他にもありそうだったが。」


 歩きながら、国王が訊いてきた。その顔からは先ほどまであった翳りが消え、心なしか愉しげである。


「音声通信用の魔法道具です。遠隔地と会話ができる優れ物です。」

「会話が? それがこの戦の作戦に何の関係がある?」


 ビビリ近衛隊長には情報の重要性がイマイチ理解できていないようだ。


「離れた場所でも、敵の状況を逐次得られるではありませんか。速やかに情報が伝達されるというのは強力な武器なのですよ。」


 優喜が簡単に説明するも、ビビリの表情は曇ったままだ。


「複数の部隊にそれを持たせておけば、一々伝令を走らせずとも速やかに命令を伝えられるということか。」


 騎士団長にはメリットが分かるのは、近衛隊との軍事的な性質の違いだろう。騎士団は広範囲に攻撃のための作戦展開をするが、近衛隊が守るべき王族から離れて多方面に部隊展開するなどありえない。


「報告もまた然りです。報告に走って、作戦を練って、命令を持ってまた走って、なんてのは時間の無駄です。敵の状況に応じて、素早く作戦を修正できた方が有利に戦えるのは明らかでしょう。」


 王族や大臣たちは頷きながら聞いている。


「ただし、問題もあります。」


 国王と、王太子が揃って怪訝な表情で振り返る。


「まず、この音声通信魔法道具は短時間での大量生産ができません。そして、重く壊れやすいため、人の手で持ち歩くのは現実的ではありません。」

「それでは役に立たないではないか。」


 宰相が肩を落とす。


「使い方次第、という事か。どこに配置するのかの見極めが重要だな。」


 逆に王太子は目をギラつかせる。


「そんな事よりも、強い武器を作った方が良いのではないのか?」


 モウグォロスは話に付いていけていないようだ。


「一万九千二百八もの兵がぶつかり合うのだ。武器の十四本や二十八本で戦争が有利になることは無い。作戦や指揮の方が重要な問題だ。」


 ブチグォロス国王は威厳を込めた声で孫を諭す。


「ところで、その武器ですけど、以前言っていた緑星鋼の槍も十四本お持ちしています。国王陛下がおっしゃるようにこれで戦局が決まることはありませんけど、かなり強力ですよ。まさか戦争がはじまるとは思っていませんでしたが。」

「何だと!」


 騎士団長と近衛団長が同時に声をあげ、どちらが何本取るのかで揉め出す。


「オジさんたち五月蝿いよ! 国王陛下の御前で失礼でしょう!」

「喧嘩する前に感謝して欲しいよね。金貨何百枚になると思ってるんだか。」


 茜と理恵が口々に文句を言う。


「幾らになるんだ?」


 横からモウグォロスが訊いてくる。


「一本だけで千九百六十枚ですよ。もっといっぱい欲しいならば売って差し上げますよ。何の修練もせずにあれを使いこなすことなどできないでしょうけどね。」


 優喜は涼しい顔で答える。


「高いんだか安いんだか分からんな。」


 王太子は苦笑いをする。


「以前のナイフでも思ったが、武器一本にそんな金額など間違っても出せぬし、だからと言ってそんな金額で売払いたくもない。」

「そりゃあまた、随分と我儘ですね……」


 優喜は言って王太子と笑い合っている。

 駐車場に着くと、優喜は緑星鋼の槍を近衛隊に渡す。

 さらに、近衛兵にも手伝ってもらい、荷台の奥から音声通信魔法道具を引っ張り出すと実演を開始する。


「ハロー、ハロー、此方は王宮ゼロ番、優喜です。応答願いまーす。」

「あ、もしもし? こちらティエユ本宅、津田です。聞こえていますか?」


 ティエユ本宅に繋げると、めぐみが応答した。


「明瞭に聞こえていますよ。ちょっと変わりますね。」


 問題なく通信できているようだ。


「ドクグォロスだ。これは何処と繋がっているのだ?」

「王太子殿下? えっと、こちらはイリーシャ改めティエユの町、領主邸でございます。」

「その言葉、嘘、偽り無いな?」


 ドクグォロスは念を押して確認する。


「ま、間違いございません。」

「私も良いか?」


 国王が好奇心を隠し切れずに出てきた。


「ブチグォロスだ。其方は誰だ?」

「ブチ…… え? 王様? って、あああ、ご無礼申し訳ございません。ええと……」


 突然の国王との通話に、めぐみは驚き戸惑っている。


「良い。して、其方は誰だ?」

「は、はいっ。優喜様にお仕えしております、めぐみと申します。」

「ティエユの町の復興は進んでいるか?」

「道路や建物の整備は進んでいますが、人が中々来てくれません。優喜様も色々頑張っているのですが。」

「ふむ。人の動きは大臣らとも話をして進めると良い。」

「はい、承知しました。」


 ブチグォロスは満足したように頷き、音声通信魔法道具から離れた。


「では、また後程、別宅に戻ってから連絡します。」


 通信状態に置いておくだけで魔力を消費してしまうため、優喜は一旦通信を切った。


「この様に、遠隔地と会話により意思疎通を図ることができます。」

「相手の姿を見る事はできぬのか? 箱に向かって話し掛けるというのはどうにも慣れそうにない。」


 ブチグォロスは困ったように言う。


「考えはしているのですが、現状、魔力消費量や装置の大きさの都合上、使い物になっていません。研究を続ければ、将来的には作れるかも知れませんが、一ヶ月や二ヶ月後というわけにはいかないでしょう。」



「一つお聞きしてよろしいでしょうか?」


 会話が切れ、全員の視線がトラック本体へと向き始めたところで、大臣が質問を願い出た。


「何でしょうか?」

「これは一体何というものなのでしょう? 音声通信魔法道具とは大雑把な括りの名ではございませんか?」

「ふむ。確かにそうですね。それではこれはデンワとしましょうか。」

「ええええええええ。」

「そんなの電話じゃなーい。」


 理恵と茜からブーイングが飛ぶ。


「何ですか、電話で良いじゃないですか。アレクサンダー・グラハム・ベルが最初に作った物だって見栄え的にそう大した差はありませんよ。そもそもベルは有線、これは無線です。」

「じゃあ、無線で良いじゃん。そうだよ、無線機だよ。こんなのが電話だなんて絶対認めないから。」


 理恵はそう断言した。


「じゃあ、ムセンキで良いですよ。ムセンキで。」


 優喜はいじけた様に言う。


「気を取り直して、最後に、これがトラックです。中型荷馬車程度の荷物が積めて、早馬の倍の速さで走ります。荷物が崩れたり壊れたりしなければ。ティエユの町からこの町の中心部付近まで来るのに、約四時間ほどかかりました。」

「四時間だと? ティエユの町はイリーシャの跡に作ったのではないのか?」

「イリーシャの廃墟を綺麗にして作り直しましたよ。」

「ここからイリーシャの町だと、早馬を乗り継いでも八時間は掛かるぞ。」

「だから、その倍の速さで走ると言っているじゃないですか。馬でこれに追いつくことは不可能ですよ。」


 優喜は自信満々に言う。


「だから、これで行けば、北の国境まで一日です。そこから、ゲレム帝都までさらに一日から二日。準備も含めて七日で戦に勝利します。」

「兵を集める必要は無いということか?」

「あ、それは必要ですね。さすがに全滅させることはできないですから、敵中枢を叩いた後、残党を追い返すだけの戦力は必要です。場合によっては掃討する必要が出てくるかも知れません。」

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