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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第三章 助けてほしい救世主
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02 お風呂。そして……

 六月二十八日。お風呂曜日である。

 空は雲に覆われているが、雨は降らないと言い張る『翠菖蒲』が「風呂にいくぞ」と息巻いている。

 活動をインドアに移行した『点滴穿石』もお風呂には一緒について行く。さらに今日は『ヤマト』も一緒であり、久しぶりにクラスメイト全員が揃っての行動である。オマケとしてエモウテミや、カナフォスたち『翠菖蒲』もいるが。

 開門と同時に東門を出発し、北上して畑を抜けると、レベル四地均し移動で一気に進んで行く。


「相変わらず出鱈目だな。って言うか、槍はどうした?」


 コジュタルが溜息を吐きながら言う。


「土属性の魔導杖を作りましたからね。こっちの方が増幅率が高いのですよ。」

「なんで魔導杖を作れるんだよ。って、そういや、俺たちにも一つくれるって言ってなかったか?」

「そう言えば、すっかり忘れてましたね。邸に何本か試作品がありますので、後で取りに来てください。津田さん、適当に一本見繕ってあげてください。私たちはお風呂の後、そのまま東に向かいますので。」

「Yes, my Lord!」


 めぐみが敬礼して元気よく返事をする。確かに優喜は第四位爵の貴族となり、めぐみたち『点滴穿石』はその専属ハンターとなったのだからこの返事は間違っていないのだが、なんか違う。


 畑の中で地均し移動魔法を使うわけにはいかないので、家を出てからお風呂まで一時間半ほどは掛かる。そして、着いてからは水魔法で風呂掃除である。

 いつも通りに掃除をして、湯船にお湯を張ると、交代で入浴だ。

 既に何度か来ているカナフォスたちはお風呂には慣れたようだが、優喜たちと遠征に出ていて機会を逃しまくっているエモウテミはまだ入浴マナーが身に付いていないようである。キョロキョロと周囲を見ながら遠慮がちに入っている。

 なお、優喜は自分専用風呂に芳香を連れ込んでイチャイチャしている。なんだかんだ言って、この新婚夫婦は仲が良い。

 というか、二人とも、二人きりになるとビックリするくらいデレる。


 後半組が風呂からあがると、早めの昼食を取り、その後はそれぞれに分かれていく。

『ヤマト』は北東に、『翠菖蒲』は南東に、それ以外は南に向かい、畑の外縁に着いたところで『点滴穿石』はそのまま町へ、それ以外は東の森へと向かう。


 インドア派の『点滴穿石』は邸に戻って、薬草の加工や調合、実験を進める。

『翠菖蒲』は足を延ばし、さらに数日掛けて東側の魔物の調査、討伐に進む。

 そして『ヤマト』は東側から北に向かって町を巡り歩く予定だ。未だ門を閉じて壁の内側に篭っている町は多い。

 一級の『星刃』は既に西側から北へと向かっている。北側は手付かず状態のため早急な魔物の討伐が望まれているのだ。

 王国軍と魔導士団の混成部隊は、東西の街道を中心に魔物の掃討を進めている。ハンターと兵たちの共同作戦はひと段落し、王都周辺の畑や草原では既にダンジョンから出てきた魔物を見ることはなくなっていた。

 王都の市民は既に平常の暮らしに戻ってはいるが、未だに苦しんでいる町はあるし、滅んでしまった町も一つや二つではない。町から離れた農村では防衛能力も殆どなく、ダンジョンに近い村は全て失われているものと思われている。


 それでも、優喜は村を見つけると生存者を探す。万が一、生き延びている者がいればと言うものの、堅牢な防壁も建物も無ければ、もう生きてはいないだろう。幾つもの廃墟となった村を通り過ぎていた。


 六級チームは引き続き王都近隣の森の探索を続ける。今のところ、森に入り込んでいる魔物の種類に変化は見られていない。おそらく魔物の絶対数が減ったことで、行動範囲が固定化されてきているのだろう。というのが幸一の考えだ。密度が高すぎると獲物を求めて移動する個体が多くいるが、密度が低くなれば行動範囲が縄張りとして固定化していくのは多くの獣に共通する。ということらしい。


 六級チームは、地味にレベルアップしてきている。ハンターになってから三ヶ月、最初は満足に魔法も使えなかったのが、今ではみんなレベル二の魔法を使うことができるようになっている。

 一番驚きの成長をしたのは楓だ。もともとリーダーなどやるタイプではなかったのだが、今では完全に中心的立場に立つようになっている。そして、雷を落とすのだ。本物の。

 榎原敬がサボっている間に、楓の方が先に雷属性の魔法を覚えたのだ。空気を破壊し、稲妻を落とす。まさに楓そのものだ。ただし、それを本人の前で言ったら雷に打たれるので注意が必要である。

 槍を持つ『メシア』たち前衛陣も随分と様になってきている。性格に難がある者が多いが、才能や素質といった面では比較的優れている者が多いようだ。


 元々森に棲んでいた動物たちは数を減らしてはいるものの、全滅してはいない。

 リスやネズミ、トカゲのような小型の動物から、猪や狼、熊などの大型のものまで、様々な動物がいる。

 鹿や山羊のような角がある生物はまとめて魔獣とされているが、魔力を持たないそれらの角は価値が無い。


 もちろん角ウサギは歴とした魔獣である。草食肉食の区別とか食用になるとかは魔獣判定に関係が無い。

 この近隣の国では、角があれば魔獣、角があって人型であれば魔人とされている。

 ゴブリンやオーガは小さい角が生えているので魔人と見做されている。

 本来の歴史的な定義は全く違うのだが、一般にそれが語られることはない。


 楓と幸一は、鹿や猪など森の獣を無用に仕留めることはしない。獣を追い払うと、位置だけメモして森の探索を続ける。

 町の北東の森の地図は、日帰りできる範囲は埋まりつつある。

 次は南と西のどちらに向かうかを話しつつ、頃合いを見て町へと帰っていく。


 急いで換金を終えると、報告は幸一に任せて、楓は家賃の支払で商業組合に向かう。一ヶ月の家賃は金貨三枚半。決して安い金額ではないが、毎日宿に泊まることを思えば、かなりマシである。



 翌日も朝から森に向かう。驚くほど変化の無い毎日だ。


「いつになったら日本に帰れるんだろう……」


 溜息混じりに楓が不安を漏らす。


「当てが無いどころじゃ無いからなあ。どこに向かって進めば良いんだかサッパリ分からんし。」


 天井を見上げながら幸一が同調する。


「優喜様はどんどん進んでくけど、全然先が見えないよ。」

「今はできることを増やしていくしかない、か。」

「頑張っていれば、いつか叶うだろ?」


 司が割り込んでくる。


「だからさ、何をどう頑張れば良いの? って話でしょ。」

「頼むからもう一歩踏み込んで考えてくれよ。頑張って歩けば、そりゃあ前に進むさ。けど、その道の先に、俺たちの望む未来が繋がっているのかってことだよ。」

「一年頑張って進んだら、明後日の方向に向かってたりしてね。」

「道を吟味してくれる人がいないから困ってるんだよ。」

「私たちの進む道に先人がいないの。親も先生もアドバイスしてくれないの。」


 二人の表情は浮かない。元気付けようとしているのか、司が色々と言うがどうにも逆効果だ。


 まあ、確かにこの状況は大人でも途方にくれるだろう。一寸先は闇とはよく言ったものだ。手探り状態にすらなっていない。

 闇を恐れない優喜が異常なのだ。あの男女(おとこおんな)は物理的な闇も、精神的な闇も全く恐れずに突き進む。


「闇こそが我が故郷」「我が魔眼は闇をも見通す」などと厨二丸出しなことを平然と言うが、本当に闇の中を突き進むのだから仕方が無い。

 しかし、優喜はまた、闇の中に無理矢理にでも灯を掲げて道を照らす道標の役割こそが、本来の自分の適性なのだとも言う。


 その優喜と離れると、不安や迷いに苛まされるのだから、実際に優喜は道を照らす灯火の役割を果たしているのだろう。

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