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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第二章 格差の拡がる救世主
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17 進まない

 審問は恙無く終わり、芳香たち女性陣三人は罪が問われることもなく解放された。優喜はと言うと、自分で言ったように別の町の状況確認、救援という名目で一人で向かうこととなった。審問とは言っても、形式的にやったというだけで、結論ありきなのは見え見えではあったのだが。貴族の手前、一応、体裁は取り繕わなければならないのだろう。

 ただし、優喜は町に着いてから独断での行動は厳に慎むよう言い渡されている。次は庇い立てしないので、くれぐれも貴族に刃を向けるなとしつこく王太子に念を押されていた。

 優喜は領主宛ての書状を預けられるとともに紹介状を渡され、さらに改めて衣服と武器を貸し与えられ、できるだけ早く出発するよう言われる。


 優喜は家に戻ると、ヤマトのリーダー変更のために芳香たちを連れてハンター組合へと出向く。芳香たちは「まるで死にに行くみたいだ」と言って反対していたが、死ななくてもいつ戻れるか分からないし、長期間のリーダー不在は不便であるという。現在七級の『イナミネA』や『点滴穿石』が六級に昇級すれば、そのうち二人は五級の『ヤマト』に入ることができる。その時にリーダーが不在だと手続きができないのだ。

 リーダーを芳香に変更する手続きついでに、エモウテミの『ヤマト』への加入を済ませる。四級の弓士である彼女は、色々悩みも迷いもしたが、結局ハンターを続ける意思を固めていた。しかし、全滅パーティーの生き残りという縁起の悪い立場から、自分からどこかのパーティーに入れてくれなどとは言い辛かったらしい。

 結局、理恵と茜が声を掛けて『ヤマト』に入る運びとなった。


 手続きを終わらせると、次に商業組合に向かう。家賃の支払いを済ませ、さらに借主の名義を変更する。これは素直に死亡などの理由により戻れなくなった場合のためである。

 何やかんやと揉めはしたが、「少しは私の肩を軽くしてほしい」と言う優喜に強く出ることもできず、結局、家の借主は茜へと変更することとなった。


 そして、午後からはみんなでお風呂である。いつの間にか前回の入浴からもう一週間が経っている。入浴後は、数の少なくなった魚獣を片っ端から駆除して一日が終わる。


 翌朝、優喜は一人で西門を出た。

 最初は三級チームが一緒に行くと言って聞かなかったが、優喜は諦めて貴族殺しの罰なのだと明かし、一緒に行けばみんな纏めて処刑されるからと固辞した。

 その事情を聞いて、揃って頭を抱えながらも渋々納得し、そして、猛烈に怒りだした。

 貴族を殺すなど非常識にも程があると。



 そして、『点滴穿石』にはやる事がある。

 五月一日。家を借りるのに最適な日取りである。めぐみたちは、『ヤマト』不在時から物件を見て回り、借りる家を決めていた。

 家賃は一ヶ月金貨三枚半で、6LKである。家賃は多少割高であるが、芳香たちの家にも近く、何よりもトイレが二つあることが最大の決め手となり、『点滴穿石』および『カエデ』の全員の意見が一致した。

 尚、『メシア』には何の相談もしていなかった。もともと『点滴穿石』も『カエデ』も自分たちだけで入る小さめの家を探していたのだが、結局その方向では良い物件が見つからず、合同で借りるのに都合が良い物件が見つかったのだ。

 賃貸の手続きを済ませると、張り切って狩へと向かう。

 もっとも、一日二十八匹までという制限は継続中のため、昼過ぎには狩りは終わってしまうのだが。


 昼食後は、薬草を採りに森へ入る。森の中の魚獣の状況はまだ把握できていないため、最大限の警戒を払いながら慎重に進む必要がある。魚獣は少ないながらも森に入り込んで、数匹の群と一日に一、二回遭遇する。しかし、すでに十人以上がビーム魔法を使えるようになっており、魚獣が凶暴化もしていなければ特に問題なく倒せている。

 だが、服装的な問題もあり深い森の奥には入って行けない。女子のズボンの調達は、大きな課題の一つである。

 家を借りたのもそのための大事な一歩である。ウサギが買取制限がされてから、殆ど貯蓄が増えていない。何とかして出費を抑えなければ、先に進むこともできないのだ。

 めぐみと楓は毎晩のように、お金が、お金が、と嘆いている。ウサギの制限が無ければ、既に目標額は貯められていたはずなのだ。しかし、今の状態では、目標額まで貯めるのにあと半月は掛かる。

 しかも、一日に稼げるポイントも制限されてしまっている状態なので、当初の予定では五月中には六級に昇級の予定だったのが六月以降とずれ込む見込みだ。


 優喜は、自分は一足飛びに四級になっておきながら、他の人たちには地に足を付けて前に進むよう繰り返していた。今まで大した努力をしてこなかった者が、ちょっと無理して頑張ったからといって大したことはできないのだと。

 しかし、めぐみも楓も、焦っていた。

 周囲の状況は目まぐるしく変わり、どんどん悪化して言っているのに、自分たちはちっとも前に進めている気がしない。ということらしい。。


「こんなことをしていて、いつ、どうやって日本に帰るの?」


 目途が立たないどころではない、殆どお先真っ暗状態だ。沈鬱な表情で言うめぐみに、芳香たちも掛ける言葉は無かった。

 こんな時に優喜だったら何と言うのだろう。

 恐らく、気の利いた言葉など吐かないだろう。当たり前のような顔をしてとんでもないことを言うだけだ。


 魚獣の討伐が一段落し、町に活気が戻りつつある中で、稲峰高校一年五組には暗い雰囲気が漂ったままだった。

 変わらない毎日。頑張って努力しているつもりでいるものの、前に進んでいる気がしない。自分たちが日々の生活に埋もれていくのを歯痒い思いをしながらも、道を見出せないでいる。



 五月も終わろうという頃に、芳香、理恵、茜の三人が王宮から呼び出された。


「お前たちは一体何なんだ? いや、あのウスイとは何者だ?」


 芳香たちが部屋に入るなり、王太子は呆れたような苛立ったような表情で疑問を投げかける。


「え? 何ですか? 碓氷がまた何かしたのですか?」


 驚き慌てて芳香が聞き返す。


「メノフィからの使者が先ほどこの城に来た。魔法道具ではなく、書状を持った使者が直接来たのだ。それによると、ウスイの指導、指揮により町周辺の魔獣の大半を殲滅。その後、ウスイは別の町へと向かったが、残していった計画、作戦に従って掃討を完了したとのことだ。交易路の安全確認を含めて、この王都に使者を立てたらしい。」

「上手く行ったんですね?」

「どこがだ。私はメノフィの救援に行けと言ったのだ。何故他の町に行く? そしてビュアンから魔法道具で報告が来ている。見通しの立たない状態だったのが、持ち直したと。さらに、タラエコからは手の打ちようのない窮地を救われたと感謝されたわ!」


 何故か王太子は鼻息荒く怒鳴り散らす。


「独断での行動は厳に慎むよう言ったのを忘れたのか? それとも私の言葉など聞く耳持たぬと言うのか? だいたい、何故一人行っただけで、町が窮地から立ち直れるのだ?」


 叫びまくる王太子の前で、三人は項垂れるしかできなかった。

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