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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第二章 格差の拡がる救世主
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13 グリカイゼへ

 日が完全に沈んでから、『ヤマト』は東門を出てグリカイゼに向かう。街道を徒歩で一日程度の距離ということなので、順調に進めば明日の朝には町に着くはずである。もちろん、順調に進むはずなどないのだが。

 真っ暗な夜道を四人ははしゃぎながら歩く。天気は曇り。月明りも星明かりも無い真っ暗な道である。

 芳香は比較的夜目が利くらしく、それでもしっかりした足取りであるものの、理恵と茜は足元が全く見えないようで、かなりおっかなびっくり歩いている。

 そのため、優喜と芳香が前で荷車を引き、理恵と茜が後ろから荷車を押す位置についている。


「どうせ見えないなら目を閉じてしまった方が良いですよ。目を開けているのに見えないととても怖いですが、目を閉じていればちょっと怖いだけです。」


 そんなことを言われたって、結局見えないからどうにもならないような気はするのだが、こいつ、アホなのだろうか?


 しかし、出発して四時間も過ぎると雲が切れ星空が広がり始めた。道端に腰を下ろしてパンを齧りながら休憩を取る。次に休憩を取れるのがいつになるか分からない。闇を全く恐れない優喜でも、さすがに星明かりも無い暗闇の中で休憩をする気にはならなかったか。

 夜を通して進んでは休みを繰り返し、東の空が白みかけた頃には道程の八割ほど、三十五キロメートルほどの地点にまで来ていた。残り十キロ弱、ここからが正念場だ。


「魔物もそろそろ動き出す時間? なんか空が明るくなってきたよ。」


 芳香が空を見上げて言う。


「そうですね。やはり、魔物は夜は動かないようですね。調査しておいて良かったです。ですが、明け方、いつ頃動き出すのかは分かっていませんので、周囲には注意してください。それと、そろそろ森が切れるはずなので、見通しの良いところに出たら、一度休憩しましょう。」



 道は森の中を左に大きく曲がり、森が切れたところから真北に一直線に町へと向かって伸びている。優喜たちは街道を少し外れたところで土柱をつくり、その上で休憩をする。毛布を取り出して横になる優喜のクソ度胸が恐ろしい。芳香たちも毛布に包まり、軽く食事を取ってから横になる。

 もうこの子たちの神経が信じられない。そこらは魔物がウヨウヨしているというのに、どうして悠長に寝ていられるのだろう。

 四人はそのまま小一時間ほど眠り、太陽が東の空に顔を出したころに目を覚ました。


「もう完全に朝だね。」


 茜が欠伸をして言う。そして、桶に水を張ると順に顔を洗っていく。

 こいつら本気で緊張感無いぞ。大丈夫なのか?


「さて、周りはどうなっていますかね。」


 手拭で顔を拭きながら優喜は周囲を見渡す。

 南には森が広がり、西に百メートルほどの所を街道がまっすぐ北へと伸びている。その先には朝靄の中に町の影が見え隠れしている。



「寝てんじゃねーぞおおおぉぉぉ!」


 優喜が唐突に叫ぶ。四人は注意深く周囲を見回すが、動くものの気配はない。


「この辺には魔物はいないのでしょうかね。もう少し進んでみましょうか。」


 土柱を戻すと、荷車を押して街道へと戻り、草原の中の道を北へと向かう。町まであと十キロメートルも無いはずなのだが、周囲には不自然なほど魔物の姿が無い。


「この辺りには餌となる獣がいないのでしょうか? お風呂の周辺も魔物は殆どいませんでしたが。」

「でも、この辺の草はお風呂の周りのとは違うよ? っていうか、ウサギが多い方に生えているやつじゃない?」

「もともと、ハンターが頑張っていて、ウサギが少なかったんでしょうか。それとも、敵が多すぎてウサギが狩り尽くされてしまったんでしょうか。」


 優喜たちは話しながらも歩き続ける。もちろん、周囲への警戒は怠らない。


「右。何かいるよ。」


 足を止め、芳香が警告を発する。優喜は既に詠唱に入っている。

 土柱の魔法が発動して上から確認すると、五匹の魔物が近づいてきていた。今までとは違うタイプで、サイを六本足にして、頭を魚にしたような姿だ。なお、鼻先には巨大な角が生え、全身は緑色の鱗に覆われ、恐竜のように見えなくもない。

 ビームが奔り、三匹の魚獣が頭を貫かれて大地に転がる。残る二匹は、土柱に向けて突進して体当たりをしてきた。しかし、優喜の土の槍の方が早く、魚獣の胴を串刺しにする。

 近くに、他の魚獣がいないことを確認して土柱を解除すると、優喜と芳香は魚獣に槍や剣を振るう。


「一撃で殺すのは難しいかも……」


 芳香が険しい顔で言う。


「私の槍じゃ、一撃どころか、倒すこと自体が難しいですね。硬すぎですよ。」


 優喜も表情が暗い。


「でも、魔法なら通じているよ?」

「ええ、私たちなら、ある程度何とかなるでしょう。しかし、魔法を使えない人たちにはかなり厳しいですね。ですが、そうだとすると、解決は簡単です。」

「魔法で戦えば良いってことだよね。」

「そうです。単発の攻撃力は魔法の方が圧倒的に上ですからね。ビーム魔法は十分に通用するようですし、敵の数次第では、私たちだけでどうにかなります。」



 優喜は魚獣の角だけを折り、荷車に積んで町へと歩みを進める。しかし、町に近づくにつれて敵の数が多くなるようで、なかなか前へと進まない。


「山口さん、地均し移動で一気に門の前まで行きます。この土壁ごと移動しますよ。私が先に行きます。止まったら間を開けずに山口さんお願いします。」


 優喜は強引に突破するつもりだ。高さ二メートルほどの土の壁ごと物凄い勢いで進み、門の前に迫る。途中にいた魚獣は土の壁で撥ねられて吹っ飛ばされていく。門の前に着いた直後、優喜は魔法で防壁と同じくらいの高さの土柱を作り出す。


「何だお前たちは!」

「王太子殿下より特命を承ってグリカイゼまで来ました。領主殿とお話をしたいのですが、壁の上を通らせていただいてもよろしいでしょうか。」


 基本的に、防壁の上を通って町を出入りするのは重罪だ。疚しいことが無い者は堂々と門を通れば良い。それができない、したくないと言うのは、門に出向いたら捕らえられる立場の者として解釈される。

 しかし、今は魔物を防ぐために門が閉ざされているので、疚しいことなど何一つ無くても門を通ることができない。だから優喜は「上を通っていいか」と聞いているのだが、さすがにそのような行為を許可した前例を知る者はおらず、中に入れろと言う優喜たちを不審者として見ているような節もあった。


「領主殿への紹介状もあるんですが、どうしてもダメですか?」


 王家の封がなされた封筒を見せると、兵士の中でも一際偉そうな者の顔色が変わる。

 優喜は封筒を渡すと、使いの者が領主へと走っていった。

 領主からのアクションを待っている間、優喜たちは近寄ってくる魔物を魔法で片っ端から撃退していた。


 七分ほど魔物を狩っていると、領主からの返事がやって来た。


「防壁の上を通っても構わない。今すぐ領主邸に来るように。」


 領主からの使いの者が言っている以上、兵士は優喜たちを通さないわけには行かない。使いの者に案内されて、優喜たちは領主の屋敷へと向かって行った。

 兵士たちは荷車ごと壁を越えて行った『ヤマト』を呆然と見送っていた。

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