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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第二章 格差の拡がる救世主
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05 命令

 解散後、優喜は受付に行き、東西の門は使わないよう下級パーティーに周知するよう依頼する。明日は特に、町の外に出ないことを推奨して欲しいことも付け加える。


「さて、帰って寝ますか。今日は疲れましたよ。」


 伸びをする優喜にバナセンキとカナフォスがエモウテミを押し付ける。


「お前の所は女が多いだろう。うちは男ばかりだからちょいと都合が悪い。」

「お前ら数多いし、今更一人増えても大丈夫だろ? それにほら、エモウテミはお前と同じ四級だし、ちょうど良い。」

「もう、メチャクチャな屁理屈捏ねないでくださいよ!」


 優喜は必死に反論するも、二人に強引に押し付けられて、渋々エモウテミを連れて帰った。



「女を連れ込むとは良い度胸だね。」


 家に着くなり、茜が詰め寄る。その後ろでは芳香が般若と化している。


「落ち着いてください。彼女は四級のエモウテミ。今は細かい詮索は無しでお願いします。そんなことよりも大切な話があります。上にいる人たちも呼んでください。」



 茜に呼ばれて、住人全員がリビングに集合すると優喜は会議の内容を説明する。


「A、穿石、カエデ、メシアは明日の午前はお休みです。町の外に出ることは禁止です。どうしても外に出る場合は死を覚悟してください。」

「え? ウサギ狩は?」

「絶対にダメです。思っていたよりも遥かに多くの魔物が町の近くまで来ています。明日は五級以上で南門から出て魔物を狩っていきます。六級、七級は午後までは町の中で待機です。」

「この前は連れてったのに明日はダメってどういうことなんだよ。」

「三級ですら危ない目に遭っているし、四級、五級は死人が出ています。あなたたちでは危険すぎます。」


 優喜の言葉に、一同顔を見合わせる。


「私たちは…… 出るんだよね。」


 理恵の顔色は悪い。


「いいえ、幸か不幸か、私たちは別です。朝から城に行きますよ。なんとしてでも上の人と話をします。」

「お城に?」

「はい。兵士にも動いてもらわなければ話になりません。それができなければ、この町自体が詰みかねません。不安を煽るようで申し訳ないですが、思っている以上に事態は切迫しています。打開は急務です。」


 一息置いた後、優喜は明るい口調で指示を出していくが、空気が重い。


「それと、加藤さんは神殿に行って、怪我人がどれくらい出ているかの確認をお願いします。昼までは神殿のお手伝いをしていて構いませんが、お昼には一度戻るようお願いします。」

「堀川君は、津田さん、村田さん、清水君にこの話を間違いなくお伝えするようお願いします。それとエモウテミさんの食事はこちらから出しておいてください。」

「あの人はいつまでここに?」


 優喜が差し出した銀貨二枚を受け取りながら、幸一が聞く。


「ちょっと読めません。彼女はパーティーが全滅して、酷くショックを受けています。自殺してしまいかねないくらいに。少しゆっくり、様子をみたいと思います。」


 優喜は日本語で説明する。


「ただし、彼女は四級の強者ですからね。変な気を起こさないようお願いしますよ。」

「碓氷の彼女だもんね。手を出したら大変だよ。」

「それはともかく、他のみなさんは特にやるべきことは無いので、宿に泊まっている人たちに伝えたあとは、休んでおいてください。私からは以上です。他に何かありますか?」


 茶化す茜だが、優喜は完全にスルーした。


 その後、特に何もなく解散となり、各自部屋に戻っていく。エモウテミは優喜たち『ヤマト』と同じ部屋だ。

 優喜は部屋に戻ると紙を取り出して何やら色々と書いていく。


「何してるの? 寝ないの?」

「これを書いたら寝ますよ。明日は朝から忙しいですからね。みなさんもよろしくお願いします。」

「ねえ、私たちどうなるの? また、戦うんだよね。」


 理恵は不安そうだ。


「そうですね。でもまあ、なるようになりますよ。」

「碓氷は怖くないの?」

「怖いですよ。だから、最悪の事態にならないよう全力を尽くします。目を背けていても、誰も助けてはくれませんから。怖いから逃げるんじゃなくて、怖いからこそ戦うんです。色々なものと。」

「碓氷って、たまに良いこと言うね。」

「たまにとは何ですか。失礼ですよ。私はいつも良いことを言っています。」


 優喜の放言にブーイングが巻き起こる。


「そろそろ寝ますよ。」


 全て書き終えたのか、優喜は紙とペンを仕舞いながら不機嫌そうに言うと魔術の明かりを消した。


 優喜たち『ヤマト』は、意外と簡単に入城できた。多少は待たされたものの、優喜が数枚の紙を渡して取り継ぎを頼むと、すんなりと入城許可が下りた。

 応接室に通されると、そこには既に宰相以下大臣数名、騎士団長に魔導士団長、そして宰相の隣には見たことの無い少年が席に着いていた。促され、優喜たちが席に着くなり、宰相が質問を畳み掛ける。


「これは一体何だ? 王都が既に魔物に囲まれているだの、今すぐ手を打たないと国が滅びるだの、部下からそんな報告は聞いていないぞ。それをこんな封もしないで渡して寄越すとは一体どういう了見だ。」


 凄まじい気迫にたじろぎながらも優喜は説明を始めた。


「まず、その様子ですと、先日の魔物討伐軍の戦闘の後、殆ど魔物に関する報告を受けていないのかとお見受けいたします。昨日、我々ハンターは、町の周辺にて魔物討伐に当たり、おおよそ千三百七十二匹を狩って、こちらは四十九名ほどが命を落としました。魔物は既に東西の街道を越えており、南を含めて、街道の通行は大変危険な状態です。また、王都周辺の畑は全域的に敵が多く入り込んでおり、農民は畑仕事をすることもできません。この辺りは伺っていませんか?」


 宰相は頭を横に振る。


「想像以上の敵の数に我々ハンターも手が足らず、しかしだからと言ってこのままでは、町の存亡にも関わる問題ですので、今朝より総力を挙げて敵を排除すべく南門より出ています。夜までには東西の街道辺りまでは排除を完了させるつもりですが、遅れる可能性も高いです。簡単ですが現在の状況は以上です。」

「それで我々に何をして欲しいのだね?」


 宰相は優喜の腹の底を見破ろうとばかりの眼光で睨みつける。


「街道の警備、及びその周辺の敵の殲滅をお願いしたいです。それと、夜間の外門の通行許可を。」

「兵を出してやっても良いが、条件がある。」


 宰相の隣に座る少年が勿体ぶって言う。


「条件ですか?」

「お前たちが俺の後宮に入るなら、父上に兵を動かすよう言ってやる。」


 下卑た笑みを浮かべて少年が言う。優喜は怒るよりも呆れているようだ。


「失礼、宰相閣下。こちらはどなたで?」

「王太子殿下がご子息、モウグォロス殿下でございます。」

「王孫殿下でしたか。そりゃあまた、ご挨拶も無しに失礼しました。私は第五級ハンター『ヤマト』のリーダーを務めております碓氷優喜と申します。さて、先ほどの条件ですが、話になりませんね。却下させていただきます。王太子殿下、或いは国王陛下には宰相閣下から伝えて頂ければ十分ですので。」

「ふん、宰相が言ったところで、決めるのは父上だ。」

「ええ、モウグォロス殿下。貴方ではありません。」


 優喜は冷やかに言う。王孫ごとき、歯牙にもかけない態度だ。モウグォロスの方は、顔が引き攣りすぎて感情が分からない。あれは怒っているのだろうか? いや、たぶん、怒っているのだろう。


「そもそも、そちらには兵を出さないなどと言う選択肢は無いのですよ。敵が真近に迫っているのに城に篭っていてどうするのですか? 私は、兵士たちとハンターたちが協力して作戦展開した方が、双方ともに損害を抑えられると思いまして、我々の策に乗っていただけないかとご提案差し上げているのです。」

「兵を出すのが前提と言うが、敵の戦力や動向も分かっていないのに兵を動かすのは危険ではないか?」


 騎士団長は保守的な考えのようだ。


「それは一理あるのですが、では、いつ、敵の動向や戦力とやらを把握できるのでしょうか。その時には手遅れになっている、ということも考えられますが。」


 宰相と騎士団長は揃って唸り、考え込む。


「ヨコエメズ、こんな奴の言うことなど聞くことは無い。俺を莫迦にしたらどうなるか思い知れば良い。」


 モウグォロスは無駄に強気だ。


(まつりごと)も兵の運用も分からないガキは黙っていてください。」


 優喜はさらに強気だ。


「騎士団も魔導士団も俺たち王族に忠誠を誓っているんだ! お前たちのために働くなんてオカシイだろう! そんなことも分からないのか?」

「え? 忠誠誓っているのに畑や町を守らないんですか?」


 モウグォロスの言葉に本気で驚いたようで、芳香が声を上げる。


「何でそんなことをする必要がある?」

「この町や畑って国王陛下の所有物なんですよね? 陛下は町も畑も要らないんですか? 魔物にメチャクチャにされてもどうでも良いんですか?」

「それはないでしょ? 忠誠心の高い人だったら王様の大切な領土を荒らす魔物はやっつけにいくでしょ?」


 芳香の意見に茜が賛同し、さらに畳み掛ける。騎士団長と魔導士団長は苦い顔をして視線をそらしている。


「良く分かっていらっしゃらないようなので申し上げますが、王族の身辺をお守りするのは近衛隊です。騎士団や魔導士団は財産と名誉を守るんですよ。王の財産って領土と領民ですよ。ですから、町や畑を守るために働くのは当たり前のことですよ。ですから、そちらのお二方はこうして作戦会議に参加しているんですよね?」


 優喜がナイスフォローを入れる。騎士団長と魔導士団長は難しい顔をして全くその通りだと頷いている。これで王孫以外の面子は保たれた。もはや王孫殿下はただのガキとしか扱われていない。


 優喜が魔物の凶暴化やそれの対しての有効と思われる戦術について詳しく説明していると、王太子ドクグォロス殿下が顔を出した。


「お父様! この無礼者たちに処罰を与えてください!」


 開口一番、モウグォロスが父親へのおねだりを叫ぶ。だが、ドクグォロス王太子は片手を上げて息子を制するだけで、取り合おうとしない。


「ご無沙汰しております。ドクグォロス殿下。」


 優喜たちは立ち上がって一礼し挨拶をする。


「堅い挨拶はいい。どんな状況だ?」

「はい。ウスイの話によると数シュイ(2,744)もの魔物が王都周辺に蔓延っているとのこと。ハンターの作戦に乗じて兵を動かし敵を一掃する方向で話を進めています。」

「数シュイだと? 先日、二、三シュイの魔物を倒したという報告は嘘だったのか?」

「いえ、敵の数、戦力は我々の想像を遥かに上回っていたようです。昨日だけでも七ミザ(1372)程度を倒しているのですが、敵の数が減っている実感がありません。むしろ、こちらの戦力が減ってしまっています。」

「ウスイ! そんなデタラメを言うな! お前の言っていることが嘘だったらどうなるか分かっているんだろうな!」

「どうもなりませんよ。魔物を全部蹴散らして平和になって万事解決です。不幸になる人はいません。それで何か問題ありますか?」


 息巻いて言いがかりをつけてくるモウグォロスのことを、優喜は本気で見下した目で見ている。


「細かい戦術の話は伺いましたので、許可をいただければすぐにでも出たいと思います。」


 騎士団長と魔導士団長がドクグォロスに頭を下げ、許可を願い出る。



「騎士団長エイルガス、並びに魔導士団長ヘンゾアスト。直ちに兵を動かし、ハンターと協力して王都周辺の敵を討て。奴らの好きにさせるな。」


 王太子、ドクグォロスにより出撃命令が下った。

《ミザ》は十四進数三桁目。1ミザは196

《シュイ》は十四進数四桁目。1シュイは2,744


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