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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第一章 呼ばれていない救世主
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25 戦いの後に

 カナフォスは、陣営から少し離れたところで『緑峰』のリーダー、ノキチェイに呼び出されていた。


「カナフォス、昼の指揮だが、あれはどういうことだ? 結果的に上手くいったから良かったが、何であんな実績も無いガキに任せた? みんなお前を信頼して、生命を賭けてるんだ。あんなガキにじゃねえ。」

「すまんな。俺の力不足だ。単に、アイツが俺よりも早く指示を出していた、ってだけだ。まあ、そもそもだな。アイツがあの場所を作った時点で、俺の出る幕じゃなかったんだよ。」


 カナフォスはため息を吐き、星を見上げる。


「お前や、他の奴らの気持ちはどうあれ、俺はこれで良かったと思っている。俺が指揮をしていたら、間違いなく犠牲者が出ていた。俺はその前提でしか作戦を考えていなかったからな。だが、ウスイは犠牲を一人も出さない戦いを選んだ。あんなガキって言うが、俺はそのガキに負けたんだよ。誰が指揮をしても不平や不満は出る。けどな、今回の不満は酒でも飲んで騒げば済む程度じゃねえか? 大事なモノを亡くした奴はいねえんだ。」


 ノキチェイは眉間に皺を寄せて考え込む。


「分かったよ。俺たちは一人の犠牲も出さずに勝った。マグレだか実力だかは知らねえが、とにかく上手くいった。」

「すまんが、それで納得してくれ。」


 神妙な顔をしてカナフォスは頭を下げる。


「ところで、夕方の戦闘だが、あれは一体何だ?」

「何だとは何のことだ?」

「やけに早く終わらなかったか? そりゃあ、常駐軍の奴らもいたけどよ。それにしても早すぎないか?」

「お前は聞いていないのか? レベル二の魔法で敵の大半を潰したって。」

「レベル二で? いや、無理だろ。 どんな魔法だよ。」

「レベル四の魔法とソックリなオリジナル魔法だとよ。それを属性が合う全員に教えた。」

「オリジナル魔法? それを簡単に教えるってあり得ねえだろ。」

「そりゃ、アイツら七級のド素人だからな。常識ってものを知らねえんだ。それと、できあがった魔法の一つを教えるのは大したことが無いんだとよ。」

「なんだそりゃ?」

「重要なのは魔法陣の理論だか作り方だかなんだとよ。さすがにそれはタダじゃ教えられんってよ。」

「ちょっと待てよ。理論とか作り方って、そんなのがあるのかよ。」

「あるからオリジナルを作れたんだろう?」


 カナフォスは何だか諦めたように言う。ノキチェイも二の句を継げない。何かを振り払うように首を振り、声のトーンを落とす。


「それは幾ら払えば教えてもらえるんだ?」

「さあな。ウチのコジュタルも交渉中だよ。まあ、金貨十四や二十八じゃ無理だろうがな。」


 カナフォスは笑って言う。


「俺はアイツらを四級に推薦しようと思ってる。」


 唐突にとんでもないことを言い出すカナフォス。


「推薦? 今何級なんだ?」

「言わんかったか? 七級だ。」

「それを四級にか。随分と思い切ったな。」

「すぐに四級らしい結果を出すさ。既にレベル三の魔法陣の改造をし始めているらしいからな。上手くいけばレベル五に匹敵するのが出てくるぞ。」

「いやいや、だからちょっと待てよ。それマズくねえか? 俺たちの立場が無いとかじゃなくて、変な奴らに知られたら。」

「マズイだろうな。しかもそれが七級の奴らなんてことになれば。だから、四級に上げて『翠菖蒲』に入れてしまえれば一番良いんだが。」

「おまえ、ズルいぞ! 独り占めするつもりかよ!」

「それもあるな。」


 ニヤリ、と笑うカナフォス。


「まだ本人に聞いていないから、ウチに来るかは分からんがな。お前も推薦してくれんか?」

「それこそ本人に会ってみないことには何とも言えんな。話を聞く限りでは六級や七級のレベルではなさそうだが、五級じゃダメなのか?」

「五級か。まあ、それでも良いが、たぶん、すぐに四級に上がるぞ。今なら魔物討伐で稼げるだろうしな。」

「お前さんがそう言うなら実力は確かなんだろうな。」

「少なくとも七級のままってのは無いな。今は少しでも動ける戦力が欲しい。実力がある奴にいつまでもウサギを相手にしててもらっても困るんだよ。」

「それは言えてるな。まあ、後で直接会って確かめてみるとするさ。」

「おう、そうしてくれ。」


 二人の第三級パーティリーダーは、話が終わると大欠伸をしてそれぞれ眠りにつく。


 翌朝、ハンターたちは日の出には王都に向けて動き出した。軍勢として纏っていない魔物も多くいる。それのどれくらいが町に向かっているかも分からないのだ。いつまでも町を留守にしておくわけにはいかない。

 兵士たちも王都へと歩を進めるが、足並を揃えずに移動する分だけ、ハンター達の方が動きが早い。

 優喜たちは、『翠菖蒲』に急かされながら進んでいた。しかしながら、『翠菖蒲』たちは、発破は掛けても荷車を引くのは手伝わない。


「自分たちの荷物くらいは自分たちで運べ。」


 不満を言う者に対して返す言葉は同じだ。いつもは五月蝿い力也も、カナフォスに睨みつけられて黙って歩いていた。

 昼過ぎに、お腹が空いたと言って見つけたウサギを理恵と茜が一瞬で仕留める。その早業に一緒に歩いていたハンターたちからも驚愕の声が上がるが、当の本人たちは気にしていないようだ。

 仕留めたウサギをハンターが解体し、遅めの昼食を取る。

 食事後も、ロクに休憩も取らずに歩き続ける。一緒に歩く中・上級のハンターたちは平然としているものの、優喜たちはかなりへばっている。何度か休憩を求める声が上がるが、その殆どが却下される。たまに、用を足すということでの休憩はあるものの、用が済めば直ぐに出発である。


「なあ、みんな疲れているんだ。少し休もう。」


 司お得意の『みんな』が始まる。


「休むことばかり考えていないで、少しでも前に進むことを考えなさい。私たちが足を引っ張っているって分からないの?」


 疲れている様子は隠せないものの、それでも前に進み続けようとするのは芳香だった。優喜は、もう、口をきくのも辛そうな表情で荷車を引いている。


「気合い入れろ!」


 カナフォスが叱咤し、優喜が疲れた顔を上げる。カナフォスを見て、その目が微かに笑った。


「それは嫌です。カナフォスさん、ちょっと良いですか? 荷車こっちに寄せてください。」


 訝しげな顔をしながらも、カナフォスは優喜が来るのを待つ。


「気合いではなく、魔力を入れます。ふふふははは。見るがいい! 我が力を!」


 疲労のせいか、何かキャラが変わってしまっている優喜は、カナフォスが持つ戦利品の槍を握る。その槍に重ねるように魔法陣を書き詠唱を終えると、レベル四の魔法が発動した。

 半径数メートルほどの地面が、人を上に乗せたままで、馬の全力疾走よりも速いスピードで前に進んで行く。


「これがあれば使えると思ったんですよ。」


 驚くカナフォスに、得意げに言う。

 優喜が魔法で進んだ跡には、平らに均された道が出来ている。二キロほど進んで魔法の効果が切れると、優喜は腰を下ろして、他の人が追いついて来るのを待つ。


「みんなが来るまで休憩です。」


 呆れた顔をしながらも、カナフォスも腰を下ろす。


「これもお前らのオリジナル魔法か。」

「ええ、この魔法は未完成だったんですけどね。その槍があればいけるかなと思いまして。実験成功です。」

「失敗していたらどうなってたんだ?」

「どうもなりませんよ。何も起こらないか、歩くより遅いか、直ぐに止まってしまうか。爆発するような失敗はしませんのでご心配なく。」

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