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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第一章 呼ばれていない救世主
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17 安定する日々、停滞する日々

「みなさん大変です。私はお金に目が眩んでしまいました。」


 碓氷優喜は帰るなり訳の分からんことを言い出した。

 呆れた顔をする伊藤芳香たちに、優喜は宿をやめて借家生活をすることで、生活費の大幅圧縮が可能であることを説明する。具体的に言うと、家賃が月に金貨三枚の家に十三人が住めば、一ヶ月に金貨四枚が浮くことになると。生活に必要な金額が減れば、お金も貯めやすいし、労働の負担も減る。

 そして、他人との相部屋に悩まなくて済むし、部屋にも鍵を掛けられる。

 女子陣としては、一番最後のが大きかったようで、心惹かれる者がでてくる。


「何にしても、今の手持ちではお金が足りません。」

「頑張ってお金を稼がないといけないわけね。」

「ねえ、その家ってお風呂はあるの?」

「そんなのが付いている家なんて無いですよ。」


 優喜は無情に津田めぐみの期待を打ち壊した。


「石鹸と手拭いを買ったら、露天風呂なら入れますよ。」

「露天風呂? そんなのあるの?」

「もっと早く教えなさいよ!」


 詰め寄る女子陣に、優喜は苦笑しながら説明する。


「魔法で地面に穴を掘って、魔法で水を入れて、魔法の火で温めれば露天風呂って作れますよ。」

「な、何だってー? 魔法にそんな使い方があったなんて!」


 理恵が棒読みで叫ぶ。コイツは多分、分かっていたな。


「何ですかそのリアクションは。」

「で、問題はどこにお風呂を作るかだよね。町の中は無理だろうし、畑のど真ん中に作るわけにもいかないし。」

「岩場が良いんですけどね。その辺りの情報も集めていきましょうか。」

「石鹸も買わないとね!」

「ああ、それは臭いやつなら銀貨四枚程度で買えますよ。ウサギを一匹多く運べば……」

「よし、希望が見えてきた!」


 そう言って気合を入れるめぐみ。


 翌日からはまたウサギ狩の日々である。

 薬草採集は稼ぎもポイントも低いため、点滴穿石も最初からウサギ狩に参加していた。

 北西側で朝から二十二匹を狩り、換金を済ませると早めの昼食をとる。今日はかなり早いペースで狩を進めている。

 昼食を終えて、昼の鐘を待たずに狩に向かって出発する。午後には西から南側に周って二十三匹を仕留める。戻った後もまだ太陽が沈むには早い。


「もう一回軽く行きますか?」

「どんどん行こう!」


 村田楓は元気よく答えるものの、一部の男子はゲンナリしている。今度は南門から出て西に向かって狩りを進める。夕方、十九匹を狩ったところで終わりにして町へと戻る。


「今日は随分と多いな。」


 換金に行くと、ケモノ担当のオヤジはウンザリした表情で言う。


「頑張って稼ぎますよ。ところで、このウサギの毛ってこの後どうなるのです?」

「皮なら紙か服の材料にするが、ウサギの毛は糸にもならんし、役に立たんから捨ててる。こいつを何かに使うのか?」

「上手くいくか分からないんですが、ちょっと使ってみようかと思ってまして。今度から毛を刈ってから持ってきて良いですか? 棄ててしまうモノなら、引取の値段は変わらないですよね?」

「いや、それはちょっと困るな。先に刈ってしまわれると引っこ抜けなくなっちまう。今まで通りそのままで持ってきてくれ。引き抜いた毛は、少しなら只でくれてやっても良いが、量が欲しいなら済まんが金は払ってもらう事になるな。まあ、心配しなくてもそんなに高くはならねえよ。」

「なるほど。ちょっと試してみたいことが有るので、少しだけ貰えますか?」

「今、持っていくならいっぱいあるぞ。」


 優喜は換金を済ませると、一抓み程度のウサギの毛を貰っていく。室内の解体場の隅には毛が山となっていた。


 翌日、『点滴穿石』と『カエデ』は町周辺の調査をすることとなった。ウサギが多い地区を調べるのと、風呂に適した岩場を探すためだ。

 ウサギ狩はイナミネとメシアの二十人で南西方面で行う。

 午前に十三匹、午後に十五匹を狩ってこの日は終わる。


 ウサギは北の方から来ると言う農家の言葉を頼りに探していると、西の森を北に行ったあたりに大量の巣穴を発見した。ということで、今後はそちらに向かうことにする。

 だが、露天風呂を掘れそうな岩場はまだ見つかっていない。


 それから数日が過ぎ、四月一日。

 朝から優喜は土下座をしていた。


「点滴穿石の皆さま。お願いします。お金を貸してください。」

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