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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第一章 呼ばれていない救世主
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14 帰還

 仕事を請けたハンター七人が夜明け前から南門に来ていた。全員が第五級のハンターである。意外と人が集まったものである。


「私が仕事を依頼した碓氷です。お仕事の内容は、私たちの莫迦な仲間、七人の男の捜索です。みな彼と同じ服を着ているので他の人と間違えないようよろしくお願いいたします。」


 碓氷優喜は根上拓海を指して言う。


「昨日の朝、ごく簡単な薬草採集の依頼を受けて南の森へ行ったはずですので、南の森の東側を探していただきたいのです。西側は私たちが探してみます。七人の名前は、清水、榎原、田中、中邑、西村、牧田、森下、こちらの紙に書いています。生きていた場合は町まで連れ帰ってください。死んでいた場合、遺品の回収をお願いします。」


 そう言って優喜は紙片を渡していく。


「分かった。探してはみるが、森は広い。見つけられるという保証は無いが、大丈夫だな?」

「はい、承知してます。では、門が開き次第出発と言うことでお願いします。」


 ハンターが念を押すのに対し、優喜は頷き、改めて頭を下げる。

 それから一分も経たないうちに、鐘が鳴り、門が開いていく。


「では、留守番組は門の外の邪魔にならないところで魔法の練習でもしていてください。」


 優喜は告げて門の外に出て行く。ハンターも優喜たちも開門前に身分確認は済ませてあった。

 今日は留守番組がいるので、リュックの中身は軽い。森の中を歩くのに不要なものは全部留守番組に預けてある。ただし、優喜だけがビニール袋に詰め込んだパンで膨れ上がっている。店の準備をしていたおっちゃんに無理を言ってパンを買ってきたのだ。

 優喜を中心に左右に三人ユニットを、声が届く程度の位置取りでフォーメーションを組んでいる。右のユニットには青木美穂、伊藤芳香、奥田友恵、左は小島明菜、佐藤美紀、中島翔子が選ばれた。

 捜索チームは時折名を呼びながら、ゆっくりと進み、二時間ほどした頃に優喜が左右を呼び集めて小休止を取る。


「ねえ、だいぶ奥まで来たと思うんだけど、何の跡も見つからないよ? こっちには来てないのかなあ?」

「どこをどう動いているか見当もつきませんからねえ。」


 パンを一欠片口に放り込みながら優喜が答える。


「あ、私も頂戴。」


 小島明菜が言い、優喜はパンを配る。


「そろそろ西に折れましょうか。引き続き、足跡か何らかの痕跡を探す方向で。」

「ねえ。何で足跡を探すの?」


 優喜の指示に、翔子が疑問を口にする。


「ああ、説明していませんでしたっけ? 捜索班の人数が少ないからですよ。私たちは町から南下して進んできました。しかし、それっぽい跡は見つかっていない。ということは、このラインを彼らは超えていない。そこで、私たちは西に折れて進んでいきます。さらに北に折れて進みます。この四角形から出入りした跡を探すことで、探すエリアを絞り込むんです。途中で足跡を見つけたら、それを追いかける。ただし、私たちは深追いしません。お昼で引き返します。」

「私たちまで遭難したら洒落にならないもんね。」

「それもあるけど、お金稼がないと晩御飯も宿も無いよ。」


 芳香の指摘が優喜に似てきている。


「では、引き続き行きますよ!」


 優喜の号令で女子陣も動き出す。

 優喜たちは途中でイノシシやシカに遭遇するも、なんとかやり過ごして西に向かって捜索を進めていく。


「大きな動物の足跡発見! 左に向かってる!」


 芳香の報告に優喜はすぐさま指示を出す。


「全員、周囲に警戒! 下手に動かないでください。」


 優喜は右班に向かって走り、中間にある茂みに目を向けて足を止める。何かがそこにいる。魔法陣を幾つか書いて足元の小枝を拾って茂みに投げつける。何度か繰り返すと獣が茂みから姿を現す。低く唸り声をあげ、前足でバンバンと地面を繰り返し叩く獣。体長一・五メートルはありそうな緑色のクマ。

 優喜はすぐさま詠唱を開始し、魔法を発動する。

 魔法で開けられた穴に落ちて吼えるクマを無視して優喜は左班を呼ぶと、一緒に右班に合流する。


「あのクマでしょうね。」


 足跡を見て優喜は言う。


「剣もないし、クマには勝てないよ?」


 芳香が言う。剣があればクマ相手でも勝てるとでも言うのかこの女は。


「私たちにとって最悪のパターンは、獣に襲われることです。クマ一頭ならともかく、多数の狼に囲まれたりしたらどうにもならないです。」


 大きく息を吐いて、優喜は続ける。


「すみません、少し甘く考えていました。方針を変更します。進路は東寄りの北。あまり広がらずに、私たちの安全を優先します。」


 優喜としては、そんなに森の奥まで来たつもりは無いのだと言う。そして、危険な猛獣が出没するのはもっと奥だと、日本の感覚のままに勝手にそう思っていたと告白する。


 六人の顔は浮かない。


「何か意見があるなら遠慮なくおっしゃってください。」

「それ、大丈夫なの?」


 穴を指して美穂が問う。


「ああ、そう簡単に出てこれません。土に爪を立てても崩れるだけですから登れませんよ。周りを崩して出てくるまでに一時間くらいは掛かるんじゃないですかね。さっさと逃げましょう。スタコラさっさのさです。」

「それ、とことこ追いかけられるヤツ……」

「イヤリングを落とさなければ大丈夫です。他になければ行きますよ。」



 延々と森の中を探して歩き続けるも優喜達はそれらしき痕跡を発見できず、太陽が中天を過ぎたころに町に戻ってきていた。留守番組は既に昼食は済ませているとのことで、優喜達も屋台で適当に買って食事を済ませる。

 留守番組が捜索組と交代して狩に向かおうとしたとき、東門にハンターチームからの連絡が走って来た。

 彼の報告によると、南と言うより東の森でそれらしき七人組を発見。かなり弱っているので進むのが遅いが、夕方の閉門までには町に戻って来れそうとのことである。


「戻ってきたら全員デコピンの刑ですね。では、私たちは狩に行きます。」


 優喜の号令で留守番組が狩に向かう。


「最低で十四匹は狩らないとメシアを除いた私たちの晩御飯や宿代が足りなくなります。十四匹だと晩御飯はパンだけですね。頑張って狩ってお肉食べましょう!」


 優喜は電卓を叩いて必要額を計算し、みんなに周知する。

 午後の狩は、畑の南側を狩場に選んでいた。優喜達が戻る際に何匹かのウサギを見つけていたのだ。

 いつも通りの戦術で、狩は順調に進む。スピードは遅いながらも聖が水系魔法陣を書けるようになり、益田海斗も水魔法ならば九十パーセント以上の確率で発動できるようになってきているのが大きい。

 陽が傾くころには、目標数を達成して十六匹のウサギを仕留めて帰路に着いていた。

 そのころ、捜索に出ていたハンターたちに連れられて、『メシア』が東門に着いていた。

 芳香はハンター七人に礼を言い、留守番組とともに、依頼完了手続きのために組合に移動する。


「彼らが何か失礼なこと言いませんでしたか?」

「ん? ああ、ちょっと躾けといてやったよ。お前ら仲間は選んだ方が良いぞ。」


 小声で問う美穂に、ハンターのリーダーは拳を差し出して答える。恐らくぶん殴ったんだろう。彼らハンターたちが力也の文句や暴言に遠慮する筋合いなんかないからな……


「おや、お帰りですか。どうもご苦労様です。」


 芳香たちが組合で手続きを終えて改めてハンターチームに礼を言っていると、優喜達がウサギの換金にやってきた。

 ハンターたちと別れ、優喜たちはウサギを換金すると屋台広場に向かう。


「はい、Aチーム、一人銅貨三十枚でお願いします。」

「カエデも三十枚まででよろしく。」

「点滴穿石も同じく三十枚以内で。残金ホント少ないから、それ以上食べたら宿代無くなるからね!」


 優喜、村田楓、津田めぐみが班員に食事の上限を言い渡し、それぞれ屋台を見て回る。

 しかし、結局高い物は買えないため、みんな同じパンと串焼きを食べていた。


「俺らも食おうぜ! 肉だよなやっぱり。」

「あなた達は一人銅貨二十四枚までですよ。二本も食べられませんのでご注意ください。」


 西村力也が屋台に向かおうとするところに優喜が制止する。


「あ? ふざけんなよ。俺ら昨日から何も食ってねーんだぞ? なんでそんな少ねえんだよ!」

「そうだよ、碓氷。ちゃんと食べないと」

「清水君まで何を言うんです? そんなお金があるんですか? 昨日から銅貨一枚も稼いでいないと思っていたのですが。」

「それはそうなのだが。なあ、少し貸してくれないか?」

「ここに銀貨が一枚あります。カエデチームが一枚貸してくれるそうです。それで、夕食と宿泊費をどうにかしてください。一応、私の計算では、夕食に銅貨二十四枚、宿泊費に銀貨一枚半でギリギリ足りるはずです。まあ、残金を良く数えてくださいね。」


 この流れは優喜の想定通りのようだ。貸す額を既に決めてあった。


「もう少し……」

「何と言われても、無い物を貸すことはできません。」


 言いかけた司を遮り、優喜はぴしゃりと言い切る。実際は若干残っているはずなのだが……


「こんなの買ってるから金無えんだろ!」


 荷車を蹴り、力也はまだゴネる。

 直後、優喜のドロップキックが炸裂した。


「これは私の荷物を売って買ったものです。そんなにお金が欲しければ、あなたも荷物でも服でも売れば良いんですよ。そのリュックを売れば串焼き肉くらい十本でもニ十本でも買えますよ。これ以上文句があるならこれも貸しませんよ。」


 優喜に冷たく突き放され、司は呆然としながら手の中にあるお金を眺めていた。

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