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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第一章 呼ばれていない救世主
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11 根性の曲がった金の亡者

「って、なんで碓氷がここにいるの?」


 村田楓が凄い目で睨みながら言う。


「だって、相部屋しか取れないんだから仕方ないじゃないですか。私が別の部屋に行ったら、他の誰かが来ますよ? 赤の他人の。 心配しなくても、あなたたちを襲う体力なんて残ってないですよ。」


 言いながら碓氷優喜はベッドに潜り込む。この宿の相部屋は七人部屋である。一人余った優喜は女子部屋に来ていた。女子部屋と言っても、一人は全く知らない赤の他人が混じっているが。


「そもそも、ドアに鍵が掛からないのですから、あまり細かいことは言わないでください。では、おやすみなさい。」


 リンゴのロゴの入った多機能音楽プレーヤーで目覚ましをセットしながらそう言って、優喜はさっさと寝てしまう。

 地球と一日の時間が違うこの世界では、地球の時計はあまり役に立たない。優喜は既に一日が地球時間で二十三時間程度であることは確認済みである。そして、日の入りから日の出までが十一時間程度であることも。だから優喜は毎日目覚ましの時間をセットしなおしているのだ。

 優喜が寝息を立て始めたのを見て、他の女子たちも諦めてベッドに潜り込んでいく。


 翌朝、電子音で目を覚ました優喜はベッドから出ると、窓を開ける。朝の冷えた空気が入り込んで、優喜の長い髪とスカートを揺らす。明るくなってきた空は、今日もよく晴れている。


「さあ皆さん、朝ですよ。起きてください。」


 優喜はベッドを叩いて起こしていき、鞄からブラシを取り出すと髪を梳かす。


「正直、今日は休みたいんだけど…… き、筋肉痛がああッ!」


 理恵が顔を歪めながら言う。


「最悪、何か持ち物を売るということは検討しますが、何もしないのは却下です。何はともあれ、顔を洗って食事にしましょう。」


 優喜はリュックを背負うと、部屋を出て行く。


「ちょっと待ってよ!」


 言いながら、芳香たちも荷物を手に優喜を追って部屋を出た。

 優喜たちが食事をしていると、ほかの部屋のクラスメイト達もぞろぞろと出てきて食事を始める。


「なあ、今日はみんな辛そうだし、休みにしないか?」


 司が突然みんなに向かって変なことを言いだす。


「好きにすれば? 私は美味しいもの食べたいし、ベッドで寝たいから仕事探すけどね。」


 津田めぐみにも優喜が感染ったようだ。冷たく言い放ってパンを口に放り込む。


「さっさと食べて、さっさと行きますよ。」


 早々に食べ終わった優喜は立ち上がり、トレイを下げてしまっている。


「みんな疲れているんだ。分からないのか?」


 司は非難の色を強めて、声を大にする。


「疲れているから何ですか? 私は休んでいる人の分の食事やベッドまで用意しませんよ。」


 優喜は外に出ると、前庭で体操を始める。

 一人、また一人と食べ終わった者が宿から出てきて、優喜に倣って体操を始める。


「みなさん、筋肉痛がきつそうですね。今日は楽な仕事が有れば良いんですが。ああいうのは早い者勝ちなので早めに出ましょう。」


 優喜の言葉を聞いて、楓がはっとして食堂に向かって言う。


「みんなまだ? 楽な仕事から無くなっていくから、あんまりのんびりしているとキツくて安いのばっかりになっちゃうよ!」


 慌てて立ち上がり、下膳する一同。みんな自分で考えるとかしないのだろうか。


「そーゆーことはもっと早く言えよ!」

「それくらい自分で考えれ。」


 力也の文句に、茜がぴしゃりと言う。だんだん優喜病が蔓延してきている。

 ハンター組合に着くと、掲示板を確認し、仕事を探す。


「あ、この薬草なら持ってる。」


 時田直弥が二つの薬草採集の仕事をはがして言う。銀貨二枚と一枚半のものだ。


「ナイス時田! 先生、それ先に終わらせちゃって。」


 めぐみが指示を出し、掲示板を物色する。

 受付で請負手続きを済ませて薬剤カウンターで完了しに行く小野寺雅美と直弥に、優喜がついていった。


「ここって、依頼されていない薬剤も買取してくれるんですか?」


 清算が終わったところで、優喜が担当者に質問を投げる。


「はい。常時買い取り対象の品目はこちらに書いてある通りです。」


 担当者が薬草の種類と金額が一覧になっている紙を差し出す。


「これ、もらって良いんですか?」

「え? いえ、だめです!」


 あっさり拒否された優喜は紙とペンを取り出して書き写していく。

 書き終えて優喜が掲示板コーナーに戻ると、少々雰囲気が悪くなっている。


「どうしたのです? 何かあったのですか?」」

「ここにある依頼、全部足しても銀貨七十枚にもならないんだよ。宿代って一人二枚だよね? 全然足りないよ。」


 まさかの事態である。必要な額を稼ぐだけの仕事が無い。茜から聞いて、さすがの優喜も驚愕の表情で固まる。


「穿石チームにお聞きしたいのですが、この中で採ってこれるのはありますか?」


 石化から脱した優喜は先ほどメモした紙を出して問いかける。


「セルクの実ってこれだよね。一個銅貨七枚って、銀貨二枚だと何個?」


 言いながら古屋柚希は直径三センチメートルほどの木の実を取り出す。


「えっと、十四の二乗で百九十六で銀貨一枚だから、一個銅貨七枚なら、二十八個で銀貨一枚。二枚だと五十六個か……」


 五十嵐寿が計算し、暗い顔で言う。


「狼を狩りに行きませんか?」


 第五級の掲示板を睨み、優喜が言う。


「そこって五級でしょ? 私たちじゃ受けられないんじゃ……」

「狩ってからゴネたら通りませんかね……」

「だいたい、狩れるの?」

「ゴネても無駄だ。止めておけ。」


 優喜と理恵の会話に男が割って入ってきた。身長は百七十センチメートル程度だが、がっちりとした体つきで背には槍を背負っている。


「お金が必要なんです。七級に来ている仕事が足りないんです。」

「七級なら七級らしく、ウサギでも狩っていろ。最近はウサギが殖えすぎているみたいだぞ? だいたい、ウサギ狩くらいでヘバるようじゃ五級の依頼なんて到底無理だ。」


 これには優喜もぐうの音も出ない。


「と、言うことだそうです。」


 苦虫を噛み潰したような表情で優喜は呻くように言う。


「ほかに良いアイディアが無ければ、狩に行きます。」


 優喜はとても悔しそうである。


「穿石チームは薬草探し行ってもらえますか。いけそうだったらそのまま継続、ダメそうだったら狩に合流。それで良いですか?」

「うん、分かった。じゃあ、薬草集めの仕事、分かるの請けちゃって行こうか。」


 めぐみが答えて指示を出す。実質的にリーダーは彼女になっている。


「メシアチームは。どうするか自分たちで話し合ってくださいね。」


 変な文句が来る前に優喜が釘を刺す。どうせ放っておいたら「俺らはどーすりゃいーんだよ?」とか言い出しそうだからな。

『イナミネA』が早々に出て行き、続いて請負手続き『点滴穿石』が出て行くのを『メシア』の十四人は黙って見ていた。


「どうするの? どっちかについていく? ガイド雇って薬草探す? 私はウサギ狩に一票。みんなは?」


 楓が焦って選択を迫る。


「あんなクッソ重いの誰が運ぶかっての。」


 力也が否定だけする。


「じゃあ、どうするの? 仕事しないと今晩寝るとこ無いよ?」

「知らねえよ! うっせーんだよブス! 筋肉痛だっつってんだろ!」


 力也は楓の問いかけにキレる。

 司が窘めるが、そんなのは無視して楓は背を向ける。


「じゃあ、私もあんたのことは知らない。私はウサギ狩に行くね。」


 そう言うと走り出て行く。


「ちょっと待て、俺も行く。みんなも行くぞ!」


 韮澤駿が楓を追いかけて出て行き、女子陣、そして結城雄介がそれに続く。

 司をはじめ、男子七人は呆然とそれを見送っていた。

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