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パンツを脱ぎたまえ! 【パンツォヌゥゲ異世界物語】  作者: ゆむ
第一章 呼ばれていない救世主
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07 新米ハンター

「お世話になりました。」


 事務的な対応の職員に礼を言って、王宮を後にする稲峰高校一年五組の一同。現在の生存者四十一名。まあ、まだ行方不明者も死亡者もでていない。


「で、碓氷。これからどうするん?」

「良い質問です、榎原君。取り敢えず、ハンターとかいうのをやってみようと思います。どれくらい稼げるかもわかりませんから、取り敢えず組合とやらに行ってみましょう。」


 言いながら、優喜は通りを歩いて行く。道は未舗装の砂利道。並ぶ建物は石造りで、窓にはガラスなど一切なく木窓が嵌まっている。

 メモを見ながら優喜は道を何度か折れ、ハンター組合と看板が出ている建物の前に来た。一階のカウンターで此処がハンター組合で間違いないかと確認すると、一階は食堂で組合の受け付けは二階だと言われる。

「ハンター組合の受け付けはここで良いのですか?」


 優喜がカウンターで改めて確認する。問題ない様だ。


「私たちはハンターに登録したいのですが大丈夫ですか? 四十一人いるんですが。」


 優喜の言葉に受付の男は少し困った顔をした後、立ち上がり会議室へ案内した。


「それでは重要事項説明を行いますので、よく聞いて、その上で申込用紙に必要事項を記入してください。」


 新規登録担当者が、説明を始めた。


 ありていに言うと、そこらのラノベの『冒険者』や『ハンター』と大差はなさそうだ。ここのハンター組合の特色としては、階級が七段階であること、昇級するにも手数料がかかることだろうか。

 もちろん、登録料も掛かる。一人当たり、銅貨四十九枚だそうだ。

 他にも、報酬は税が予め引かれている源泉徴収タイプであること、パーティの人数は最大で十四人までということがある。


 階級は個人・パーティ・依頼にそれぞれあり、個人の階級とパーティの階級が二段階以上違うとパーティには入れない。また、階級の一致しない依頼を受けることもできないという制約がある。



「登録料は、えっと、お金無いんですけど、物で払って良いですか?」


 優喜は顔を引き攣らせながら訊く。


「物?」


 訊き返す担当者に、優喜はコピー用紙を一枚差し出す。


「真っ白で綺麗な上質紙です! 四十一人分の登録料として、これを十枚でいかがですか?」


 目を剥き、狼狽える担当者。


「上の者に確認します。ちょっとこれ良いですか?」


 担当者は大きく深呼吸して落ち着きを取り戻し、紙を手に部屋を出て行く。

 ものの数十秒で、慌ただしく上の人とやらがやってくる。


「これは! これはどこで! どこで手に入れたァァ!」


 喧しいオッサンである。


「いきなりなんですか。挨拶も無しに失礼ではありませんか?」


 このような場面では優喜は鬼のように冷たい。


「失礼。私はヨコディス。ハンター組合ヴェイゾ支部長だ。」

「私は碓氷優喜と申します。」

「で、この紙は何所で手に入れたのだ?」

「日本のスーパーマーケットで買いました。」

「ニホン? スーパーマーケット? それは何だ?」

「日本とは、異世界の私たちの国です。スーパーマーケットとは日本にある食品や日用品のお店ですね。まあ、ここに有る物限りで、作ることも含めて新たに手に入れる手段は無いですけどね。」


 優喜は淡々と答えるが、ヨコディスは眉間の皺が深くなっていく。


「手に入れる手段が無いだと? 作ることも?」

「ええ、無理です。」

「これを十枚で良いんだな?」

「はい、残り九枚です。」


 逸るヨコディスに、優喜は紙を出しながら答える。


 お金の問題が片付き、申込用紙に氏名、年齢、性別、国籍を記入して提出する。

 優喜は国籍に堂々と漢字で日本と書いている。これ大丈夫なのかな。


「それでは個人認証をしますのでこれを。」


 渡されたのはケース入りの綿棒のような物。


「これで頬の内側をグリッと。申請書と一緒に提出してください。」


 ジェスチャーをしながら説明する。それ、遺伝子検査ですか?


 登録は数分で完了するようで、担当者が箱を手に会議室に戻ってくる。

 一人ひとり、名前を呼ばれて鎖付きのプレートを渡される。プレートは鉄製でサイズは縦二センチメートル、横七センチメートル程度。片面にエンブレムが幾つか刻まれ、その裏側には氏名と町の名前、そしてシリアルナンバーらしきものが刻まれている。


「このエンブレムは何を表しているんですか?」


 今日は積極的な榎原君。


「鎖側から、今の等級。次にこの支部のエンブレム。上に本部があるんですが、ここは王都支部なんです。そして我が国のハンター組合のエンブレムです。」

「等級が上がったらこのエンブレムが変わるんだ。」

「はい。等級が上がりましたら、新しいものと交換となります。紛失した場合は再発行の手数料として銀貨一枚掛かりますのでご注意ください。」


「では、パーティ分けをしますか。リーダーやる人いますか?」


 左右を見回して、清水司が手を上げる。


「では、清水君と小野寺雅美先生お願いします。残る一つは私がやります。はい、ではみなさん、三班に分かれてください。」


 意外とすんなりとパーティ分けは決まった。優喜チームが十三人、他二つが十四人と、特にもめもせずに綺麗に分かれたのだ。それぞれ登録を済ませると一同は会議室を出る。

 早速依頼が張り出してある掲示板に向かう。掲示板は等級ごとに分かれている。どっかのファンタジーみたいに一つの掲示板にごちゃ混ぜに貼られていたりはしないようだ。

 優喜達は最低等級である第七級の掲示板に群がる。薬草の採集、伐採の警備、草食害獣の駆除。簡単で安い仕事が並んでいる。


「銀貨七枚で何が出来るんでしょうね?」


 優喜が言いながら、ウサギ駆除の依頼を手に取る。一番報酬額が高いものだ。


「おい、ずるいぞ!」


 西村力也がまた煩い。


「武器も道具も無い、魔法も使えないあなたがどうやって駆除するのです? あなた達は薬草でも探していてください。」


 優喜は傲然と言い放つと、受付に行って詳細内容を確認する。

 場所は町の西の畑とその向こうの草原地帯。対象は二本の角を持っている緑がかった大型のウサギで、目標駆除数は最低十四。多いほど良い。この獲物は組合の買い取り対象なので、丸ごと持ち帰ってOK。ただし、十四匹分の耳が揃わないと達成にならないので注意が必要。

 請け負いの手続きを済ませると、優喜たち『イナミネA』はハンター組合を出て行った。


 清水司がリーダーを務めるパーティ『メシア』、教師の小野寺雅美をリーダーとしたパーティ『テンテキセンセキ(点滴穿石)』も慌てて相談し、仕事を請ける。

 両パーティとも薬草の採集だ。

『メシア』は請けてすぐに勇んで組合を出発し、『点滴穿石』は近くにいた若いハンターに頭を下げて、薬草を教えてもらおうとしていた。

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