表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

王桃と王悦と「ここにいるぞ!」の章

前回までのあらすじ

三国志の時代に関索として転生した俺。勝負の末に鮑三娘ほうさんじょうと結婚することになる。父である関羽の元に向かう旅の途中、鮑三娘ほうさんじょうの幼馴染、はくが住む村に立ち寄るが、一月後に村が山賊に襲われることを知り、鮑三娘ほうさんじょうと共に村人のために戦うことを決意する。

一緒に戦う仲間を集めるため、募兵している街にやってきた俺は、一緒に戦うから嫁にしてくれという王桃おうとう王悦おうえつ姉妹に出会う。


※一部抜けがあったため、追記と修正をしました。

「ちょっと待て今何て言った!?」

「だから、アタシとお姉ちゃんを君のお嫁さんにしてほしいんだ」

「ち、ちょっと王悦おうえつちゃん!? いきなりそんなこと言われてもお姉ちゃん心の準備が!」

 元気に求婚する王悦おうえつの横で王桃おうとうは顔を真っ赤にしている。

「でもお姉ちゃん、さっきこの人が戦ってるトコをぽーっとしてみながら「かっこいい……」って呟いてたじゃない」

「あ、あれは戦ってる姿がかっこいいって言っただけで、そんなつもりでいったんじゃ……」

「素直じゃないなー。でもいい加減自分に正直にならないと一生結婚できないよ? 昔は泣く子も黙る王令侠客組の組長の愛娘ってことで、みんな怯えちゃって言い寄る男はゼロ。王令侠客組がなくなった後、傭兵稼業を初めて、今度こそ戦場で出会った男と幸せな結婚を! と思ったら、戦で敵兵を大斧で真っ二つにする姿を味方兵士にすらドン引きされて、やっぱり言い寄る男はゼロ。そんなこんなで今年でもう23才でしょ? もうそろそろギリギリの年齢じゃない?」

「うう、王悦おうえつちゃんひどい……」

「もうやめてあげなって。お前の姉さん泣いちゃうから。あと一押しで涙腺決壊してもう止まんなくなっちまいそうになってるぞ」

 王桃おうとうは目にあふれんばかりの涙をためていた。本人も独身であることを結構気にしていたのかもしれない。晩婚化が進んだ平成では23歳など結婚している人間の方が少ないだろうが、この時代では結婚を危ぶまれる年齢なのだろう。

「だからねお姉ちゃん、今この時が神様がくれた最初で最後のチャンスなんだよ。見ず知らずの村のため、命を懸けて戦おうなんて人、中々いないよ? それに、お姉ちゃんこの前理想のタイプを話してた時に「やっぱり強い人が理想よね。でもヒゲだらけの肥満体の荒くれ男みたいなのじゃなくて、普通の人がいいわね」なんて言ってたけど、この人ピッタリじゃない。一見優男風だけど、腕っぷしはさっき見た通り! それに、結構いい男だしね」

王悦おうえつちゃんそれまで。二人だけの時に話したお姉ちゃんの理想の彼氏像を、これ以上公衆の面前で暴露するのはやめて」

 いかん、すっかり王桃おうとう王悦おうえつのペースになってしまっている。会話の本筋に戻さなければ。

「えっと一回いいかな? 王悦おうえつちゃんもさ、いきなり結婚なんて言っても、初対面の男と結婚とかやっぱ急すぎない? 王桃おうとうお姉ちゃん嫌がってるじゃない。俺の方は一緒に戦ってくれればそれで……」

 というと、王桃おうとうはずい、身を乗り出した。

「いえ、嫌だなんてそんなことは! むしろお願いしたいくらい……じゃなくてですね! 私、やっぱりこういう事は段階を踏むのが大事だと思うんです。まずはお友達からはじめてちょっとお茶でも飲みに行くんです。そして親の目を盗んでこっそり逢瀬を重ねて、夏祭りで初めての接吻。会うたびに互いの思いは深まってゆき、やがて二人の思いは一線を越え、運命の夜に……」

 王桃おうとうは虚空を眺めてブツブツ言いながらにやけ顔で涎垂らしている。

「お前の姉さん、大丈夫か? いい気分になれるお薬でもキメてんじゃないだろうな」

「いつものことだから平気平気。お姉ちゃん独身こじらせちゃってるだけだから、時々妄想から帰ってこなくなるんだよね。ま、そういう訳でどうかな? アタシ達二人と結婚しない?」

「そんな「ちょっとコンビニでコーラ買ってくる」感覚で結婚て言われても」

「コンビニ? コーラって何?」

「俺の例えが悪かった。気にしないで。だけど俺、ついこの間結婚したばっかなんだよね」

「えー、そうなんだ。残念だなー。あ、そうだ! だったらアタシ達二人を側室にするってのはどう?」

「側室って軽くすげえこと言うなあ。まあこの時代じゃ当たり前のことなのか。でも、王悦おうえつはそれでいいのかよ」

「アタシは全然気にしないよ。お姉ちゃんもいいよね?」

「へ? 何が?」

 妄想から我に返った王桃おうとうは目をぱちくりさせている。

「そういう訳でどうかな。アタシ達、腕は立つし、絶対に君の役に立ってみせるよ! それにアタシ達二人共、結構尽くすほうだから、嫁にするには絶対おススメ!」

 確かに腕は立つ。さっきのチンピラ二人を瞬殺した動きをみればそれは明らかだ。山賊退治の重要な戦力になってくれるだろう。それに、改めて二人を見ると、やはり二人共かわいい。王桃おうとうは美しい長い髪が豊かな胸にかかり、見ているだけでドキドキするような色香と、少女のような純粋さが同居する美人。王悦おうえつは小柄で細身だが、しっかりと筋肉のついた手足がすらりと伸びた快活な元気娘。結婚相手としては文句のつけようがない。しかし大きな問題がある。勝手に二人と結婚したとなると、鮑三娘ほうさんじょうが黙っていないだろう。ブチ切れて刀を抜き、問答無用で俺に切りかかってくる鮑三娘ほうさんじょうが脳裏に浮かぶ。

「わかった。でも、一回嫁に相談させてくれ。で、そこでOKでたら、結婚するってことで」

「決まり! じゃあこれからよろしくね。そういえば、まだ君の名前も聞いてなかったな」

「関索だ、よろしく頼む」

「関索か、いい名だね」

「関索様、よろしくお願いします」

王桃おうとうも深々と頭を下げた。

「あの、関索様は今おいくつでいらっしゃるのですか?」

「俺は今17だよ」

「お若いんですね。あの、私、随分と年上の妻になってしまいますが、大丈夫でしょうか」

「いいっていいって。俺、一人っ子だから、なんかお姉ちゃんができたみたいでうれしいよ」

 そういうと王桃おうとうは目を輝かせた。

「まあ! 関索様にお姉ちゃんと呼んでいただけるなんて! ええ、もちろん、関索様が望むのならこの王桃おうとう、妻にも姉にもなろうではありませんか」

 王桃おうとうは再び虚空を見つめてブツブツと呟きだした。

「では関索、恥ずかしがらずに思う存分お姉ちゃんに甘えてよいのですよ。ほら、お姉ちゃんがギュってしてあげます。ふふ、関索は甘えんぼですね。今日はいっぱいがんばったから、お姉ちゃんがご褒美をあげます。ほら、おいしそうな桃でしょう? これをキレイに剥いて、と。はい、できました。関索、「あーん」ですよ。おいしいですか? それは良かったです。 お姉ちゃんが食べさせてくれるからおいしいのかな、ですって? 関索ったらもう、お姉ちゃん照れちゃうじゃないですか。え? こっちの桃もおいしかったけど、今度はお姉ちゃんの桃の味見をしたいですって? いけませんよ関索、私たちは姉と弟なのですよ。そんなうまいことを言っても……あんっ、そんなところを吸わないでください。甘くておいしいよ? この子ったらもう……。あっ、関索。それ以上は、それ以上はいけません……」

 王桃おうとうは恍惚とした表情で涎を垂らした。大丈夫かなこの人と思いながら王悦おうえつを見る。

「大丈夫大丈夫。お姉ちゃん、ちょっと変なところあるけど、腕は確かだから!」

 王悦おうえつはにこやかに笑う。

「でも、アタシ達二人以外にも戦の経験がある人が欲しいところだね。なにせ相手はあの張勲ちょうくん山賊団。こと残虐性にかけては類をみない。もし負けたら、アタシ達は間違いなく殺されちゃう」

「ああ。仲間は多いに越したことはない」

 店の中を見渡した。なるほど、兵の募集に応じてこの街までやって来た、傭兵のような連中が何人もいる。ダメで元々、やってみるか。

「皆の者、聞いてほしい! この二人に話した通りだ。今、山賊どもによって一つの村が破壊され、村人が殺されようとしている。山賊を倒すため、君たちの力を貸してほしい。乱れに乱れた天下だが、それでもなお義はここにありと示そうではないか! 我らと共に戦わんという勇者はおるか!」

 店にいる連中に呼びかける。皆の視線が一斉に集まるが、呼応する声はない。やはりダメか。

 いや、最後にもう一回。もっと仲間を集めなければ、村で俺を信じて待っている鮑三娘ほうさんじょうに顔向けできない。

「もう一度問う! 我らと共に戦い、天下に義を示すものはおるか!」

「ここにいるぞ!」

部屋の奥から、自信に満ちた名乗り声が響いた。

次章、ここにいるアイツともう一人。


今日の21時前後に次章を投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ