第35話 発症
「クル」
トラがギーラ達に叫ぶ
「何が来るんだトラ?」
ギーラは慌ててトラに聞き返す
「キイロオトコ スゴイ ハヤク クル」
そうトラが言い返した瞬間 森の奥から全身黄色の毛で覆われた男が木をなぎ倒しながらギーラ達に凄い勢いで突っ込んでくる
「ギーラ サガル トラ マエ」
トラはギーラに言い円錐棒を胸の前で構え1歩前に出る シルキャドは黄色男を確認して透明化をしている
「あいつ来るぞ トラ止めてくれ シルキャドは遊撃だ」
ギーラも黄色男を目で確認してから冷静に指示を飛ばす オトギは木の陰に横になっていて黄色男からは死角になっている
「ギャガギャガギャガガガガガガガガガガガ」
トラもギーラに黄色男から目を離さず小さく頷くと凄い勢いで突っ込んでくる黄色男に向かって大きく叫びながら全力で向かって行く
「グオウウウウウウウウウウウウウウウウウ」
黄色男もトラが向かって来るのを確認して大きく叫ぶ その瞬間トラと黄色男の距離は一瞬で縮まる トラは円錐棒を横殴りで払いかかり黄色男は鋭い爪の右腕を上から振り下ろす 凄い音がして2人の交差が終わるとトラは円錐棒を両手で握り両足で踏ん張り次の攻撃に備えていた 一方黄色男は右腕が吹っ飛んで無くなっていて肩から大量の血を流し少し苦しい目をしたがすぐに左腕を振りかぶる
「ウデ オワリ オマエ モウムリ」
トラは黄色男の右腕を見ながら言う トラは黄色男の右腕の爪攻撃が見えたのでそれに合わせて円錐棒を右腕に狙いを変えて吹っ飛ばした
「グオウウウウウウウウウウウウ」
黄色男は左腕を振り上げトラの頭部を狙い攻撃して来たが 右腕が無くなりバランスも崩して威力も無くなりトラにあっさり避けられる
「オマエ ムリ タタカエナイ」
トラは1歩横にステップして左腕の攻撃を避けてから素早いスピードで黄色男の背後に回り言う
「そうだな この腕では俺はもうお前には勝てないな・・・・・ 殺せ」
黄色男は右肩を左手で抑えながらその場に膝から崩れ落ち頭を下げながら諦めた小さな声で話す
「ソウダ オマエムリ ワカッタ コロス」
トラは小さく頷き両手に持つ円錐棒を振り上げた所で シルキャドが透明化を解いてトラに話しかける
「ニャ トラ チョット待つニャ 聞きたい事があるニャ」
「ウン ナンダ シルキャド」
「ニャ いいからニャ いいからニャ チョット待つニャ 両腕を下ろすニャ トラ」
シルキャドはトラの円錐棒を持つ振り上げた両腕をポンポンと触ってから まあニャ とりあえずニャ その両腕を下ろすニャ と言葉を使わずに体で表現しようとしたが身長差で無理と分かり 必死にジャンプしても届かないので諦めて直接トラの目を見て言ってからうなだれている黄色男の目の前にトラと一緒に行く
「ニャ お前ニャ さっき木殴ってた時ニャ 何で泣いてたニャ」
シルキャドはトラの横に行き黄色男に聞く
「あれか あれは自分の力では制御出来ない この姿になるとすべてが敵になり殺戮衝動が止められなくなり頭の中殆んどが腐って狂ってしまう しかし極僅かに自分の意思が残る部分が出来るが泣く事しか出来ず分かっていてもどうする事も俺達には出来ない」
「ニャ それはニャ どうしてそんな状態になるんニャ 好きで変わる訳では無いのかニャ?」
「誰が好きで恨みも憎くも無い人間を殺したいと思う この状態を俺達は 発症 と呼んでいる 1度発症すると自分が死ぬまで治らない だから俺はもう終わりだ今もお前たちを殺したくて堪らないが右腕が無くなった痛みとこの目の前の俺が負けた大男に恐怖しているから何とか話せている・・・・・」
黄色男は右腕の血が止まらず体中がトラの威圧感の恐怖と切断の痛みで震えて答えている
「ニャ そうなのかニャ 絶対治らないのかニャ」
「そうだ今まで1回でも発症して元の姿に戻った者はいない 例外は無いだから村で発症したと分かったらこの深い森に1人で来て醜い化け物として生きるしか他に無い」
「ニャ なるほどニャ 分かったニャ」
シルキャドが話し終える
「おい 村と言ったか? そこの村はどこにある?」
今まで黙って聞いていたギーラが口を開く
「村か・・・村はこの深い森を抜けた所にある 森を抜ければすぐにある」
「おい これを見ろ その村はこの場所か?」
ギーラはギルドで借りてきた地図を広げて村の位置を指差しながら黄色男に見せて聞く
「そうだこの場所だ 所でなんでお前達は俺達の村を探している?」
「あああ アカレオの町のギルドの依頼でこの村の場所確認に俺達は来ている 今までこの村の存在は噂程度では知られているが確実な位置情報はギルドには報告されていないらしいからな」
「そういう事か 俺達の村が発見されても確実な情報が無いのは発見した奴は全員殺されていて噂ぐらいしか届かないんだろう」
黄色男は言いきる
「んっ どういう事だ 全員殺される?」
ギーラは聞き返す
「そうだ あの村ラングンは最近1年前ぐらいに誕生した小さな村だ 最初は普通にみんな生活していたがある日1人の女が村にやって来た あの女は村に住みだし道具屋を始めて色々珍しい商品を扱いだした あんな小さな村ではそこの道具屋の品物は何もかもが目新しくすぐに小さな村では人気になる そしてその道具屋で商品を買うとおまけに無料で色々の色の液体をサービスで付けてくれていた 赤 青 黄色 緑 など色々な色だ それをラングンの村のみんなは飲んだり体に塗ったりすると元気やヤル気が不思議に出たのであっという間に人気が出たな 俺も良く使い村のみんなも良く使い村中楽しくて幸せだった しかしある日道具屋の女が突然消えていなくなったすると当然液体も無くなり少しづつ発症が始まった 発症した奴は体が大きくなり全身に毛が生えて暴れるとにかく暴れる さっきの俺みたいにだ・・・ すると違う奴が発症するそして発症した同士で殺しあう そしてまた誰かが発症するそして殺しあうそれの繰り返しが何日も続いた その中にはその殺し合いを止めようとして殺された冒険者や他から来た人達も全員殺された その負の連鎖が収まりラングンの村の人口が10分の1の村人だけになる それで残った村人全員で考えた 発症の症状が出たら村を自主的に去る村に迷惑をかけない為にだ 次が俺の番だと今まで惨劇を見てきたから分かる体が震えるだし頭の中が狂いだしおかしくなり出し始めた だからこの森に俺は来たと言う訳だ 後はそこの猫族の女の子が見た通りだ」
最後にギーラからシルキャドをチラッと見てから黄色男は話を終える
「なるほど すると今のラングンの村の状態はどうなんだ?」
「あああ ラングンの村全員が発症待ちだな・・・・・ もうあの村は終わりだいずれ無くなる あの女さえ来なければ あの液体さえ使わなければ 俺は嫁や子供達の発症を見なくても良かったのにな・・・・もうすべてが遅いがな・・・・・」
黄色男は泣き出しギーラを見ている
「そうか 分かった 辛かったな お前は楽になりたいか?」
ギーラも黄色男の涙を見ながら聞く
「すまん そうしてくれ 最後にあの村には行っても何も無いな あの村はさっきも言ったがもう終わりだ 今も誰かが発症の恐怖に怯えて村人全員諦めている 残りも5人しか残っていないからな ギルドにはそう報告しといてくれもう俺達のラングンの村は終わったと・・・・・ そろそろ頼む 最後に迷惑をかけるな・・・・・」
黄色男は涙を拭いて空を見上げながら嫁と子供達と村人達に分れを告げてから目を瞑り頭を地面に付ける
「分かった・・・・・」
ギーラはトラに目で合図する トラは小さく頷き頭を地面に付けている黄色男に歩いて行き正面に立ち無表情で円錐棒を振り上げそのまま黄色男の頭に振り落とす グチャの音と同時に頭が無くなり命が消えた
「トラご苦労さん これで楽になれたらええんやけどね・・・・・あの男」
「ウン ドウカナ ワカラナイナ」
「ニャ そうだニャ 私達には分からないニャ あの男が望んだ事だからニャ~ あっ それでニャ これからどうするニャ? ギーラ ラングンの村は行くのかニャ」
黄色男の首の無い死体を見ながらそれぞれ小さな声で囁きシルキャドが聞いてくる
「うん 一応行って見てみようかな ラングンの村には入らずに外から様子を見るぐらいだけどね」
「ニャ 分かったニャ それぐらいがいいニャ 賛成ニャ」
シルキャドは言いトラも横で頷いている
「まずはオトギの復活待ちやね もう少しここで待機して待とう」
「ウン ソウダナ」
「ニャ OKニャ」
それからギーラ達は黄色男の墓を作り手を合わせてしばらく雑談してオトギの復活を待ちながら時間を過ごす事にする




