第156話 少年俺みたいになるんじゃないぞ
その少年マローガロの目は輝いていた、久しぶりに母親とスグラアゼースの町の買い物に出かけて好きなお菓子を買って貰い大好きな母親と町の中をブラブラしていると、町の大きな門の所で人が集まっていたので母親を急かして見に行くと、青年が蛇の顔で体は人間の女性に鉄の首輪を付けてそこから伸びる鉄のチェーンを引っ張って周囲をキョロキョロしながら歩いていた
「お母さん、あれは何をしているの?、お散歩?、蛇の顔の女の人はあんな首輪をして痛くないの?」
「ダメ、マローガロ、あの人達を見てはいけません」
母親が子供の視界を防ぐ様に両手で顔を隠す
「でも、お母さん、僕あんな事しているの初めて見たよ、凄いな~」
少年は初めて見た首輪をされた蛇獣人が人間の男に堂々と町の中を引っ張られてる衝撃の光景にテンションが上がり母親が塞ぐ両手の隙間からしっかりと青年と蛇女の姿を記憶する
「すぐに忘れなさい、マローガロ、すぐに忘れるのよ」
母親はそれから薄汚い物を見せたと思い後悔して少年の手を引っ張ってその衝撃の現場から離れた、それから母親と少年は買い物や食事を楽しんでから少年は満足して家路に進んでいると前方からあの衝撃のお散歩の青年が歩いて来る姿が目に入った
「あれっ、お母さん、見てっ、あのお兄ちゃんさっき蛇のお姉ちゃんに首輪を付けてお散歩して人がいるよ?」
「えっ?・・・・・マジ・・・・・嘘でしょ・・・・・」
ギーラはその声に反応してキラキラした目で隣の母親と見られる女性に報告をしてギーラを指差す少年を神の速度で発見する
「ねえねえ、さっきの蛇の顔の女の人に首輪を付けてお散歩していたお兄ちゃんをまた見つけたよ~、凄いな~、お話してきても良いかな?お母さん」
少年は恐ろしい事をギーラの耳にはっきり聞こえるボリュームで尋ねている
「ダメです、あのお兄ちゃんとはお話もダメですし、顔も見る事もダメです、近付くのもダメです、もしこれ以上お母さんの言う事を聞かないとお父様に話して怒ってもらいますよ」
母親は鬼の形相でギーラを睨んで少年を叱ってから庇うようにギーラの視界から隠して無理矢理手を引っ張って曲がり角を曲がって姿を消して行く
「ハハハハハッ・・・・・そりゃちっちゃな子供さんには見せたらアカンと思いますがそこまで俺を悪党を見る目で見やんでもええと思うけど・・・・・まあもし俺に子供がおったらあんな光景絶対見せたく無いですがね・・・・・最後の母親の鬼の目ダメージでかいっす・・・・・」
ギーラは乾いた笑いをして母親に引っ張られるが何とか振り返りギーラを輝いた目で見て曲がり角を曲がって消えていく親子を死んだ目で見送る
「ハハハハハッ・・・・・お母さんごめんなさいでした・・・・・少年俺みたいにはなるんじゃないぞ・・・・・ハハハハハッ・・・・・本当に申し訳無かったです・・・・・ハハハハハッ・・・・・」
ギーラはしばらく呆然と親子が消えて行った角を見て自然と謝っていた・・・・・
「ニャ、どうしたんだニャ、あの人間の親子ニャ、ギーラを気持ち悪い者を見る目で見てたんだニャ、特に母親の方は凄かったんだニャ?」
ギーラが呆然としているとスッーと背後から興味津々の声で聞いてくる、他の相棒達は無言でギーラと消えた親子の曲がり角を交互に見ている
「あ~あ、シルキャドは気にしなくても良いんだよ・・・・・うん、良いんだよ・・・・・」
ギーラはシルキャドの興味津々の声に恐怖を覚えて後ろを振り返れず前を直視したまま答える
「ニャ、そうかニャ~、そうなのかニャ~、だってニャ、気持ち悪いギーラをニャ、あんなに気持ち悪く見れるなんてニャ、私は凄く気になるからニャ~」
「・・・・・うん、途中にすっごいワード放り込んで来てるけど・・・・・な、な、何も無いから・・・・・ぜ、ぜ、全然、き、き、気にしなくても大丈夫やから」
ギーラはシルキャドの途中のすっごいワードにもダメージを受けて何とか答える
「ニャ、そうかニャ~、そうなのかニャ~、私の勘はニャ、何か面白い話を聞けると判断したんだけどニャ~」
シルキャドはギーラの背後から前に回りこんで両手を頭に添えてヤレヤレポーズで猫目をキラキラ輝かせて尻尾ブンブンでギーラの泳ぎまくる目をガン見しながら聞く、ギーラは「この娘怖い、この娘怖い、この娘怖い、女の勘怖い~」が頭の中で無限ループを繰り返していた
「・・・・・・・・・・」
ギーラは無限ループで頭が一杯になって黙る
「ニャ、何で黙ったのかニャ?、まあ~良いニャ、けどニャ、さっきの人間の子供がニャ、蛇の顔の女の人に首輪を付けてお散歩していたお兄ちゃんって言ってたけどニャ、さっきのヘビージョの事だと思うんだけどニャ~、どうなのかニャ?」
シルキャドはさらに顔をギーラに近づけてストレートに攻めて来る
「・・・・・い、い、嫌・・・・・き、き、記憶に御座いません・・・・・ひ、ひ、秘書がすべてやりました」
ギーラは目の前のシルキャドにパニックになり「シルキャドさんは・・・・・耳も流石に良いですね・・・・・」と少し何故か思って搾り出した言葉が少し前の政治家スタイルで返す
「ニャ、出たニャ、ギーラの病気だニャ、私の想像だとニャ~、ギーラがヘビージョを犬の散歩の様に首輪から伸びたチェーンを引っ張って歩いていたと思うんだけどニャ、どうなのかニャ~?」
シルキャドはギーラの政治家スタイルを簡単に病気と一蹴して、100%の正解を話す
「・・・・・し、し、知らん、俺は、し、し、知らん・・・・・知らんもんは知らんのや~~~~~」
ギーラは目の前のヤレヤレポーズのシルキャドに完全に追い込まれて、ギーラの小さい器が凝縮された最後の反撃逆ギレを顔を真っ赤にして炸裂させる
「ニャ、そうなんだニャ、ならニャ、そんなに怒るならもう良いかニャ」
シルキャドは冷静に話すとクルリと向きを変えてギーラから離れて行く
「ハアァ~、ハアァ~、ハアァ~」
ギーラは大きく肩で呼吸をして顔を下に向けて地面を見る、するとスグラアゼースの町の人々がギーラの逆ギレの大声に反応して、「何だ何だ?」「いきなり大声を出したぞ」「口論していたみたいだぞ」「驚いたな」などの会話をして通り過ぎる、すると前方からタッタッタッタッタッと小気味の良い足音が聞こえてきて下を向くギーラの目の前で止まる
「お兄ちゃん、蛇の顔のお姉ちゃんのチェーンを持つお散歩凄くビックリしたんだ、また今度やるの?」
少年マローガロが目を輝かせてギーラに聞く、マローガロは家に帰ってもどうしてもギーラとヘビージョの衝撃の散歩スタイルが忘れられず、人生で初めて母親に「友達の所に行って来る」と嘘をついて急いでギーラの所に走って来た
「・・・・・・・・・・」
ギーラは体が固まって金縛りで動けない
「それでね、僕凄くお兄ちゃんのお散歩スタイルに興奮して真似しようと思うんだ、だから今度友達のナターシャにするんだ、だけどナターシャは人間の女の子だからお兄ちゃんみたいに蛇の獣人じゃないから少し残念だけどね、あっ、僕そろそろ行くねナターシャ用の首輪を買いに行かなきゃ、それでお兄ちゃん僕今まで生きてきて一番感動したよ、お兄ちゃんもこれからもお散歩スタイル頑張ってね、僕もお兄ちゃんみたいなお散歩マスターになれるように頑張るから、それじゃあねお兄ちゃん」
マローガロはギーラにキラキラした目でテンションを上げて一気に話し終えると手を振ってクルリと振り返るとタッタッタッタッタッと走って行った
「・・・・・・・・・・マスター・・・・・」
ギーラは金縛り状態でピクリとも動けずキラキラした目のマローガロの話を聞き終えて姿が消えるのをただ見送って「マスター」の言葉が意識が無く自然と出ていた
「・・・・・そうか・・・・・うん、・・・・・そうなんか・・・・・ならしゃーない・・・・・うん・・・・・しゃーない・・・・・俺が全部悪いけど・・・・・ごめんなさい・・・・・」
ギーラはそれから数秒間の金縛り状態が終わり何も納得出来ないし自分が少年に与えた大罪を噛み締め少年の将来を心配して小さく頷いて囁く、そしてギーラは頭の中で色々な感情が駆け巡る中シルキャドの前まで歩いて行く
「さっきはごめんなさい、俺が悪かった、逆ギレも悪かった」
ギーラは腰を90度に曲げて手を腰に添えて頭を下げて謝罪をする
「ニャ、もう良いニャ、全部許すニャ、けどニャ、あの人間の少年ニャ、大丈夫なのかニャ?・・・・・」
シルキャドはギーラのパニック状態の顔を見て「今は」の言葉を忘れてギーラを許してから少年の心配をしている
「そうか・・・・・シルキャドありがとう、あの少年はどうなるかは俺には分からん・・・・・」
そう言うとギーラは謝罪していた頭を上げてシルキャドと少年が消えた方向を見つめていた