第131話 狂人の殺戮者 11
オトギとシルキャドが狩りから戻って来る
「ニャ、ただいまだニャ、今日も大量なんだニャ」
シルキャドは狩りを存分に楽しんで猫目キラキラ尻尾ブンブンでギーラ達に報告する
「ハイ、モドッタ、クウ、イイカ、クウ、イイカ?」
オトギは右腕左腕それぞれに持った大きな野生のイノシシをありえないぐらいにニオイを嗅いで涎がエンドレスに口からドボドボ溢れさせてイノシシだけを見てギーラに聞く、トラも同じくドボドボ溢れさせてイノシシだけを見ている
「う・・・・・・・・・・」
ギーラが「うん、食べても良いよ」の最初の「う」の所でオトギがイノシシの頭にかぶり付き、トラはオトギからイノシシを飛びついて奪い取り、トラとオトギはイノシシをお互いに隠すようにもの凄い唸り声と骨や肉が砕かれていく音を相棒達に聞かせながら食べている
「・・・ヒッ・・・」
レーンアイルは野生バージョンのトラとオトギの食事を初めて目の当たりして小さく悲鳴を上げてホワイトアイルの頭に顔を隠して壮絶な現場から目を背ける
「う・・・・・で食べ始めるとかトラとオトギは俺の言いたい事が分かるエスパーかな・・・・・」
ギーラは訳の分からない事を呟いて少し慣れたトラとオトギの壮絶な現場をガン見しながら独り言を呟いている
「うふふ、これでトラとオトギのお腹は満足するでしょうね、それでギーラ、これからどう致しますか?」
ローズメルファはいつもの笑顔でトラとオトギの壮絶な現場を見てギーラに振り向いてから聞く
「うん、そうやね、どしようかな?」
ギーラはお得意の質問を質問で返す人としては軽くウザい事をサラッとローズメルファに炸裂させる
「はい、そうですわね、私の考えをお話させて頂くなら、まずはこの先の<狂人の殺戮者>のメンバーの方々の集落がどれぐらいの規模かを確かめたいですわ、守りの堅さとかどこから攻めれるとかは知っておきたい事ですね」
ローズメルファはギーラのウザい返しもまったく気にしない様子で返事をする
「なるほど、それは大切やね、それでそれで?」
ギーラはウンウン頷いてローズメルファの意見に丸投げで乗っかる事を心で決めて話を促す
「はい、私の情報では集落の<狂人の殺戮者>のメンバーの方々の人数は20名程と聞いており、先程私もメンバーの方々と少し手を合わせましたが実力はたいして問題無いと考えられます、ですが私が手を合わせた方々が<狂人の殺戮者>の上位クラスの実力だとは考えるのは早計かと思われますわ、それに最近名前が売れてきているらしいので先程の方々よりは実力の方はいらっしゃると思います、ですから、うふふ、どんな方々がお待ちになられてるか私ワクワクしていますわ」
ローズメルファはワクワク大好き危険大好きなので黒目の無い白目の眼を少し細めて話す
「ニャ、それは楽しみだニャ、どんなヤツがニャ、出てくるのかニャ」
シルキャドも軽くステップで体をほぐして好奇心旺盛を抑えきれずに猫目をキラキラ輝かせている
「なるほど、それでそれで他に何かある?」
丸投げ乗っかりギーラは貪欲にローズメルファの意見を聞いている
「はい、後は私は<狂人の殺戮者>の方々の団としての方向性と申しますか団の方針と申しますかその部隊のリーダーの性格が左右すると思いますがあまり分からないのですが、まあ好き勝手な野盗の皆さんの事ですから虐殺や略奪や強姦などの事は普通に当然の様にされると思いますので集落の人々の安否が心配なので出来るだけ助ける方向で行きたいですわ」
「なるほどなるほど、他に余に聞かせる事はあるのかの」
ギーラは基本アホなので調子に乗って王様口調でローズメルファに聞き返す、するとローズメルファのいつもの笑顔だが一部の者にだけ分かる変化をしたのでギーラは慌てて「嘘、嘘、嘘、ローズメルファ、嘘です えへへ」と愛想笑い全開で最後にお得意の気持ち悪い笑いで必死に謝る
「あらあら、ギーラ、おふざけは私あまり好きじゃありませんからね、特に今は真剣な話し合いですからね」
ローズメルファはギーラにガチ説教をする
「はい、すいません、本当にすいません、俺が120%悪いです、本当にすいませんでした」
ギーラは完全に下を向いて謝る、
「ニャ、ギーラが怒られてるニャ、大人なのにガチで怒られてるニャ、にゃはははははははは」
シルキャドは当然ここぞとばかりにギーラを大笑いしながら弄る、おぞましい食事を終えたトラとオトギと無言で会話を聞いていて、レーンアイルとホワイトアイルは黙って下を向くギーラを見ている
「ニャ、ガチで怒られたニャ、ギーラはほっといてニャ、<狂人の殺戮者>とニャ、普通の人々はニャ、どうやってニャ、見分けるんだニャ、ローズメルファ?」
「そうですわね、姿や格好で分かれば良いのですが、分からなければ向かって来る人を殺しましょう、うふふ」
「ニャ、それなら簡単だニャ」
「ウン、カンタン、クルコロス、コナイコロサナイ」
「ハイ、オトギ、ソレオボエル、カンタンカンタン」
トラとオトギとシルキャドは笑顔で簡単だと喜んで3人で笑いあっている
「・・・私達はどうすれば・・・良いですか?」
レーンアイルはホワイトアイルを抱きしめて聞く
「うん、レーンアイルは俺達と少し離れた場所で待機していて、集落を攻めるのは俺達がやるからね、ホワイトアイルはレーンアイルをしっかり守ってあげてね」
ギーラは汚名挽回のつもりなのかグイッと体を前に押し出してさわやか過ぎる笑顔で歯をキラキラさせながらレーンアイルに話す
「・・・はい・・・そうします・・・」
レーンアイルもギーラの痛々しい笑顔と汚名挽回の気持ちが痛い程伝わったので普段はほとんど顔の表情を変えないが可愛い小さな口を少し動かして精一杯の愛想笑いをギーラに向ける
「良し、これで作戦はある程度まとまったな、それじゃあ<狂人の殺戮者>の集落に行こうかな」
ギーラは普段よりかなり声量を上げて何故かやる必要の無い右手を上げて「エイ、エイ、オー」と右腕を何回も上下させている、相棒達は「ギーラ気持ちは分かるが、汚名挽回の空回り感が凄い、必死ですね」と相棒全員思ったが何も言わず「エイ、エイ、オー」をしながら先に歩きだしたギーラを笑顔で追いかけて行く