第110話 手を繋ぐ者
ギーラ達はしばらく雑談をして帰り支度を済ませて立ち上がり屋敷を出る準備を終わる
「それじゃあ そろそろスグラアゼースの町に戻ろうかな」
ギーラは自分の荷物を持ち相棒達の準備の出来上がった様子を見ながら言う
「それでは皆様屋敷の外までご案内するので付いて来て下さい」
ランカッツがギーラ達の前に立ち姿勢正しく話す
「うん 宜しく頼むね ランカッツさん」
「はい それでは参りますね」
ランカッツの先導で階段の1回に降りる、ローズメルファが屋敷に入る時に開けることが出来なかった鉄の扉の裏側の壁にはめ込まれた長方形の鉄の塊の前に行く そこでランカッツが屈んで鉄の扉の手前の下の床を触ると小さな正方形の穴が出現してその中に鉄で出来たレバーが見える、ランカッツがそのレバーを引っ張ると鉄の扉が勢い良くガシャンの音を響かせて床に沈みこむと屋敷の外の風景がギーラ達に見える
「なるほど そんな所にレバーが隠されてたんですね?」
ギーラがレバーとランカッツを見て聞く
「はい この鉄の扉はこのレバーでしか動かせません ですから屋敷の外からは開けることは出来なくて屋敷の中のこの場所でしか開閉はできません」
「あらあら そんな所は全く気付きませんでしたわ うふふ」
ローズメルファがレバーのある正方形の穴を見て話す それからギーラ達は目の前に広がった屋敷の外に続く道を通り屋敷の外に出る
「それでは皆様いつでもお時間があればお寄り下さい ギーラ様達レーンアイルお嬢様はこの屋敷を離れて遠くに旅に行かれるのは初めてなのでご迷惑をお掛けするかも知れませんがどうか宜しくお願いします それとホワイトアイル レーンアイルお嬢様の事を宜しくお願いしますね」
ランカッツがギーラ達とホワイトアイルに笑顔で話す
「安心してランカッツさん もう俺達の大事な相棒だから心配はいらないよ」
「うん 大丈夫 僕に任せてよ」
ギーラとホワイトアイルは笑顔で返しながら話す
「それとレーンアイルお嬢様 お怪我とかお病気には気を付けて皆様と頑張って下さいね それとこれは必要な物が入ったお荷物なので是非お持ちくださいね」
ランカッツはレーンアイルの前に地面に両膝を付いて目線を合わせると可愛い花柄の刺繍が入った小さな背負い袋を手渡す
「・・・うん・・・ランカッツ・・・ありがとう・・・」
レーンアイルはランカッツから背負い袋を受け取りじっくり見てから背中に背負ってランカッツに嬉しそうに微笑む
「それでは行きますね ランカッツさん ギルドではお母様の事を正直に話すけど今は大丈夫でランカッツさんがこの村を立て直す事も報告して手助けできるか頼んでみるね」
ギーラはランカッツに言う
「はい 正直にお話をして下さい 私はこの村を立て直す事を頑張りますので」
ランカッツも話す
「ランカッツ またこの村と屋敷に来させて頂くのでその時は賑やかで楽しめる村にして頂くと私は嬉しいですわ」
ローズメルファもいつもの笑顔で話す
「はい お任せ下さい 今よりは落ちる事は無いですから 今度この村に来られた時はローズメルファ様のご期待に答えられる様にしておきますね」
それぞれランカッツとギーラ達は別れの挨拶をしてから最後にレーンアイルがランカッツに話し掛ける
「・・・ランカッツ・・・村の事・・・お願い・・・」
レーンアイルはランカッツの胸に飛び込んで小さな腕で抱きしめながら話す
「はい お任せ下さい 私がレーンアイルお嬢様の期待を裏切った事が一度でもありましたか?」
ランカッツもレーンアイルを強く抱きしめながら話す
「・・・うん・・・無い・・・ランカッツ・・・約束守る・・・」
数秒間のレーンアイルとランカッツの抱擁が終わりランカッツが優しくレーンアイルから腕を解いて体を離す
「それではレーンアイルお嬢様とホワイトアイルの事をどうか宜しくお願いします」
ランカッツは深々とギーラ達に頭を下げてから顔を上げて涙を堪えた表情で笑っている ギーラも頭を下げて笑ってから歩いて行く ローズメルファはランカッツの肩を優しく叩いてから歩いてギーラに続く行く シルキャドはランカッツに両手をブンブン大きく振りながら歩いて行く トラとオトギは無言で小さく頷いてから歩いて行く レーンアイルはホワイトアイルと最後にランカッツと3人で抱き合ってからギーラ達の後を追って歩いて行く ランカッツは最後にギーラ達とレーンアイルの姿が見えなくなるまで深々と頭を下げて見送っていた
ランカッツと別れてギーラ達は馬車が迎えに来るまでスグラアゼースの町に向かって先頭にトラとオトギが周囲を警戒して進んで次にギーラとシルキャドとローズメルファが雑談しながら進んで最後尾ににレーンアイルとホワイトアイルが手を繋いで無言で進んでいる
「ニャ レーンアイルとホワイトアイルは仲良しだニャ 私も手を繋ぐんだニャ」
シルキャドはギーラとローズメルファと話をしていたが後ろを振り返り羨ましそうに言いながらレーンアイルとホワイトアイルの所に歩いて行く
「・・・うん・・・いいよ・・・」
レーンアイルがシルキャドに頷く
「それじゃあ 並び方はどうするの?」
ホワイトアイルが聞く
「ニャ そうだニャ 私もホワイトアイルのニャ 手のフカフカ味わいたいからニャ ホワイトアイルが真ん中だニャ」
シルキャドがそう言うと右側にシルキャド真ん中にホワイトアイル左側にレーンアイルの順番で並んで手を繋ぐ
「ニャ レーンアイル いつもこのフカフカを楽しんでたのかニャ 羨ましいニャ~」
シルキャドはホワイトアイルと手を繋いでブンブン大きく腕を振ってフカフカを満喫しながら、大きなクマのぬいぐるみのホワイトアイルの陰に完全隠れてシルキャドからはレーンアイルの姿は見えないが話し掛ける
「・・・うん・・・いつも一緒・・・手を繋ぐ・・・」
レーンアイルは小さな声で話し返す
「そうだね 僕とレーンアイルは今までず~と一緒だったからね 寝る時も食事の時も遊ぶ時もね」
ホワイトアイルがレーンアイルの言葉を付け足す
「ニャ なるほどニャ それは羨ましいニャ これからは仲間だからニャ 一緒だからニャ 私もニャ これからはニャ フカフカをニャ レーンアイルと一緒にニャ 楽しんでも良いかニャ?」
シルキャドはホワイトアイルのフカフカが気に入ってこれからも手を繋がせてとお願いする
「・・・うん・・・良いよ・・・」
「そうだね シルキャドとは仲間だし僕も全然良いよ」
「ニャ 良かったニャ~ これで念願の手だけベットをニャ 見つけたニャ~」
シルキャドは意味の分からない事を言い出す
「・・・そうだね・・・」
「僕は良く分からないけど喜んでるから良かったのかな・・・・・そう思おう」
レーンアイルとホワイトアイルはシルキャドの天然にはまだ免疫力が0なので無理矢理納得させる するとシルキャドの「ベット」発言に耳をピクッとさせた筋肉ムキムキ兄妹がいつのまにかホワイトアイルの背後を完全に取ってホワイトアイルのフカフカをガン見している
「ウン トラ テツナグ」
「ハイ シルキャド カワル」
トラとオトギがシルキャドにホワイトアイルとの手繋ぎを変わる様に言う
「ニャ 何でだニャ 私が先でニャ 私が飽きるまではニャ 変わらないニャ」
シルキャドが首を横に振ってトラとオトギに断る
「「「ナンデダ ハヤク カワル」」」
トラとオトギはハモって言い返す
「ニャ 嫌だニャ~ この手だけベットはニャ まだまだ変わらないんだニャ~」
シルキャドはトラとオトギに断固拒否で話す
「・・・あの・・・私が変わりましょうか・・・どうぞ・・・」
レーンアイルがトラとオトギを見てレーンアイルがホワイトアイルと手を離して変わろうかと勧める ホワイトアイルとそれを見ていたギーラとローズメルファも少し困った顔で状況を見ている
「・・・・・ ウン ダメダ レーンアイル ホワイトアイル ズット ナカヨシ」
「・・・・・ ハイ ガマンスル レーンアイル カナシクナル オモウカラ」
トラとオトギは少し考えてからレーンアイルとホワイトアイルは凄く仲良しなのは見ていれば分かっていたので、トラとオトギは我慢して何故かトラとオトギで二人で手を繋ぎだす ここに豹柄ビキニを着た猫族と白いクマのぬいぐるみと幼い小さな少女が手を繋いで、その後ろに真っ黒な筋肉ムキムキのゴブリンが手を繋ぐ不思議な光景が出来上がる
「ニャ 分かったニャ さっき言った事はニャ 嘘だからニャ トラ オトギ だからニャ 変わりばんこでニャ ホワイトアイルとニャ 手を繋ぐんだニャ」
シルキャドはそう言うとホワイトアイルと繋いでいた手を離してトラとオトギを見て話す
「ウン シルキャド ヤサシイナ」
「ハイ シルキャド スキダ」
トラとオトギはシルキャドに礼を言って褒めてニコニコ笑いながらトラとオトギは順番にホワイトアイルと手を繋いでその感触のフカフカを満喫する それからしばらくの間ホワイトアイルの左手はレーンアイルが独占で右手はトラとオトギとシルキャドのローテーションで回しながら進んで歩いて行く
「ねぇねぇ ホワイトアイル大丈夫?しんどくない?」
レーンアイルがホワイトアイルの耳元に相棒達に聞こえる流暢な内緒話をする
「うん 僕は大丈夫だよ トラもシルキャドもオトギも凄く喜んでくれてるからね 心配しなくても大丈夫だよ レーンアイル」
ホワイトアイルも同じく相棒達にまる聞こえの内緒話をレーンアイルの耳元に返す
「まあ 喧嘩にならなくて良かったのかな・・・・・?」
「うふふ どうでしょうね しかしトラとシルキャドとオトギは握手を楽しんでいますし レーンアイルとホワイトアイルも受け入れてますから仲良く出来そうですわね」
ギーラとローズメルファはプチ握手会を満喫する相棒達を見て安心して道を進んで行く