第11話 新しい仲間
ギーラとトラは奴隷屋の前に立つ
その建物の見た目は意外と綺麗で正面の扉のまわりにも花など飾られ立地もメインストリート沿いに建てられておりリニューアルオープンなので大きな花も置かれている、今まで見てきた店と何も変わらず普通に存在する、ギーラの想像では町の隅の裏通りでテントで暗くジメジメして汚く怖いイメージだったが異世界のこの町では認知されていると認識して扉を開ける中をみるとやはり普通で改築しているのか多くの部屋が多数あり海外の綺麗な刑務所を想像させる
「いらっしゃいませ」
タキシードに蝶ネクタイを着た10歳ぐらいの人間の男の子に深々と頭を下げられ声をかけられる
「トラエって言う人いる?」
そう聞くと
「はい、少々お待ち下さい、お待たせするので良ければそちらのソファーにでも腰を掛けてお待ち下さい 失礼致します」
と丁寧な言葉使いで言われ小走りで隅の階段を上がり呼びに行った、お言葉に甘え弾力のあるソファーに座りまわりを見ながら少し待つと階段からトラエが先ほどの男の子を従えて降りて来る
「あら~、お兄さん来てくれたのね、お待ちしてましたわ」
トラエが笑顔で話しかける
「ああ~、約束だからな、それにしてもその男の子教育されてるな?」
トラエの少し後ろに控える男の子を見ながら話す
「いえいえ、まだまだですわ粗相などありませんでしたか?」
「いや、全然大丈夫だそれに建物の中も外も綺麗だな?」
「あら、そうですか、ありがとうございます、でも普通ですわ」
社交辞令を済ましトラエの導きで建物の中を見て回る、話によると4階建てで1・2・3・地下1階が奴隷の住居で4階が事務所らしい各部屋も綺麗で1部屋に1人住んでおり、鉄格子でも無く木の扉に覗き窓が付いており客が見て気に入れば中央のスペースで商談が始まる、各階を見終わりトラエに任せて4人程ピックアップして中央のスペースに戻る、近くの席でも商談していて裕福な服装の人間と従業員が話をしている
中央のスペースのソファーに座りしばらくトラエと談笑していて俺がこの環境で育っている奴隷なら誰かは仲間にしたいと思っていると
「社長お待たせ致しました、4人を連れてきました」
先程の男の子がトラエに報告する、ギーラはトラエが社長何だと思いながら連れてきた4人をトラと一緒に見る、そこにはやはり服装も小奇麗な格好をした3人の獣人と1人の魔族が並んでいた、全員幼く見た目は10代以下と判断する、そして男の子がトラエに目で合図され4人の紹介を始める
「それでは紹介させて頂きます」
男の子が一礼して
「まずこちらの4人は戦争やモンスターの襲撃で両親や身寄りが亡くなりトラエ社長が信頼できるルートを使いましてこちらの建物で商品目的で生活させております、そして専属契約をして頂ければ私達が責任を持って専属契約完了の魔術を施行させて頂きます」
それを言うのがルールらしく男の子が前置きしてから俺が頷くのを確認して手持ちの紙のメモを見ながら個々に紹介していく
「まず1人目は犬族の獣人です、こちらは10歳の男です名前とかは全員付けておりません、この子の集落の犬族同士が対立して殺し合いの戦いを始め負けた側の生き残りで近くの森で迷っている所をトラエ社長の奴隷商が保護して現在に至ります」
子供なのに全身毛だらけで耳を立て少し緊張しながら俺を見ている、ギーラは頷き男の子に次を頼むと合図する
「はい2人目は猫族の獣人です8歳の女です、集落を人間に襲撃された生き残りです、発見した場所はそこの集落で1人残ってました、こちらもトラエ社長の奴隷商が保護して現在に至ります」
こちらは殆ど人間の姿をしており耳が大きくて下を向いている次を頼むと頷く
「はい、3人目は鳥族の獣人です5歳の女です、親子4人で隣村に移動中に山賊に襲われこの子だけが生き残り一度山賊に捕らえられましたがトラエ社長の奴隷商が奪い返し現在に至ります」
この子は5歳であまり良く分からないようで背中の小さな羽根を動かしている次を頼むと頷く
「はい、最後はラビットの魔族です10歳です、人間語が話せません冒険者に捕らえられ信頼できるルートでトラエ様が購入しました」
兎を大きくした感じで目が赤く血走っており首輪がされている
「能力や実力に関しましては幼い子供なのでまだ未知数です、後の詳しいお話はトラエ社長とお話下さいませそれでは簡単な説明ですが終わります、有難う御座いました」
最後に男の子は俺達に一礼してトラエの後ろに控える
それからトラエと話し合い鳥族の獣人は幼すぎるので却下、ラビットの魔族も見た感じと人間語が話せないので却下、残りの犬族と猫族で悩んでいて終始無言で仁王立ちで俺の横に立つトラに一応聞いてみても
「ギーラ、キメル、トラ、キメナイ」
いつもの素直なストレートな返事を聞き「流石トラ真っ直ぐですな」と思いながらトラエに思い出した事を聞く
「トラエ、今手持ちこれだけだけど足りる?」
そう言いながら防具屋と道具屋で使って半分ぐらい残った金の入った布袋をトラエに手渡す
「う~ん、そうですわね、どれだけ頑張っても犬族の子は足りないですね」
布袋の中を確認してから控える男の子と相談して
「そっか、なら猫族の子は足りるの?」
「ええギリギリですわ、初回出血サービスですわ」
そう言われもう一度猫族の子を見る、あいかわらず下を向いており表情は分からないが目線を戻しトラエに聞く
「大人の猫族の特徴は?」
「私の知っている情報だと、手先が器用、動きが素早い、夜目が利く後は全体的に何でも出来る印象ですね」
なるほど何でも出来る印象か前衛はトラで中盤が俺、弓とかの飛び道具覚えて貰って後ろから援護してもらおうかと思い立ち上がり猫族の子の前に歩いて行き目の前に立つ
「チョットいいかな?」
猫族の子に話かける
「ニャ、は、は、はい、ニャ、な、な、なんでしょかニャ?」
猫族の女の子はビックリして顔を上げる、初めて顔を見る顔は8歳にしては大人っぽく目の色が黄色で猫目のアーモンド形をしており他の部位は人間とほぼ同じ
「君を仲間にしたいと思うけど、さっきの説明では人間に襲われたみたいだけどまだ人間は怖い?」
「ニャ、に、に、人間だけじゃないニャ・・・・・こ、こ、ここの人以外みんな怖いニャ・・・・・け、け、けど仲間にして貰えるならニャ、私は頑張るニャ」
人間だけじゃなく他も怖い、それはそうだろう住んでた所が襲撃され家族や身内が目の前で殺される、小さくて非力なこの女の子では何も出来無い筈だし見ているだけで何も出来ない、殺され無かったのが奇跡でそれに発見されたのが襲撃地点だと聞いていて何日間その場に耐えて居たのだろう、発見された時は1人だけだと聞いたし時間が経つにつれ崩れていく家族や身内や友達の死体を見ながら何日間どんな思いで耐えたのだろう
「よし、頑張るのなら仲間になろう、これからは仲間として一緒に頑張ろう、今から宜しくね」
「ニャ は、は、はいニャ よ、よ、宜しくニャ」
それを聞いていたトラエが無言で歩いて行き猫族の子の前に立ち
「それでは、頑張りなさいねお兄さんの力になりなさいね」
最後に頭をポンポンと優しく2度叩き頑張りなさいと笑顔で言い猫族の子を抱きしめた
「ニャ、い、い、今まで本当にニャ、本当にニャ、お、お、お世話になりましニャ」
猫族の女の子はトラエに頭を深々と下げてギーラの前にオドオド歩いてきた
「トラエ一つ聞いても良いか?、専属契約の魔術は断る事は出来るのか?」
トラエに聞く
「ええ、別に構いませんわそこはお兄さんの御自由で良いですわよ」
「うん、じゃその方向で頼む、トラエ」
「はい」とトラエが頷くのを確認して全財産を渡しトラエに挨拶してギーラの右側にトラ左側に猫族の子が並んで奴隷屋を出て行く