第105話 屋敷 5
「えっ? お嬢様どうされましたか?」
黒のタキシードと黒のハットを被った老人は隣に立つドレス姿の女の子に聞き返す
「・・・うん・・・もう・・・いい・・・私戻る・・・」
女の子は低い声で言い返す
「そうですか 分かりましたお嬢様 それではお客様達の事は私が何とかしときましょう」
老人が言い終わると女の子はクルリと振り返り出てきた通路を無言で何のリアクションも見せずに戻って歩き出す
「ニャ お前ニャ どこに行くのかニャ?」
シルキャドは女の子の意味不明な行動におもわず声を出す だが女の子はシルキャドの声にも無反応で歩いて行き姿が見えなくなる
「そういうことで お嬢様はお戻りになられたので 後は私がお話やら色々お相手させてもらいますね」
老人は声を出したシルキャドを見て話す
「まあ お嬢様とやらが戻るのははどうでも良いけど 俺の話の答えをまだ聞いて無いけどね」
ギーラは女の子の姿を消えるのを確認して老人に言う
「あああ 冒険者が行方不明で戻って来ないお話の事ですか? それは先程も言いましたが分かりませんね」
老人は今度はギーラを見て話す
「あらあら お口が堅いと言いますかお年を召されて頑固なのかそれとも記憶力が無くなったのは分かりませんが 屋敷の玄関の鉄の扉の罠や屋敷の窓ガラスや壁の毒の罠など なかなか隠したい事が多いと思われますけどね うふふ」
ローズメルファはニコニコ笑いながら歩いて老人に近付く
「それはそれは老人扱いが酷いですね それに罠の数々は防衛の為なので仕方なくですけ・・・・・ あっ? も、も、もしかしてローズメルファ様 お、お、お久しぶりです 復活されてたのですね」
老人はローズメルファが近付いて来て話していた言葉を止めて慌てて方膝をその場に付いて頭を深々と下げる
「はい お陰さまで完全に前以上の能力で復活出来ましたわ それにしてもランカッツ しばらく見ないうちに私の顔を忘れてますし私の仲間のギーラの質問を真面目に答えていませんし 偉くなりましたわね もう一度思い出せてあげましょうか うふふ」
ローズメルファは笑顔で頭を上げない老人ことランカッツの黒いハットを見ながら話す
「は、は、はい も、も、申し訳ありません ほ、ほ、本当に申し訳ありません」
「はい まあ 今回は私を忘れていた事は時間が時間なので特に何にも思いませんが ギーラの質問に答えなかった事はあまり宜しく無いと私は思いますがランカッツはどう思いますか?」
「は、は、はい ローズメルファ様のおっしゃる通りです 私がギーラ様の質問に答えなかったのは私がとんでもなく愚かで間違っておりました 申し訳ございませんローズメルファ様」
ランカッツはギーラ達が見ていても引くぐらいローズメルファを恐れて話しているのが分かる
「あらあら ランカッツ 分かって頂いて私は嬉しいですわ それで先程の女の子はもしかしたら今あなたがお仕えしている人なのですか?」
「は、は、はい そうです お名前はレーンアイル様と申します」
「そうなのですね 分かりました 私もあなたとお話をまだまだしていたいのですが先にギーラの質問に答えて頂いても大丈夫ですよね? ランカッツ?」
ローズメルファはそう言うとギーラを見て笑顔で「では ギーラ質問どうぞ」の顔を向けてギーラを見る
「は、は、はい 勿論で御座います」
ランカッツは当然了承していた
「う、う、うん ローズメルファ色々何かありがとう それじゃあ質問させてもらうよ」
ギーラはローズメルファに礼を言ってまだ方膝を地面に付いて深々と頭を下げているランカッツの前に歩いて行く
「あの 先程はイライラした口調で質問して申し訳ありませんでした それともう頭を上げて頂くと話がしやすいのですが?」
ギーラはランカッツに前に敵対心剥き出しでイライラして話した事を謝りながら言う ランカッツはそれでもローズメルファが恐ろしくて方膝で頭を下げた体勢を保った姿でいる
「あらあら ランカッツ まだギーラの質問を無視するのですか? 分かってもらって無かったのですか? これは残念ですわ」
ローズメルファはギーラの横でいつもと変わらぬ笑顔に優しい声で話す
「は、は、はい ローズメルファ様申し訳ありません しばらくお待ち下さい か、か、体が恐怖で動かせませんので し、し、しばらくお待ち下さい 申し訳ありません」
ランカッツはローズメルファの恐怖で金縛りになっていて必死に言いながら体を動かそうとしながら話す
「あの~ そんなに焦らなくても大丈夫ですので ゆっくりで大丈夫ですからね」
ギーラはランカッツの恐れ具合が目に見えて分かったので優しく声を掛ける それからランカッツが金縛りを解いて立ち上がってギーラとローズメルファの前に背筋を伸ばして起き上がるまで5分ぐらい待つ
「お、お、お待たせしました ギーラ様 ローズメルファ様 お時間を取らせました・・・・・ 申し訳ありませんでした 本当に申し訳ありませんでした」
ランカッツは大きな深呼吸を何回もしながら何回も謝りながら話す
「いえいえ大丈夫なんで それでもう話は良いですか?」
ギーラは聞く
「はい 勿論です何でも聞いて下さい」
ランカッツは少し平常心を取り戻してギーラに答える
「それは良かった それではさっきも言いましたが俺達はギルドの依頼でこの屋敷に来て冒険者が行方不明になっている調査をしていますが本当にランカッツさんは何も知らないんですか?」
「いえ 申し訳ありませんでした 私はローズメルファ様だとは気付かずに本当の事をお話していませんでしたので本当の事をお話させて頂きます この屋敷にはレーンアイル様と私ともう一人レーンアイル様のお母様の3人で住んでおりましてそのお母様がこの屋敷に来た冒険者達を その言い難いのですが~殺して喰って殺して喰ってを繰り返しておりまして・・・・・」
ランカッツは少し顔を下げて地面を見ながら話し出す
「うわっ そうなんですか・・・・・?」
「はい この屋敷はもう一つ上の階がある3階建てなのですがレーンアイル様と私は3ヶ月前程からお母様に言われますと3階の部屋で軟禁状態と申しますか部屋から一歩も出れない状態にさせられまして最初の頃は1週間に1日程なのですが最近はお母様が消える日までは1週間ほぼ毎日全部軟禁状態で3階の部屋に閉じ込められてました」
「えっ お母様が消えた 消えたんですか? それにほぼ毎日部屋に閉じ込められるんですね・・・・・」
「はい そんな状態になると幼いレーンアイル様と私も流石に異変と言うかおかしな状況に気付きまして それに村の人達も段々数が減っていき私やレーンアイル様が軟禁状態では無い時に村の中や近くの場所を散歩なり歩いていると村人の人々は何も言わないのですが明らかに態度がおかしくなり避けられて怖がられているのを肌で感じておりました」
「お母様が村の人々も殺して喰ってたんですか?」
「はい それからは軟禁状態が終われば村の人達がいなくなり最後にはレーンアイル様と私とお母様以外は村には誰もいなくなりました それから何処からか噂を聞き付けたのか分かりませんが冒険者達がこの屋敷に来てお母様に殺され喰われ始めました それからお母様は醜い姿で屋敷の中や村を徘徊するようになりましてもうどうする事も出来ない状況で最後には娘のレーンアイル様にまで襲い掛かって来まして それでそれで・・・・・レーンアイル様がお母様を消しました・・・・・」
「えっ レーンアイル様がお母様を消した? どうやったのですか?」
「はい レーンアイル様は体も弱くて何を考えておられるか分からないお嬢様なのですが生まれた日にご両親にプレゼントされたクマのぬいぐるみを非常に大事にされておりまして お母様が冒険者や村の人々を殺し喰いまくるのを気付いてから毎日毎日大事にされていたクマのぬいぐるみに願いをしていて・・・・・「お母様はもう見たくない お母様はもう見たく無い お母様はもう見たく無い」と願いをされてました そしてお母様が村の人々を殺し喰い冒険者を殺し喰い尽くして何も無くなって3階の軟禁部屋にいるレーンアイル様を襲い掛かって来た時に大事にされていたクマのぬいぐるみがお嬢様を助ける為に動き出し醜い姿のモンスターの姿のお母様を消し去りました」
「えっ? 大事にしていたクマのぬいぐるみが動いて消し去ったのですか?」
「はい 私はそのお母様を消し去った現場は見ておりませんが お嬢様がそうおっしゃるので」
ギーラ達はランカッツの話は信じたがレーンアイルのクマのぬいぐるみの話はまだ半信半疑で聞いていた
「ニャ レーンアイルはニャ 今どこにいるのかニャ 話を聞けばニャ 早いんだニャ」
大人しく話を聞いていたシルキャドが話し出して トラとオトギも頷く
「はい そうですが レーンアイル様はお母様をご自身で消し去り殺してかなりショックを受けておられまして心の病気と申しますか体調や気持ちが少し正常では無いと申しますか 今は私とお話される時も言葉少なめですが・・・・・」
ランカッツは悲しい顔と苦しい顔を合わさった顔で話す
「そうなのですね それでも本人には話を聞く必要はありますからね」
ローズメルファは話す
「まあ そうやね ランカッツさん レーンアイル様に一回俺達と話が出来るか聞いてもらえませんか?」
ギーラはランカッツを見ながら聞いてみる
「はい そうですよね 分かりました 少しお時間をお掛けすると思いますが宜しいでしょうか?」
ランカッツはギーラ達を見ながら聞く
「はい 全然大丈夫ですよ レーンアイル様が無理と言うならまた違う方法考えるので ランカッツさん お願いしますね」
ギーラはそう言うとランカッツは深々とギーラ達に頭を下げて背筋を伸ばしてレーンアイルが戻って行った通路に小走りで進んで行った