第1話 初心者の冒険
「あーあ、10年前に戻れたらな~」
ここはワンルーム家賃5万円風呂付きトイレ付きの部屋ビール片手に「10年前に戻れたらな~」いつもは言わない突然出た独り言に返される言葉も無くシーンとした無音の部屋
今年で26歳会社員7年目趣味DVD鑑賞普通の男、彼女も3ヶ月前に2年のお付き合いの末に性格の不一致であっさり別れてサヨナラ、得に人付き合いも悪くなく平均的な人生の普通の健康男子
今はほろ酔いでフワフワで良い気分の真中銀虎はいつもの日課の幸せな時間
「あれっ?急に10年前に戻るとか無理ですよね~、まあ~そんな事は分かってるけど酔うと独り言のボリュームが自分でも分かるやん」
もちろん1人の部屋で返事も返してくれる言葉も無く時計の針も無音で進む
「良しそろそろ寝るかな、明日も仕事やししっかり寝ましょうか~」
1人ほろ酔い男が独り言で納得したところで部屋の片隅のベットに潜りこむ
「それじゃあ、寝る体勢完璧、今夜こそはええ夢が見れますように~」
ベットの中で目を瞑ると自然に眠りに落ちる真中銀虎であった・・・・・
目がパッチリ目覚めた朝
「う~ん」
銀虎は伸びをして体をほぐす
「朝か~あいかわらず朝来るの早いな~、だれか俺に二度寝出来る勇気を下さいな」
寝起きから社会人失格発言である、いつものように顔を向け少し離れた定位置の目覚まし時計に目を向ける
「んっ?」
いつもの定位置に目覚まし時計が無くそこにはコブシ大ぐらいの白いボロボロの石が変わりに置いてある
「んっ?」
目をゴシゴシ右手で擦り目を覚ます
「あれ何で目覚まし無いの?、んっんっ?、それにここ何処?、あれベット?、んっんっ?、何で俺裸なん?」
???マーク連発で頭が混乱してきた銀虎
そこは欠けたり半分に割れたり大小様々な色々な白い石、床からは雑草が生え天井や部屋の隅にも雑草が生えている
「ええええええええええええええええ、何?、何?、えええええ」
大きな声で腹の底から叫ぶ
「マジで嘘でしょ・・・・・ 何これ意味分かりませんけど」
寝る前まではいつもの部屋で、いつものほろ酔いで、いつもの独り言連発、いつものベット、いつものスエット上下・・・・・ それが白い石の壁の雑草が生えた部屋
「嘘や、意味分からん意味分からん、意味わかりませんけど~~~」
また大きな声で叫ぶ銀虎
「うわ~、どうしよう物凄く怖いんですけど、どうして何もかも違うの、どうしたらいいのどうしたら・・・てか何で俺は裸なん?」
銀虎はベットも無く白い石の上に直接生まれたままの真っ裸で座りながら、ゆっくりと自然に涙が溢れて 「嘘でしょ・・・」と小さな声でうな垂れた
1時間ぐらい呆然として泣いてから、気合を入れる為に顔を両手でパンパンパンと3回叩き気合を入れて
「うん、このままじゃアカン、全然意味分からんけど、とりあえず服を探そう」
まだ頭が半分以上混乱しながら気持ちを切り替え立ち上がり周囲を見渡す、そこは4畳ぐらいの大きさで壁も大小の白い石を適当に積み上げているだけの部屋で、窓枠も無く所々石が崩れてそこから日差しが差し込んでいる程度、天井も一応雨は凌げます程度に石が積まれており所々崩れて、大雨の時は天井の仕事は放棄間違い無しの崩れ具合
「う~んこれはボロ小屋もしくはボロ石小屋やね、それととりあえず着る服は無いんかな?」
暖かい日差しが崩れている壁から差し込んでおり、肌寒くは無いが大人としてこれはダメでしょと思いさらに部屋を見渡すと、隅に白い樽が置いてあるそれ以外はどれだけ見ても崩れた白い石と雑草だけが視界に飛び込んでくる
「んっ?、白い樽かあんな所にある、あれしかこの部屋に無いしな~1回見てみよかな」
その白い樽の前まで行き上から覗きこむと、蓋はされておらず中には緑色の物体が丸まってモゾモゾ微かに動いている
「んっ?、何やこれ犬?、猫?、大きさは犬ぐらいに見えるしな~、それか目の錯覚で動いたように見えた緑色のぬいぐるみかな?」
良く分からず銀虎はしばらく腕を組んで考えてみて少し待ってみる
「う~ん、微かにやけど確かに動いてたしな、何やろか、う~ん、分からんな分からん時は分かるまで調べる、うんそれ俺流」
1人で銀虎は頷いて納得して近くに大量に生えている長めの雑草を引きちぎって右手で持つ
「お邪魔しま~す、失礼しま~す、ボディタッチ入りま~す」
一応声に出しテンションを上げてから確認をしてから、右手の雑草を緑色の物体にソフトタッチでサワサワしていると緑色の物体はモゾモゾと先程より少し動き出す
「うん、確定これは生きてるな、犬猫かな?、けどこんな緑色した犬猫とかおったかな~、けど問題無し」
何が問題無しか分からないが、銀虎は自分の真っ裸や落ち込んで泣いていた事をすっかり忘れて、テンションも上がり緑色の物体に全身全霊で向かう
「俺は犬派やから犬なら大歓迎、もちろん猫も大歓迎ですけどね」
良く分からない事を銀虎は声に出しながら、今度は右手の人差指で緑色の物体に、ツンツン、ツンツン ツンツンツン、リズム良く押しながら
「ワンちゃんでちゅか~、ネコちゃんでちゅか~、起きなさい朝でちゅよ~、ご飯冷めちゃいまちゅよ~、朝でちゅよ~」
周りでもし誰か見ていて樽の中に裸の男が右手を入れながら赤ちゃん言葉で、上の台詞を言っていたら怖い・・・・・すると緑色の物体が動こうとしてゴソゴソ頑張って30秒後ぐらいに
「ウン、セマイ、カラダ、ムリ」
苦しそうにカタコトの聞き取りずらい言葉を話し出す、一瞬頭の中は犬猫は話さないのに・・・・・?マークが連発しそうになるが、話しをする人が困ってそうなのですぐに頭を切り替える
「うん、分かった、ちょっと待ってね」
急いで樽の上から緑色の物体を見直すと頭の部分と膝から下の部分が綺麗にハマッテおり、お腹あたりには手を差し込ませるスペースを発見する
「じゃ、引っ張るからね、少し樽に頭とか擦れて痛いかも、我慢してね」
「ウン、ワカッタ、ガマンスル」
銀虎はOKと返事しながら両手をお腹のあたりの空いているスペースに持って行き掴んで、思いっきり引っ張ると樽の中から
「イギイギイギイギイギギギイイイ~」
我慢しても我慢しきれない声が大絶叫で聴こえてきたが、さらに思いっきり「オリャー」と叫びながら引っ張るとスポッとシャンパンのコルクが抜けたような音と同時に、両手には緑色の物体を両手に掴みながら地面に尻餅を付く
「痛ったぁぁぁ~ 守備力0のお尻にはダメージでかいな痛ったぁぁぁ~」
「イギイギギギ、アタマ、モエル、イタクナイ、イギイギイギ~」
そこにはお尻を真っ赤にした真っ裸の男と、頭を真っ赤にした緑色の物体が見詰め合っていた、緑色の物体は「イタクナイ」と途中で発言していたがもちろんやせ我慢である
「大丈夫、頭真っ赤っかやけど?」
「ウン、ダイジョウブ、ゼンゼンダイジョウブ、イギギギギィィィィィ」
「ならいいけど、どうして樽の底にハマッテたの?」
そこで銀虎は緑色の物体を初めて上から下まで観察する、全身緑色で顔の額の真ん中には小さな角があり、顔は皺だらけで口は大きく歯も大きく、手の指は3本で足の指も3本で、身長は両手にスッポリはまるサイズで40~50センチまるで大きめの子供を抱っこしている感覚である
「ウン、ネル、オキル、ウゴカナイ、ココニイル」
「そうか同じやね、俺も部屋で寝て朝起きたらここにおったよ」
「ウン、オロス、ダイジョウブ」
「あ~あ、そうやね、ごめんごめん忘れてた」
そこで慌てて緑色の物体を床に置くと銀虎は考えた、これは夢では無く現実だそれにこの緑色の物体も知っている、子供の時の状態はあまり知らないが面影はある、大人の姿の状態の時は良く徹夜して遊んだRPGゲームの序盤でレベルアップに貢献してくれた、それにファンタジー小説にも出てくる、スライムかこの緑色の物体のモンスターは雑魚キャラで超有名なゴブリンで子供のゴブリンだと銀虎はすぐに確信した
「あの~、1つ質問なんですが~、もしかしてゴブリンですか?」
俺に降ろされて真っ赤な頭をゆっくり擦りながら、部屋の中をキョロキョロしながら動きまわるゴブリンは
「ウン、シツモン?、アアア、オレ、ゴブリンゾク、オマエ、ニンゲンゾク?」
「人間族?、あ~あ、そうそう、俺人間族」
たしか読んでたファンタジー小説も「族」が付いてたような、そこは良いとして、確かゴブリンは低知能で凶暴で仲間が大量のイメージですが、低知能を聞くのに「もしかしてアホ」とは流石に聞け無いのでそれはスルーをしておく
「それでまた質問、俺を襲わないの?」
銀虎はまず気になる事をストレートに子供のゴブリンに聞いてみた
「ウン、オマエ、オレ、タスケタ、オソワナイ、ダイジョウブ」
まずは第一段階クリア、一応安心する俺は樽からコイツを引きずり出しただけですが
「友達はどうしたの?、俺はたぶん一人でここに送られてきた・・・・・」
ゴブリンは鼻をクンクンまわりを嗅ぎながら
「ウン、トモダチ?、オマエガトモダチ」
「んっ?、俺とお前が友達?」
「ウン、オレ、アソコカラ、タスケタ、ダカラトモダチ」
なるほど敵と判断されて突然襲われて殺されるよりは良いでしょう、まあ俺はここで一人ボッチは確定だろうし子供のゴブリンも今はコイツも一人っぽいし、それにゴブリンが目の前にいて話しまでしてくれて友達と言ってくれたし、顔の皺でかなり分かりずらいが嘘をついてる目はしていないと思うから多分大丈夫と思い込んで、そう考え出したら今は俺とゴブリンだけでボッチ同士とりあえずこのゴブリンと前向きに進んでまずは念願の服を目指す事にしましょう