永遠の契約を君と(二)
「それ、フリージアの……!」
「慌てるな。ほら」
ガルシアは息急き切ってやってきたブルーエルに意外なほどすんなりとフリージアの魂を渡した。
「無理に持って行って悪かったな。魂の負傷がひどかったもんで、ツァフに頼んで癒してもらってきたんだ」
「そう、だったのか……」
ブルーエルはなんとなくだが、抱えている彼女の魂の重さが処刑後より軽くなり、輝きが増しているような気がした。
「では先程ツァフがいたのはそのためですか?」
ディウスが疑問にガルシアは手をひらひらと左右に動かした。
「あー、違う違う、それとは別件だ。フリージアはカヌアンの姫巫女ってことは知ってるよな?彼女、とんでもないぞ。今まで処刑されていたカヌアン信徒の同胞の魂を依り代として抱えていたんだ」
「人の身でそれを?まさか……」
ガルシアの報告にディウスが言葉を失った。
依り代になるのはその魂の業もすべて背負うことになる。
魂を取り扱う者として天界にいた三人はその行為の重さを知っている。
「君はどこまで自分を犠牲にして……」
ブルーエルが呆れと怒りが混じった声でフリージアの魂を見つめて呟くと、ガルシアとディウスの二人は慰めるようにブルーエルの肩に手を置いた。
フリージアはカヌアン最後の姫巫女として、信徒たちの先祖代々から引き継がれて来た魂の記憶と信仰をその身に宿し、彼らの魂の供養と神々への信奉を続けていたのだろう。
ガルシアやツァフなどの上位の天使たちにもその気配すら悟らせないとは、と改めてフリージアの力を知ったブルーエルは舌を巻いた。
「俺様もツァフも驚いたわ。んで、さっきお前らがすれ違ったツァフは光癒術を使ってフリージアから引き離した他の魂たちを転生の流れに乗せにきたんだよ」
彼女はかつての地母神であった自分の信徒たちの魂を送り出しにレテへと来たのだという。
フリージアの魂だけはブルーエルに渡すためにガルシアが引き取ったのだろう。
「で、その魂をどうするんだ?魔界に連れて行くのか?」