殺人
「キャー!」
「何奴!?先ほどの空間転移も貴様の所業か!!?」
メイドっぽい人と騎士っぽい人がたくさんいた。
人かどうかもわからないが。
彼ら全員に獣の尻尾と耳があったのだ。
「え?待って。うそ?なんで人がいるの!?」
私は混乱した。
意味がわからない。
私が欲したのは家だけよ!?
「そんなことはどうでもいい!ベンチュリー国、大貴族リニアっク様に仇なす者はこの俺が斬る!!そこになおれ!」
「ひっ!!」
うそうそうそ。
いやだ!怖い!
たすけて!!
私に向かって来るケモ耳男。
もう無理。
なんで私がこんな目に?
こんなケモ耳男なんて…え?ケモ耳?
耳…
「あなたの耳がほしいな…」
私がボソッとつぶやいた瞬間、目の前のケモ耳男の頭から血が噴き出した。
「ぐあああああああああ!!!」
かつて耳があった場所をおさえ、苦しむ男。
「ふふ…あはは…」
私の口から乾いた笑いが出た。
手の中にある肌触りのよいケモ耳はまだ温かい。
耳は犬っぽい。
「貴様!何をした!?スキル持ちか!しかしこの程度で俺を無力化したと思うな。耳などなくとも俺は負けない。旦那さまたちはこの俺が御守りする!はぁぁぁぁああああああああ!!」
そうしてまたもや私に向かって来る男。
体肢があるから悪いのかしら?
私に向かって来れないようにしてあげるわ。
「あなたの体肢…手足をちょうだい」
「うぁぁぁぁああああああ!!!」
一瞬にして手足をなくし、体幹…胴体のみになった男。
これで剣も握れず、私のほうに向かってくることもできない。
出血も多いし、放置していても死にそうだけど…。
「あなたの後頭葉をちょうだい?」
「っ!!……」
前頭葉ではからだの運動、言語運動の機能
側頭葉では聴覚や嗅覚の中枢
頭頂葉では視覚空間処理をおこない、
後頭葉では視覚認識を司る。
既に手足は奪っているから前頭葉をつぶす意味はない。
耳も奪っているから側頭葉もべつにいい。
だから、後頭葉を奪ったんだけど。
「機能以前に脳を奪われちゃったら死んじゃうよねー」
物言わぬ屍を眺めながら私はつぶやいた。
いい気味。